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馬の文献:橈骨骨折(Sanders-Shamis et al. 1986)

「馬の橈骨骨折:47症例の回顧的調査」
Sanders-Shamis M, Bramlage LR, Gable AA. Radius fractures in the horse: a retrospective study of 47 cases. Equine Vet J. 1986; 18(6): 432-437.

この症例論文では、馬の橈骨骨折(Radius fracture)の病態把握および治療成績を評価するため、1975~1985年にかけて、橈骨骨折を呈した47頭の患馬(破片骨折または不完全骨折を除く)の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。この47頭のうち、19頭は経済的理由もしくは予後不良が予測されるという理由から安楽死(Euthanasia)が選択され、治療が行われた28頭のうち24頭ではプレート固定術(Plate fixation)、残りの四頭では馬房休養(Stall rest)とギプス装着による保存性療法(Conservative treatment)が選択されました。

結果としては、治療が行われた28頭の患馬うち、若齢馬(二歳以下)の症例では18/22頭において骨折治癒が達成されたのに対して(生存率:82%)、成馬の症例では6頭のうち全頭が予後不良を示し安楽死となりました(生存率:0%)。この若齢馬の症例のうち、骨折タイプ別の生存率を見ると、横骨折(Transverse fracture)および骨端骨折(Physeal fracture)では100%であったのに対して、斜骨折(Oblique fracture)では57%、粉砕骨折(Comminuted fracture)では22%にとどまりました。また、生存して経過追跡(Follow-up)ができた患馬のうち、跛行(Lameness)を再発せず運動復帰した馬の割合は、横骨折では86%、骨端骨折では80%、斜骨折では75%であったことが報告されています。このため、馬の橈骨骨折では、成馬の症例では殆どが予後不良を呈するのに対して、子馬~若齢馬の症例では外科的療法によって十分な骨折治癒を示し、特に、横骨折および骨端骨折では良好な予後を呈する場合が多いことが示唆されました。

この研究では、外科的整復において見られた術後合併症としては、細菌感染(Bacterial infection)に伴うインプラント損失が五頭(上記写真の白矢印はゆるんだ螺子)、内固定の強度不足による原発性のインプラント損失(Primary implant failure)が三頭、対側肢の負重性蹄葉炎(Support laminitis on the contralateral limb)が一頭などとなっていました。このうち、術部の細菌感染を起こしたのは、開放骨折(Open fracture)の症例では75%、閉鎖骨折(Closed fracture)の症例では20%で、細菌感染に関わらず骨折治癒が達成された症例は43%にとどまりました。このため、開放骨折を呈した馬の橈骨骨折では、細菌感染の続発から骨折の治癒不全を起こす場合が多いことが示唆されましたが、この論文の発表時には一般的でなかった抗生物質の局所灌流(Regional limb perfusion)や、術創内への抗生物質含有PMMAの充填などによって、細菌感染を予防できるケースもあると推測されます。また、閉鎖骨折の場合でも、最小侵襲性のプレート固定術(Minimally-invasive plate fixation)を応用することで、細菌感染の発症率を抑えられるかもしれません。

一般的に馬の橈骨では、近位骨端軟骨(Proximal physis)が閉鎖するのは11~18ヶ月齢、遠位骨端軟骨(Distal physis)が閉鎖するのは22~42ヶ月齢であるため、この時期には骨折線と成長板(Growth plate)との鑑別診断を要すると同時に、この年齢以下の症例において、骨端をまたぐようにプレートが設置された場合には、出来るだけ早期にプレート除去を行う必要があります。また、生後数ヶ月のあいだに、仮骨形成(Callus formation)によって橈骨と尺骨(Ulna)が癒合してしまうと、肘関節不全(Elbow dysphagia)を続発する危険性があることが知られています。さらに、橈骨骨折に伴って、尺骨骨折を併発した場合には、これも一緒に整復することで、肘関節面の再構築(Reconstruction of elbow joint surface)を達成する必要があると考察されています。

この研究では、橈骨骨折の骨折病態としては、粉砕骨折が45%と最も多く、次いで、斜骨折が25%、横骨折が15%、骨端骨折が15%となっていました。このうち、粉砕骨折の症例ではその67%が成馬であったのに対して、斜骨折の67%と骨端骨折の100%が二歳齢以下の若齢馬で、横骨折の100%が六ヶ月齢以下の子馬であったことが示されました。また、粉砕骨折ではその52%が骨幹中央部(Mid-diaphyseal region)に発症していたのに対して、斜骨折ではその67%が近位部(Proximal region)に発症していました。

この研究における外科的療法においては、横骨折を呈した七頭では、四頭が一枚のプレート(頭外側皮質骨面)、残りの三頭は二枚のプレート(頭側および外側皮質骨面)を用いて骨折整復されたのに対して、斜骨折を呈した七頭では、全頭に対して二枚のプレートが用いられ、その設置箇所は、頭側&外側皮質骨面が四頭、頭側&尾側皮質骨面が二頭、頭側&内側皮質骨面が一頭などとなっていました。一方、粉砕骨折におけるプレート設置箇所(全頭が二枚のプレート固定)はその骨折線の走行によってまちまちで、頭側&外側、頭側&内側、頭外側&尾外側などが含まれました。

一般的に馬の橈骨では、緊張面(Tension surface)は頭外側皮質骨面(Cranio-lateral cortex)であるため、橈骨骨折のプレート固定に際しては、総指伸筋(Common digital extensor muscle)と橈側指伸筋(Extensor carpi radialis muscle)のあいだからアプローチして、頭側皮質骨面に一枚、もしくは頭側および外側皮質骨面にそれぞれ一枚ずつのプレートが設置されます。一方、骨折線の走行によって、尾側または尾外側皮質骨面へのプレート設置を要する場合には、外側尺骨筋(Ulnaris lateralis muscle)と深指屈筋の尺側頭(Ulnar head of deep digital flexor muscle)のあいだからアプローチされることが一般的です。

この研究では、プレート固定によって骨折治癒が達成された15頭のうち、60%においてプレート除去(Plate removal)が選択されました。馬の橈骨骨折に対するプレート固定術では、術部の感染が見られない限りは、プレート除去は必ずしも要しないと提唱されていますが、競走馬および乗用馬として使役される場合には、プレートが橈骨がしなる動きを妨げて軽度の疼痛を呈する可能性を考慮して、調教開始前にプレート除去することが推奨されています。

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