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馬の文献:手根骨破片骨折(Frisbie et al. 2007)

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「関節内投与された自己性調整血清が馬の実験的骨関節炎に与える臨床的、生化学的、病理学的な影響」
Frisbie DD, Kawcak CE, Werpy NM, Park RD, McIlwraith CW. Clinical, biochemical, and histologic effects of intra-articular administration of autologous conditioned serum in horses with experimentally induced osteoarthritis. Am J Vet Res. 2007; 68(3): 290-296.

この研究論文では、手根骨破片骨折(Carpal chip fracture)の関節鏡的骨片摘出(Arthroscopic fragment removal)において、その予後(Prognosis)に大きく影響する要因である骨関節炎(Osteoarthritis)の予防法および治療法を検討するため、片方の前肢の遠位橈側手根骨(Distal radial carpal bone)に軟骨欠損(Cartilage defect)を作成した十六頭の実験馬のうち、八頭は生食の関節投与(=対照郡)、残りの八頭は自己性調整血清(Autologous conditioned serum)の関節注射(術後の14、21、28、35日目)(=治療郡)を行い、トレッドミル運動による負荷を与えて、レントゲン検査(Radiography)、滑液検査(Arthrocentesis)、跛行検査(Lameness examination)、および、滑膜(Synovial membrane)と関節軟骨(Articular cartilage)の組織学的検査(Histologic evaluation)が行われました。

結果としては、治療郡の馬は対照郡の馬に比べて、跛行グレードが有意に低く、また、組織学的検査では、滑膜肥厚(Synovial membrane hyperplasia)、軟骨糜爛(cartilage fibrillation)、滑膜出血(Synovial membrane hemorrhage)などの重篤度が低い傾向が認められました。このため、手根骨の破片骨折片が摘出された後に、自己性調整血清を関節注射することで、疼痛や跛行の改善という「臨床症状改善効果」(Clinical-sign modifying effect)だけでなく、滑膜炎(Synovitis)の減退や軟骨治癒(Cartilage healing)の促進などの「病気改善効果」(Disease-modifying effect)が示され、変性関節疾患(Degenerative joint disease)の予防および治療効果が期待されることが示唆されました。

一般的に、自己性調整血清は静脈血(Venous blood)から生成された血清を指し、高濃度のインターロイキン1受容体拮抗蛋白(Interleukin-1 receptor antagonist protein: IL-1Ra)を含むことから、この血清による治療はアイラップ療法(IRAP therapy)とも呼ばれます。馬の骨関節炎では、インターロイキン1が最も重要な炎症介在性物質(Inflammatory mediator)として関与しており、この物質の働きを阻害するIL-1Raの投与によって、関節炎の治療および予防効果が期待されるという作用機序が提唱されています。この研究では、自己性調整血清を投与された関節では、対照郡の関節に比べて、35日目および70日目における関節液中のIL-1Ra濃度が、有意に高かったことが示されました。また、自己性調整血清の関節注射では、それぞれの馬自身の血液から抽出した自己性蛋白を用いる治療であるため、ステロイド関節注射などで見られる有害な作用(Detrimental effect)を生じる危険性が低いと考えられています。

この研究の筆者は、他の文献において、複数の自己性調整血清の生成キットを比較しており、自己性調整血清では対照血清に比べて、IL-1Raおよび腫瘍壊死因子アルファ(Tumor necrosis factor alpha)の濃度が有意に高かったことを報告しています(Haraha et al. EVJ. 2011;43:516)。また、人間の血液から生成した自己性調整血清の解析では、対照血清に比べて、IL-1Raの他にもインターロイキン4(IL-4)およびインターロイキン10(IL-10)の濃度も有意に増加していたことが報告されています(Meijer et al. Inflamm Res. 2003;52:404)。このうち、IL-10はサイトカイン生成抑制因子(Cytokine synthesis inhibitory factor)または抗炎症性サイトカイン(Anti-inflammatory cytokine)とも呼ばれ、“良いサイトカイン”として関節性炎症反応の減退(Reduced articular inflammation)に寄与することが知られていますが、今回の研究では、馬の自己性調整血清におけるIL-10濃度の有意な上昇は認められませんでした。

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