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馬の文献:手根骨破片骨折(Kawcak et al. 2011)

「馬の実験的骨関節炎の軟骨下骨、血清バイオマーカー、滑液バイオマーカーに対するPSGAG治療および衝撃波療法の効果」
Kawcak CE, Frisbie DD, McIlwraith CW. Effects of extracorporeal shock wave therapy and polysulfated glycosaminoglycan treatment on subchondral bone, serum biomarkers, and synovial fluid biomarkers in horses with induced osteoarthritis. Am J Vet Res. 2011; 72(6): 772-779.

この研究論文では、骨関節炎(Osteoarthritis)に対する体外衝撃波療法(extracorporeal shock wave treatment)の治療効果を評価するため、片方の前肢の遠位橈側手根骨(Distal radial carpal bone)に軟骨欠損(Cartilage defect)を作成した二十四頭の実験馬のうち、八頭は偽手術(Sham surgery)(=対照郡)、八頭はポリ硫酸グリコサミノグリカン(Polysulfated glycosaminoglycan: PSGAG)の関節注射(術後の14日目から四日おき)、残りの八頭は体外衝撃波療法(術後の14日目と28日目)を行い、トレッドミル運動による負荷を与えて、レントゲン検査(Radiography)、血清および滑液中のバイオマーカー(Serum and synovial fluid biomarkers)の測定、CT検査(Computed tomography)、および、滑膜(Synovial membrane)と関節軟骨(Articular cartilage)の組織学的検査(Histologic evaluation)が行われました。

結果としては、体外衝撃波療法が用いられた関節では、対照郡やPSGAG治療郡の関節に比べて、橈側手根骨(Radial carpal bone)および第三中手骨(Third carpal bone)の軟骨下骨の骨密度(Bone density)は変化しておらず、また、骨形成(Bone formation)の指標であるミネラル化骨表面(Mineralized bone surface)、骨多孔度(Bone porosity)、海綿骨小柱の厚さ(Trabecular thickness)、骨石灰化速度(Mineral apposition rate)、拡散性骨標識の面積(Area of diffuse labeling)、などにも有意差は認められませんでした。このため、馬の手根骨の破片骨折片(Carpal chip fracture)が摘出された後、もしくは調教中の健常馬に対して、手根関節への体外衝撃波療法を実施しても、軟骨下骨の治癒促進(Bone healing enhancement)や骨強度の増加(Improvement in bone strength)などの効果は期待できないことが示唆されました。

一般的に、馬の関節疾患に対する衝撃波療法は、骨関節炎以外にも、大腿骨内側顆(Medial femoral condyle)などに発症した軟骨下骨嚢胞(Subchondral bone)の治療や、足根関節の変性関節疾患(Degenerative joint disease in tarsal joint)(いわゆる飛節内腫:Bone spavin)を骨性癒合(Bony fusion)を促す目的でも、経験的に広く用いられています。しかし、今回の実験における手根関節のデータに基づけば、これらの関節疾患に対して衝撃波療法を実施した場合に、大腿骨の軟骨下骨に存在する骨嚢胞病巣や、足根関節の軟骨下骨において、骨形成および骨再生(Bone formation/regeneration)を促進させる効果が発揮できる、という確定的な根拠は示されませんでした。

この研究では、体外衝撃波療法が用いられた関節においては、血清中および滑液中のバイオマーカー濃度が有意に上昇しており、これらのバイオマーカーには、一型コラーゲンのカルボキシル末端(C-terminal of type I collagen)や、関節軟骨に含まれるアグリカン成分の分解産物であるCS846抗原決定基(CS846 epitope)などが含まれました。これら変化が見られた要因としては、衝撃波療法によってアグリカン生成が活性化(Stimulation of aggrecan synthesis)されたことが挙げられましたが、体外衝撃波療法が用いられた関節においても、関節軟骨の細線維化(Articular cartilage fibrillation)、滑膜および関節軟骨における組織学的な病態スコア(Pathologic scores)、などには有意差は認められませんでした(Frisbie et al. AJVR. 2009;70:449)。つまり、関節疾患に対する衝撃波療法では、アグリカンの生成亢進は生化学的レベルにとどまり、滑膜や関節軟骨の治癒を組織学的レベルで促進させるほどの効果は、あまり期待できないことが示唆されました。

上述にある過去の文献では、馬の関節疾患への衝撃波療法によって、跛行や疼痛の改善と言った「症状改善効果」(Symptom-modifying effect)が示されることが報告されています。しかしこれは、滑膜炎(Synovitis)の減退や軟骨治癒(Cartilage healing)の促進などの「病気改善効果」(Disease-modifying effect)に直接的に寄与するものではなく、神経線維や侵害受容器が局所的に損傷(Damage to local nociceptors or nerve fiber)されたり、末梢神経伝達物質が枯渇(Depletion of peripheral neurotransmitters)することで生じるものと考えられています(Ohtori et al. Neurosci Lett. 2001;315:57, Bolt et al. AJVR. 2004;65:171, Abed et al. AJVR. 2007;68:323)。このため、実際の臨床症例に対して衝撃波療法が応用される際には、原発疾患(Primary disorder)への治療効果は限定的である反面、治療箇所に痛覚消失効果(Analgesic effect)が生じるという点を考慮して、運動復帰の時期を慎重に判断したり、「病気改善効果」が証明されている他の治療法を併用する必要があると提唱されています(Frisbie et al. AJVR. 2009;70:449)。

この研究では、体外衝撃波療法が用いられた馬において、血清中のオステオカルシン濃度が有意に上昇しており、これは骨再構築(Bone remodeling)を示唆する所見であると考察されています。しかし、上述のように、衝撃波が当てられた箇所では骨形成の亢進は起こっていなかったことから、このオステオカルシンの濃度上昇の有意性(Significance)は明らかではありません。そして、このような骨バイオマーカーの変化が、衝撃波によって微細損傷(Mico-damage)した骨が修復する過程で起こったものなのか、一過性の全身性&局所性再生促進現象(Transient local/systemic acceleratory phenomenon)を示すものなのかを解明するためには、更なる研究を要すると考えられました。

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