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馬の文献:手根骨破片骨折(Nicholson et al. 2010)

Blog_Litr0307_Pict10_#36

「サラブレッドにおける年齢、関節タイプ、骨軟骨損傷と血清および滑液の二型コラーゲン・バイオマーカー濃度との関係」
Nicholson AM, Trumble TN, Merritt KA, Brown MP. Associations of horse age, joint type, and osteochondral injury with serum and synovial fluid concentrations of type II collagen biomarkers in Thoroughbreds. Am J Vet Res. 2010; 71(7): 741-749.

この研究論文では、血液検査および滑液検査(Arthrocentesis)による骨軟骨損傷(Osteochondral injury)の診断法を検討するため、19頭の健常な成馬、40頭の健常な若齢馬(Yearlings)、および、中間手根関節(Mid-carpal joint)または球節(Fetlock joint)の骨軟骨損傷を呈した41頭の患馬における、血清(Serum)および滑液(Synovial fluid)の中の二型コラーゲン・バイオマーカー(Type II collagen biomarkers)の濃度測定が行われました。この研究では、滑液検査および血液検査において、二型コラーゲンのペプチド断片であるCPII抗原決定基、二型コラーゲンのカルボキシル末端(C-terminal of type II collagen: CTX2)、一型および二型コラーゲンの分解片(Type I and II collagen degradation fragments)であるC1,2C、二型コラーゲンの分解片であるC2C、などのバイオマーカーの濃度測定が行われました。

結果としては、骨軟骨損傷を呈した馬では、健常成馬に比べて、滑液中のCPII、CTX2、C1,2C、C2Cの濃度が有意に高く、これらは、中間手根関節の骨軟骨損傷を呈した馬のほうが、球節の骨軟骨損傷を呈した馬に比べて、より高い濃度を示したことが報告されています。また、健常な若齢馬では、健常成馬に比べて、中間手根関節の滑液中のCTX2、C1,2C、C2Cの濃度が有意に高かったことが示されました。このため、滑液中の二型コラーゲン・バイオマーカーの濃度上昇は、骨軟骨損傷の有無以外にも、馬の年齢および発症箇所の関節の違いに影響されることが示唆されました。今後の研究では、年齢別および関節別の正常値を定めることで、滑液中のバイオマーカー濃度を用いての診断における、信頼性(Reliability)および実行可能性(Feasibility)を評価する必要があると考えられました。また、これらのバイオマーカーを指標にする場合には、必ず年齢が合致した対照馬(Age-matched control)からの検体を使わなければならない、という警鐘も鳴らされています。

この研究では、骨軟骨損傷を呈した馬では、健常成馬に比べて、血清中のC1,2Cの濃度が有意に高く、また、中間手根関節の骨軟骨損傷を呈した馬では、健常成馬に比べて、血清中のCTX2濃度が有意に低かったことが報告されています。また、健常な若齢馬では、健常成馬に比べて、血清中のCTX2およびC1,2Cの濃度が有意に高かったことが示されました。このため、今後の研究では、血清中のバイオマーカー濃度を用いての診断による、感度(Sensitivity)、特異度(Specificity)、陽性反応的中率(Predictive value of positive test)などを算出して、骨軟骨損傷の判別能(Discriminant ability)を評価する必要があると考えられました。しかし、発育過程の馬では、自然な二型コラーゲン生成活性によるバイオマーカー濃度の上昇が見られることから、骨軟骨損傷に起因するバイオマーカー濃度の上昇との鑑別は、難しい場合もありうると考えられました。

この研究では、血清中および滑液中の各バイオマーカーの濃度と、レントゲン検査(Radiography)での病態スコア、および、関節鏡手術(Arthroscopy)での病変スコアのあいだの相関(Correlation)が評価されましたが、十分な正の相関(=相関係数が0.6以上)を示したバイオマーカーはありませんでした。また、各バイオマーカーの血清濃度と滑液濃度を比較した場合にも、十分な相関(=相関係数が0.6以上)を示したバイオマーカーはありませんでした。このため、血清中および滑液中のバイオマーカー濃度が、原発疾患(Primary disorder)の重篤度(Severity)を定量的に評価(Quantitative evaluation)する指標になる可能性は低いと考察されています。今後の研究では、他のバイオマーカーの測定、もしくは複数のバイオマーカー濃度を加味しての診断などを、より詳細に検討する必要があると考えられました。

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