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馬の文献:手根骨破片骨折(Kawcak et al. 1997)

「骨軟骨片、関節鏡手術、および運動による馬の手根関節の骨関節炎モデルに対する静脈投与されたヒアルロン酸の影響」
Kawcak CE, Frisbie DD, Trotter GW, McIlwraith CW, Gillette SM, Powers BE, Walton RM. Effects of intravenous administration of sodium hyaluronate on carpal joints in exercising horses after arthroscopic surgery and osteochondral fragmentation. Am J Vet Res. 1997; 58(10): 1132-1140.

この研究論文では、手根骨破片骨折(Carpal chip fracture)の関節鏡的骨片摘出(Arthroscopic fragment removal)において、その予後(Prognosis)に大きく影響する要因である骨関節炎(Osteoarthritis)の予防法および治療法を検討するため、片方の前肢の遠位橈側手根骨(Distal radial carpal bone)に軟骨欠損(Cartilage defect)を作成した十二頭の実験馬のうち、六頭は無治療(=対照郡)、残りの六頭はヒアルロン酸(Hyaluronate)の静脈投与(術後の13日目、20日目、27日目)(=治療郡)を行い、トレッドミル運動(術後15日目から)による負荷を与えて、レントゲン検査(Radiography)、滑液検査(Arthrocentesis)、跛行検査(Lameness examination)、および、手術から72日目の滑膜(Synovial membrane)と関節軟骨(Articular cartilage)の組織学的検査(Histologic evaluation)が行われました。

結果としては、治療郡の馬は対照郡の馬に比べて、有意に低い跛行グレードを示し、滑液検査でも、有意に低い蛋白濃度およびプロスタグランディン濃度が認められました。また、組織学的検査では、治療郡の馬は対照郡の馬に比べて、滑膜の組織学的指標(Histological parameters)が有意に高かったことが報告されています。このため、馬の手根骨破片骨折における骨折片摘出(Fragment removal)では、術後のヒアルロン酸の静脈投与(Intravenous administration)によって、疼痛緩和(Pain reduction)に加えて、炎症介在物質(Inflammatory mediator)の減少に伴う滑膜炎(Synovitis)の改善が期待されることが示唆されました。

この研究では、治療郡の馬と対照郡の馬を比較した場合、滑液内のグリコサミノグリカン濃度、および、関節軟骨の組織学的スコアには、有意差は認められませんでした。このため、馬の手根骨破片骨折における骨片摘出後のヒアルロン酸注射では、跛行グレードの減少という「臨床症状改善効果」(Clinical sign-modifying effect)は確認されたものの、少なくともこの研究で応用された投与濃度&頻度においては、関節軟骨治癒の促進(Enhanced articular cartilage healing)や変性関節疾患(Degenerative joint disease)の治癒&予防などの、「病気改善効果」(Disease-modifying effect)は認められませんでした。

一般的に、ヒアルロン酸は硝子軟骨(Hyaline cartilage)および滑液(Synovial fluid)の成分であるため、その関節内投与(Intra-articular administration)および静脈投与によって、軟骨再生(Cartilage degeneration)の組成供給、滑液の粘稠性(Viscosity)の回復効果が期待されます。また、炎症細胞の増殖および走行性(Proliferation and chemotaxis of inflammatory cells)の減少、プロスタグランディンの分泌抑制、酸素由来遊離基の消去(Oxygen-derived free radical scavenger)、軟骨細胞(Chondrocytes)をインターロイキン1から保護する作用、滑膜細胞(Synoviocytes)からの内因性ヒアルロン酸分泌(Endogenous hyaluronate release)の促進、などの効能も報告されています。

この研究では、関節鏡手術(Arthroscopy)から二週目、三週目、四週目のヒアルロン酸投与によって、術後の二ヵ月半に及ぶ、長期的作用(Long-term effect)が確認されました。他の文献(鼠や兎を用いての実験)によれば、静脈投与されたヒアルロン酸の半減期は四分~五分しかないことから(Nimrod et al. J Ocul Pharmacol. 1992;8:161)、今回の研究で示されたような長期的な治療効果が、どのような機序(Mechanism)で発揮されたかについては、明確には考察されていません。このため、今後の研究では、馬におけるヒアルロン酸の薬物動態(Pharmacokinetics)、および、滑膜組織への作用機序などを、より詳細に評価する必要があると考えられました。

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