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馬の文献:手根骨破片骨折(Wright et al. 2011)

「直径2.7mmの螺子を用いての手根骨破片骨折の関節鏡的整復術」
Wright IM, Smith MR. The use of small (2.7 mm) screws for arthroscopically guided repair of carpal chip fractures. Equine Vet J. 2011; 43(3): 270-279.

この症例論文では、馬の手根骨破片骨折(Carpal chip fracture)に対する新しい外科療法(Novel surgical treatment)を検討するため、2004~2008年にかけて、橈側手根骨(Radial carpal bone)、第三中手骨(Third carpal bone)、または遠位橈骨(Distal radius)の破片骨折を呈して、骨片の螺子固定術(Lag screw fixation)(螺子直径:2.7mm)が応用された33頭の患馬の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、33頭の患馬のうち、経過追跡(Follow-up)ができた28頭を見ると、レース復帰を果たしたのは82%(23/28頭)で、骨折前と同レベルまたはより高いレベルでの出走を果たした馬は68%(19/28頭)であったことが示されました。また、28頭の患馬の来院時には、全頭が跛行(Lameness)および関節膨満(Synovial Effusion)を呈し、関節包の肥厚(Joint capsule thickening)が見られた馬も九頭にのぼりましたが、退院時には100%の馬が跛行消失を示していました。そして、螺子挿入に起因する術後合併症(Post-operative complication)を起こした馬は一頭もなく、術後の五ヶ月目までのレントゲン検査(Radiography)では95%の馬において良好な骨折治癒(Satisfactory fracture healing)が認められ、術後の五ヶ月以後のレントゲン検査では100%の馬において骨折の完全癒合(Complete bony union)が見られました。このため、馬の手根骨におけるサイズの大きい破片骨折では、骨片の螺子固定術によって十分な病巣治癒と良好な予後が達成され、レース復帰および競走能力の維持を達成する馬の割合が、かなり高いことが示唆されました。

一般的に、馬の手根骨破片骨折では、サイズの大きい骨片が摘出(Fragment removal)されると、関節の微細不安定性(Micro-instability)および変性関節疾患の進行(Progression of degenerative joint disease)などを続発して、予後が悪くなりやすいことが知られています。また、他の文献では、骨折箇所の関節損傷を定量的に評価(Quantitative analysis)する目的で、グレード1:僅かな関節軟骨の細繊維化および骨折縁から5mm以内の破片化、グレード2:骨折縁から5mm以上および関節面の30%以下の関節軟骨変性、グレード3:関節面の50%に達する関節軟骨変性、グレード4:骨折による重度の骨損失、という四段階の病変グレード化が行われています(McIlwraith et al. JAVMA. 1987;191:531)。そして、グレード3&4の病態では予後が有意に悪化し、特にグレード4の軟骨損傷を呈した症例では、骨折前と同レベルまたはより高いレベルでの出走を果たした馬は54%にしか過ぎませんでした。これらの知見から、サイズの大きい破片骨折を発症した症例に対しては、手根骨盤状骨折(Carpal slab fracture)の治療と同様に、骨片を螺子固定することで、関節面の連続性(Articular surface continuity)を保つ治療指針が有効であると考察されています。

この研究では、螺子固定術を応用する基準としては、「螺子挿入するのに十分な大きさの骨片および基盤(Sufficient fragment size and infrastructure)が存在する場合」というやや曖昧な表現になっており、正確な骨片のサイズは示されていません。外科手技的には、骨片の幅や奥行き(Fragment width/depth)が少なくても、高さ(Fragment height)が十分であれば螺子挿入はできると推測されますが、関節面の損失(Loss of articular surface)という観点に立てば、幅や奥行きのある骨片ほど外科的整復するメリットは大きいと言えます。このため、今後の研究では、レントゲン検査やCT検査などの術前画像診断(Pre-operative diagnostic imaging)による骨片サイズの測定値に基づいて、骨片摘出ではなく、螺子固定術を選択するべきであると言えるほどの骨片の幅&奥行き&高さを、より詳細に検討する試みが必要であるかもしれません。

この研究では、橈側手根骨(遠位背側骨縁:Dorso-distal edge)の破片骨折が螺子固定された症例では、レース復帰率は79%で、骨折前と同レベルまたはより高いレベルでの出走を果たした馬は63%でした。一方、第三手根骨(近位背側骨縁:Dorsoproximal edge)の破片骨折が螺子固定された症例では、レース復帰率は88%で、骨折前と同レベルまたはより高いレベルでの出走を果たした馬は75%でした。このため、橈側手根骨よりも第三手根骨の破片骨折のほうが、骨片の螺子固定術後にはやや予後がよい傾向が見られました(サンプル数が少ないため統計的な有意差は無し)。

この研究の術式では、骨片にカウンターシンクが施されたことから、骨表面に螺子頭(Screw head)が突出(Protrusion)することはありませんでした。一方で、手根骨の盤状骨折における螺子固定術では、螺子頭が関節外の軟部組織(Extra-articular soft-tissue)に位置するのに対して、今回の研究の手法では、螺子頭は関節腔内に残存することになります。しかし、この螺子頭の存在が骨関節炎を誘発する危険性については検討されておらず、また、骨折治癒後における螺子除去(Screw removal)の必要性およびその時期についても、この論文内では明瞭には考察されていません。さらに、骨片の形状や発生箇所によっては、螺子を一本のみ使用した整復法で、十分な骨片不動化(Fragment immobilization)が達成されるか否かについても、屍体肢(Cadaveric limb)を用いた体外実験(In vitro experiment)によって評価する必要があるかもしれません。

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