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馬の文献:手根骨破片骨折(Raidal et al. 1996)

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「馬の手根関節損傷に対する外科的治療の回顧的評価」
Raidal SL, Wright JD. A retrospective evaluation of the surgical management of equine carpal injury. Aust Vet J. 1996; 74(3): 198-202.

この症例論文では、馬の手根骨破片骨折(Carpal chip fracture)に対する外科的療法(Surgical management)の治療効果を評価するため、手根関節損傷(Carpal injury)を呈して、関節鏡手術(Arthroscopy)または関節切開術(Arthrotomy)による骨片摘出(Fragment removal)が応用された220頭の患馬の、医療記録(Medical records)の解析が行われました。

結果としては、220頭の症例のうち、術後にレース復帰した馬は76%、レース出走して入賞した馬は61%、レース出走して勝利した馬は48%であったことが報告されています。このため、馬の手根骨破片骨折では、関節鏡手術または関節切開術を介しての骨片摘出によって、比較的に良好な予後が達成され、レース復帰する馬の割合も高いことが示唆されました。また、症例郡のほうが対照郡の馬に比べて、出走回数、入賞回数、勝利数、総獲得賞金などが、いずれも有意に高かったことが報告されています。これは、もともと能力の高い馬ほど、高価な手術を選択される比率が高かったという偏向(Bias)が働いたためと推測されますが、同時に、外科的骨片摘出によって競走能力の低下を招くケースは少なかったことを反映するデータである、という仮説も成り立つと考えられました。

この研究では、手根骨破片骨折の発症箇所を見ると、遠位橈側手根骨(Distal radial carpal bone)が52%と最も多く、次いで、近位第三手根骨(Proximal third carpal bone)が21%、遠位橈骨(Distal radius)が15%、遠位中間手根骨(Distal intermediate carpal bone)が7%などとなっていました。また、左右の前肢における骨折の発症箇所を比べると、前腕手根関節(Antebrachi-carpal joint)の骨折では、左前肢(35%)よりも右前肢(65%)における発症率のほうが顕著に高いのに対して、中間手根関節(Mid-carpal joint)の骨折では、右前肢(42%)よりも左前肢(58%)における発症率のほうが僅かに高い傾向にありました。

馬の手根関節にある二つの主要関節(前腕手根関節と中間手根関節)を解剖学的に比べると、中間手根関節は上列と下列の手根骨同士が閉じるだけなのに対して、前腕手根関節は上列の手根骨と橈骨遠位端が閉じたあと、さらに僅かに回転する動きを起こすという違いがあります。このため、中間手根関節の骨折は、主に垂直方向への負荷によって起こりますが、前腕手根関節の骨折は、手根関節が過伸展(Hyper-extension)して手根骨と橈骨関節面の上端が接触することで起こると考えられます。また、手根関節の過伸展は、筋疲労(Muscle fatigue)がピークに達する最後の直線で起こりやすいと推測されています。つまり、左回りでレースすることの多い平地競走馬では、最終直線においてコーナーでの左手前の襲歩から、右手前の襲歩に踏歩変換する馬が多く、この後には疲労によって手前前肢(=右前肢)が過伸展を起こしやすいことから、右前肢の中間手根関節における骨折を誘発しやすかった、という仮説がなされています。

この研究では、対側肢にも呈した症例は6%に過ぎませんでしたが、対側肢の変性関節疾患(Degenerative joint disease)が認められた症例は32%に達していました。このため、馬の手根骨破片骨折の診断に際しては、臨床症状の有無に関わらず、必ず両前肢のレントゲン検査を実施して、より正確な予後判定(Prognostication)に努めることが重要である、という考察がなされています。

この研究では、220頭の症例のうち、82%には関節鏡手術、残りの18%には関節切開術を介しての治療が行われましたが、二つの術式による予後(レース復帰率、勝利数、獲得賞金など)には有意差は認められませんでした。しかし、切開創の小ささによる術後合併症(Post-operative complications)の危険の低さや、迅速な術創治癒(Rapid incisional healing)に伴う休養期間の短縮などの長所を考慮すると、馬の手根骨破片骨折の治療には、関節切開術よりも関節鏡手術が強く推奨されています。

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