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馬の文献:尺骨骨折(Denny et al. 1987)

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「馬の肘頭骨折の外科的治療:25症例の比較調査」
Denny HR, Barr AR, Waterman A. Surgical treatment of fractures of the olecranon in the horse: a comparative review of 25 cases. Equine Vet J. 1987; 19(4): 319-325.

この症例報告では、肘頭骨折(Olecranon fracture)に対して、プレート固定術(Plate fixation)を介しての外科的療法、または、馬房休養(Stall rest)を介しての保存性療法(Conservative treatment)が応用された、25頭の患馬の治療成績が報告されています。

この症例報告では、肘頭骨折の病態を、タイプ1:骨端骨折(Physeal fracture)(タイプ1a:非関節性、タイプ1b:関節性)、タイプ2:単純関節性骨折(Simple articular fracture)、タイプ3:非関節性骨折(Non-articular fracture)、タイプ4:粉砕骨折(Comminuted fracture)、タイプ5:尺骨遠位幹部骨折(Distal ulnar shaft fracture)、という五種類に分類されました。

結果としては、25頭の肘頭骨折の患馬のうち、治療が試みられなかったり経過追跡(Follow-up)ができなかった二頭を除いた23頭を見ると、プレート固定術が応用された21頭では、正常歩様(“Soundness”)を回復したのは76%(16/21頭)に及んだのに対して、保存性療法が応用された2頭では、正常歩様を回復したのは50%(1/2頭)にとどまったことが報告されています。このため、馬の肘頭骨折に対しては、プレート固定術を介しての外科的療法によって、骨折治癒および予後の改善が期待され、正常歩様まで回復できる可能性が高いことが示唆されました。しかし、外科的療法の治療効果は、以下のように、骨折タイプによってかなり異なる傾向を示していました。

タイプ1bの肘頭骨折(=サルター・ハリスのタイプ2骨折:Salter-Harris Tyoe-2 fracture)を呈した一頭の患馬では、プレート固定術が応用され、跛行再発を示すことなく正常歩様に復帰しました。この症例報告では、タイプ1骨折の症例数が少なく、その治療成績を正確に評価するのは難しかったものの、子馬に好発する骨折であることを考慮すると、内固定術(Internal fixation)によって十分な骨折治癒が起こり、良好な予後を示す場合が多いと考えられました。

タイプ2の肘頭骨折を呈した十四頭の患馬では、十二頭に対してプレート固定術が応用され、このうち十頭は、跛行再発を示すことなく正常歩様に復帰しましたが、あとの二頭は再骨折(Refracture)または屈曲性肢変形症(Flexural limb deformity)で安楽死(Euthanasia)となりました。一方、保存性療法が応用された二頭では、一頭は経過追跡ができず、あとの一頭は骨折部の癒合不全(Nonunion)を起こしたことが報告されています。このため、タイプ2は馬の肘頭骨折の中でも最も発症頻度の高い病態であることが示され、プレート固定術によって、十分な骨折治癒と正常歩様を回復する症例が多いことが示唆されました。

タイプ3の肘頭骨折を呈した三頭の患馬では、全頭に対してプレート固定術が応用され、三頭ともが跛行再発を示すことなく正常歩様に復帰しました。この症例報告では、タイプ3骨折の症例数は少なく、その治療成績を正確に評価するのは難しかったものの、内固定法によって十分な骨折治癒が期待される場合が多いことが示唆され、骨折線が関節腔(Joint space)に達していないため、変性関節疾患(Degenerative joint disease)などの合併症を起こす危険も少ないと考えられました。

タイプ4の肘頭骨折を呈した四頭の患馬では、一頭は経済的な理由で安楽死となり、他の三頭に対してプレート固定術が応用されましたが、跛行再発を示すことなく正常歩様を回復したのは一頭のみで、あとの二頭では、持続性の慢性跛行(Persistent chronic lameness)を示したり、再骨折によって安楽死となりました。このため、馬におけるタイプ4の肘頭骨折では、内固定法が応用された場合でも、骨折の癒合不全を続発して、予後不良となる危険性が高いことが示唆されました。

タイプ5の肘頭骨折を呈した三頭の患馬では、一頭は保存性療法が応用され、跛行再発を示すことなく正常歩様に復帰しました。しかし、プレート固定法が応用された他の二頭では、一頭は正常歩様を回復しましたが、もう一頭は感染性関節炎(Septic arthritis)のため安楽死となり、この一頭は重度の骨折片変位(Fragment displacement)、および皮膚切開創の離開(Breakdown of skin incision)を起こしており、皮下組織および骨組織の治癒遅延から、二次性の細菌感染(Secondary bacterial infection)と関節腔への波及につながったと考察されています。

一般的に、馬の尺骨は体重支持機能(Weight support function)ではなく、上腕三頭筋(Triceps brachii muscle)からの牽引力を肘関節(Elbow joint)の伸展運動に変換する機能を有しているため、尺骨骨折の内固定に際しては、それほど強度の高いインプラントを要せず、テンションバンド作用に寄与できるだけの強度を有する、幅の狭いダイナミック・コンプレッション・プレートによって、十分な骨折整復と治癒促進が期待できることが知られています。一方、尺骨は内側は凹形(Concave medially)、外側は凸形(Convex laterally)をしているため、尺骨尾側皮質骨面(Caudal ulnar cortex)にプレートを設置する際には、その外側部にドリル穿孔&螺子挿入して、螺子尖端が尺骨内側面に突出しないように注意する必要があります。また、子馬の肘頭骨折に対するプレート固定術において、螺子が橈骨の近位成長板(Proximal growth plate)に達している場合には(特に螺子先端が頭側皮質骨まで届いている場合)、できるだけ早期にプレート除去(Plate removal)して、近位橈骨の骨端軟骨早期閉鎖(Premature closure of proximal radial physis)や肘関節亜脱臼(Elbow joint subluxation)などを予防することが重要である、と提唱されています。

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