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馬の文献:橈骨骨折(Rodgerson et al. 2001)

「骨端螺子インプラントを用いての橈骨遠位部の骨折整復が行われた成馬の一症例」
Rodgerson DH, Wilson DA, Kramer J. Fracture repair of the distal portion of the radius by use of a condylar screw implant in an adult horse. J Am Vet Med Assoc. 2001; 218(12): 1966-1969.

この症例論文では、橈骨遠位部の骨折(Distal radial fracture)を呈した一頭の成馬の症例に対する、骨端螺子インプラント(Condylar screw implant)を用いての外科的療法による治療成績が報告されています。

患馬は、八歳齢のアラビアン去勢馬で(体重550kg)、転倒のあとの左前肢の非負重性跛行(Non-weight-bearing lameness)の病歴で来院し、レントゲン検査では、橈骨遠位部の骨幹端斜位骨折(Oblique metaphyseal fracture)が示され、開放骨折(Open fracture)の病態を呈したことが確認されました。

治療では、全身麻酔下(Under general anesthesia)で、内側アプローチ、および、総指伸筋(Common digital extensor muscle)と橈側手根伸筋(Extensor carpi radialis muscle)のあいだの筋膜を切開することによる外側アプローチが行われ、まず二本の皮質骨螺子(Cortical bone screw)で骨折部が仮固定されました。そして、蛍光透視装置(Fluoroscopy)を介して遠位骨端(Distal epiphysis)にドリル穿孔およびガイドピンが挿入され、トリプルリーマーを用いて骨端螺子を挿入することで、骨端螺子プレート(Condylar screw plate)が内側皮質骨面(Medial cortex)に設置されました。その後、もう一枚のダイナミック・コンプレッション・プレートを頭外側皮質骨面(Cranio-lateral cortex)に設置することで、骨折箇所の内固定術(Internal fixation)が行われました。

プレート固定後には、持続性吸引ドレイン(Continuous suction drain)の設置と、抗生物質含浸PMMAビーズ(Antibiotic-impregnated polymethyl methacrylate beads)の充填も併用され、吊起帯(Sling)を使用しての麻酔覚醒(Anesthesia recovery)が実施されました。術後に患馬は、馬房に曳き手で張ることで寝起き制限され、術後の九日目には、皮下にたまった漿液を超音波誘導穿刺(Ultrasound-guided aspiration)によって排液し、術後の25日目に抗生物質含浸PMMAビーズが除去されました。術後の八週間目のレントゲン検査では、骨折部位の治癒とインプラントが正常に保持されていることが確認され、この時点で寝起き制限を終了し、患馬は十週間目に退院しました。

患馬は、退院から六ヶ月目にグレード4跛行のため再入院し、レントゲン検査では、骨端螺子プレートの下部における骨溶解(Osteolysis)が認められたことから、全身麻酔下でこのプレートが除去されました。そして、患馬は、骨折発症から十六ヶ月目に運動復帰し、その後は跛行再発(Lameness recurrence)することもなく、順調に騎乗使役されたことが報告されています。

一般的に、長骨の近位&遠位端(Proximal/Distal end of long bone)における骨折では、骨端螺子を挿入することで、サイズの小さい骨端側の骨折片に対しても、強固にプレートを設置することができる事が知られています。この症例においても、骨端螺子によって遠位骨折片を堅固につかむようにプレート設置することで、斜位骨折整復に対する内固定術の強度を大きく向上できたと考えられました。また、成馬の橈骨完全骨折では、頭側と外側皮質骨面(Cranial and lateral cortex)に二枚のプレートが使用されることが多いですが、この症例では、骨折の立体構造(Fracture configuration)を考慮して、橈骨の内側および頭外側皮質骨面へのプレート設置が選択されました。

この症例では、開放骨折に伴うインプラントへの細菌感染(Bacterial infection)および骨髄炎(Osteomyelitis)を続発する危険性があったため、抗生物質含浸PMMAビーズを術創に充填して、極めて高濃度の抗生物質をインプラント周辺に局所作用させることで(=静脈投与よりも数百倍高い濃度)、十分な骨折治癒が達成されたと考えられました。また、初回の手術時においてPMMA内に含浸させる抗生物質としては、静脈投与するのが難しいアミカシン(成馬の場合には静注では高額になり過ぎるため)が選択されました。さらに、抗生物質含浸PMMAを用いてのプレート接着術(Plate luting)を併用するという選択肢もありうる、という考察がなされています。

この症例では、一度目の手術のあとに、術創からの検体を用いて病原体培養(Pathogen culture)および抗生物質感受性試験(Anti-microbial susceptibility testing)が行われ、カンジダ属真菌が分離されました。このため、この病原菌に有効な抗真菌剤であったアンフォテリシンBを含浸させたPMMAが、術部の軟部組織内へと充填され、術後合併症(Post-operative complication)を続発することなく、真菌感染(Fungal infection)が制御されたことが報告されています。また、皮下に溜まった漿液は細菌感染に伴う浸潤液ではなかったため、鋭い骨折端によって傷付けられた腱鞘(Tendon sheath)から漏れた滑液が貯留(Synovial fluid accumulation)したものであった、という考察がなされています。

この症例では、術後に、骨端螺子プレートの下部での骨溶解と、それに伴う重度跛行を発現したことから、このプレートの外科的除去が選択されました。しかし、この合併症の発現時には一度目の手術から八ヶ月以上が経っていたため、細菌感染や骨の血流不全(Bone avascularity)によるものとは考えにくく、直径の大きい骨端螺子を用いてのプレート固定が施された箇所において、正常な生理的弾性運動が阻害(Restriction of normal physiologic elastic motion)されて骨溶解に至った、という病因論が仮説されています。

この症例では、骨端螺子プレートの除去の際に、レンチによって螺子の除去が試みられましたが、レンチが破損したため、プレート外筒(Plate barrel)を用いて骨端螺子プレートの除去が達成されました。また、骨端螺子プレートが除去された後、もう一枚のダイナミック・コンプレッション・プレートはそのまま残されましたが、この残存したプレートに起因すると考えられる疼痛や跛行は認められませんでした。

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