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馬の文献:手根骨破片骨折(Frisbie et al. 2009d)

「体外衝撃波療法による馬の中間手根関節の実験的骨関節炎に対する治療効果の評価」
Frisbie DD, Kawcak CE, McIlwraith CW. Evaluation of the effect of extracorporeal shock wave treatment on experimentally induced osteoarthritis in middle carpal joints of horses. Am J Vet Res. 2009; 70(4): 449-454.

この研究論文では、手根骨破片骨折(Carpal chip fracture)の関節鏡的骨片摘出(Arthroscopic fragment removal)において、その予後(Prognosis)に大きく影響する要因である骨関節炎(Osteoarthritis)の予防法および治療法を検討するため、片方の前肢の遠位橈側手根骨(Distal radial carpal bone)に軟骨欠損(Cartilage defect)を作成した二十四頭の実験馬のうち、八頭は偽手術(Sham surgery)(=対照郡)、八頭はポリ硫酸グリコサミノグリカン(Polysulfated glycosaminoglycan: PSGAG)の関節注射(術後の14日目から四日おき)、残りの八頭は体外衝撃波療法(extracorporeal shock wave treatment)(術後の14日目と28日目)を行い、トレッドミル運動による負荷を与えて、レントゲン検査(Radiography)、滑液検査(Arthrocentesis)、跛行検査(Lameness examination)、および、滑膜(Synovial membrane)と関節軟骨(Articular cartilage)の組織学的検査(Histologic evaluation)が行われました。

結果としては、体外衝撃波療法が行われた関節では、対照郡およびPAGAGが投与された関節に比べて、跛行グレードが有意に低かったものの、関節膨満(Joint effusion)、滑液中の蛋白濃度および白血球数、滑液中のプロスタグランディンE2(Prostaglandin E2: PGE2)およびグリコサミノグリカン(Glycosaminoglycan)の濃度、関節軟骨の細線維化(Articular cartilage fibrillation)、滑膜および関節軟骨における組織学的な病態スコア(Pathologic scores)、などには有意差は認められませんでした。このため、馬の手根骨の破片骨折片が摘出された後に、体外衝撃波療法を実施することで、跛行や疼痛の改善と言った「症状改善効果」(Symptom-modifying effect)は見られるものの、滑膜炎(Synovitis)の減退や軟骨治癒(Cartilage healing)の促進などの「病気改善効果」(Disease-modifying effect)は認められないことが示唆されており、変性関節疾患(Degenerative joint disease)に対する治療効果が証明されている他の療法を併用する必要がある、という考察がなされています。

他の文献を見ても、体外衝撃波療法を馬の遠位肢に用いることで、痛覚消失効果(Analgesic effect)が見られることが報告されており(Dahlberg et al. JAVMA. 2006;229:100 & McClure et al. AJVR. 2005;66:1702)、今回の研究でも、同様なデータが示されたものの、関節組織の病態自体への効能は認められませんでした。また、他の文献では、衝撃波が当てられた箇所において、痛覚消失が見られる機序としては、(1)衝撃によって神経線維が損傷(Damage to nerve fiber)されること(Bolt et al. AJVR. 2004;65:1714)、(2)侵害受容器が局所的に損傷(Damage to local nociceptors)されること(Abed et al. AJVR. 2007;68:323)、(3)末梢神経伝達物質が枯渇(Depletion of peripheral neurotransmitters)すること(Ohtori et al. Neurosci Lett. 2001;315:57)、(4)オピオイドの分泌による開門制御作用(Gate-control effect via opioid)が起こること(Haake et al. Arch Orthop Trauma Surg. 2002;122:518)、などが挙げられています。つまり、いずれの説においても、衝撃波療法によって、原発疾患(Primary disorder)である関節炎を治す効果は期待できず、単に痛みが覆い隠されてしまうことによって、完治していない関節に過剰な負荷が及ぼされたり、適切な運動復帰の時期を見誤るなどの、有害作用(Detrimental effect)につながる可能性もあると考えられました。

一方、衝撃波療法が骨組織に及ぼす影響に関しては、ラットを用いた実験において、間葉系前駆細胞の動員(Recruitment of mesenchymal stem cells)、血管新生(Neovascularization)の増加、トランスフォーミング増殖因子ベータ(Transforming growth factor beta)および血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor)の活性亢進、などが誘導されることが報告されており(Chen et al. JOR. 2005;22:526)、これらによって治療箇所の骨治癒を促進(Bone healing enhancement)する作用が期待されています。このため、今後の実験では、骨関節炎を呈した馬の関節に衝撃波療法を行うことで、軟骨下骨(Subchondral bone)に対して「病気改善効果」が示されるか否かを、より詳細に評価する必要があると考察されています。

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