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馬の病気:下顎骨骨折

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下顎骨骨折(Mandible fracture)について。

下顎骨の骨折は、蹴傷や転倒などの外傷に起因するほか、サク癖(Cribbing)の際に驚いて下顎を衝突させるなどの、自己誘導性の怪我(Self-induced injury)として起こる場合もあります。下顎骨の骨折は、切歯(Incisor teeth)を含む下顎骨吻側部(Rostral mandible)、歯槽間縁(Interdental space)を含む下顎骨吻側部、水平枝(Horizontal ramus)を含む下顎骨体部(Mandible body)、垂直枝(Vertical ramus)を含む下顎骨尾側部(Caudal mandible)、鉤状突起(Coronoid process)、顎関節(Temporomandibular joint)などの部位に発症します。下顎骨骨折の症例では、四肢の骨折とは異なり、体重負荷機能(Weight-bearing function)を有しないため、治療に際しては高強度の外科的固定具が必要とはされないという特徴があります。

下顎骨骨折の初期症状としては、過剰な流涎(Excessive drooling)、食欲不振(Lack of appetite)、周囲軟部組織の腫脹(Surrounding soft tissue swelling)などが挙げられますが、必ずしも下顎骨骨折に特異的な所見ではないため、骨折発症が見落とされる場合もあります。中程度~重度の骨折病態では、咀嚼不全(Malocclusion)、出血(Hemorrhage)、下顎の不安定性(Mandible instability)、歯並びの異常(Teeth malalignment)などが見られ、病状の進行に伴って悪臭(Fetid odor)を呈する症例もあります。触診では、下顎を左右に揺らした際に、両側の下顎枝が相同して動かない所見(片側性骨折:Unilateral fracture)、下顎全体が不安定である所見(両側性骨折:Bilateral fracture)、または下顎の動きに合わせて顕著な疼痛症状を示す所見などで、下顎骨骨折の推定診断(Presumprive diagnosis)が下されます。

下顎骨骨折の確定診断(Definitive diagnosis)はレントゲン検査(Radiography)によって下されますが、多くの骨構造組織が重複露光(Superimpose)する領域であるため、撮影角度を慎重に調整する必要があります。多くの骨折は、背腹側撮影像(Dorsoventral view)、外内側撮影像(Lateromedial view)、二方向の斜位撮影像(Oblique views)による診断が可能ですが、下顎吻側部の骨折では、レントゲン・カセットを口腔内に入れての撮影法(Intraoral view)も併用されます。また、吻側前臼歯廊(Rostral premolar arcades)の検査には、開口器(Speculum)を用いての開口時撮影像(Open-mouth view)が有用です。骨折が認められた症例では、正確な予後判定(Accurate prognostication)のために、骨折片変位(Fracture fragment displacement)や腐骨形成(Sequestrum formation)などを慎重に確認することが重要です。

下顎骨の骨折では、常に外科的治療が必要とされるわけではなく、片側性(Unilateral)かつ非変位性骨折(Non-displaced fracture)で、顕著な咀嚼不全を示さない症例では、保存性療法(Conservative therapy)による骨治癒が期待できることが報告されています。しかし、骨折が両側性であったり、重篤な骨折片変位、下顎の不安定性、咀嚼不全などを呈する症例では、外科的整復による骨折部再構築(Fracture reconstruction)が必要で、また、過剰な仮骨形成(Excessive callus formation)を予防して外観を向上させるという、美容性の理由で外科治療が選択される場合もあります。口腔手術(Oral surgery)では術創の完全滅菌(Complete sterilization)は不可能であるため、術前には抗生物質療法(Anti-microbial therapy)と、類毒素ワクチン(Toxoid vaccine)の投与による破傷風予防(Tetanus prophylaxis)を施すことが重要です。

切歯を含む下顎吻側部の骨折では、切歯間に渡したワイヤーを用いての口腔内固定法(Intraoral wire fixation)による整復が行われ、骨折線が切歯と犬歯(Canine teeth)のあいだに生じた場合には、第三切歯(Third incisor tooth)と犬歯にワイヤーを橋渡しさせての口腔内固定が行われます。骨折線が片側性に歯槽間縁に生じた場合には(水平枝部には達していない場合)、第三切歯と第二前臼歯(Second premolar tooth)(=狼歯を除く最前方の臼歯)にワイヤーを橋渡しさせての口腔内固定が行われます。骨折線が片側性に歯槽間縁より後方に生じて、さらに下顎骨の水平枝部に達している場合には、口腔内ワイヤー固定法のみでは充分な背腹側方向への安定性を達成できないため、骨折部の安定性向上のためアクリル素材による固定具強化(Acrylic reinforcement)や、横方向からの螺子固定術(Lag screw fixation)が併用される場合もあります。また、腹側皮質骨面(Ventral cortex)でのテンションワイヤー固定術(Tension wire fixation)や、外側皮質骨面(Lateral cortex)でのプレート固定術(Plate fixation)による整復が応用される症例もあります。骨折線が両側性に歯槽間縁より後方に生じた場合には、極めて重篤な下顎不安定性を生じる事から、横方向への骨折片虚脱(Fracture collapse)を続発する危険があるため、U字型の金属棒(U-shaped metal bar)を口腔内の頬側面(Buccal surface)に挿入して、この金属棒を切歯および臼歯にワイヤー固定する手法が有効です。垂直枝を含む下顎尾側部の骨折では、不完全骨折(Incomplete fracture)の場合には、外側皮質骨面でのテンションワイヤー固定術による整復が行われ、完全骨折(Complete fracture)の場合には、プレート固定術による整復が行われます。鉤状突起の骨折では骨折片の外科的切除(Surgical removal)が行われ、顎関節部の骨折では下顎骨関節突起切除術(Mandibular condylectomy)による治療例が報告されています。

下顎骨の骨折においては、骨折部の安定化が達成されれば、患馬は一般的に手術直後から良好な食餌を示しますが、軟らかい飼料給餌を介して外科的固定部の保護が試みられる事が一般的です。また、可能な限りにおいて一日数回の口腔内洗浄を行うことも有用で、固定具除去が行われるまでは抗生物質療法と非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)の投与が継続されます。インプラントの除去は、通常は6~8週間で可能ですが、継続的な触診およびレントゲン検査によって、固定具のゆるみ度合いや骨折の治癒経過をモニタリングすることが重要です。

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