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馬の文献:手根骨破片骨折(Moore et al. 1995)

「レントゲン上の異常所見が見られない跛行馬における手根関節の関節鏡所見:1986~1991年の41症例」
Moore RM, Schneider RK. Arthroscopic findings in the carpal joints of lame horses without radiographically visible abnormalities: 41 cases (1986-1991). J Am Vet Med Assoc. 1995; 206(11): 1741-1746.

この症例論文では、馬の手根骨骨折(Carpal fracture)の診療におけるレントゲン検査(Radiography)および関節鏡手術(Arthroscopy)の有用性を評価するため、1986~1991年にかけて、関節麻酔(Joint block)によって疼痛の原因が手根関節に限局化(Pain localization at carpus)されたものの、レントゲン検査では異常所見なし、または僅かな骨硬化症(Sclerosis)が発見されたのみで、関節鏡手術による精密検査および治療(骨片除去、螺子固定術、病巣清掃など)が行われた34頭の症例(41箇所の関節)の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、これら41頭の症例では、レントゲン所見は殆ど正常であったにも関わらず、すべて症例の関節鏡手術において異常所見が発見され、これには、中間手根骨の破片骨折(Chip fracture of intermediate carpal bone)、第三手根骨の前面または矢状盤状骨折(Frontal/Sagittal slab fracture of third carpal bone)、橈側手根骨の“粉砕”骨折("Crush" fracture of radial carpal bone)、第三手根骨の関節軟骨損傷(Articular cartilage damage)、内側掌側手根骨間靭帯の裂傷(Tearing of medial palmar intercarpal ligament)、滑膜炎(Synovitis)などが含まれました。このため、馬の手根関節における骨折および軟骨&靭帯&滑膜の異常においては、レントゲン検査で発見するのが難しい場合もあることが示唆され、跛行検査(Lameness examination)における診断麻酔(Diagnostic anesthesia)の重要性を、再確認させるデータが示されました。そして、関節麻酔によって手根関節に跛行原因が限局化された症例に対しては、積極的な関節鏡手術によって、原発疾患(Primary disorder)の特定および治療に努めることが重要であると考えられました。

この研究では、34頭の症例のうち、術後にレース復帰を果たしたのは74%(25/34頭)で、ひとつの手根関節のみが罹患した27頭では、術後にレース復帰を果たしたのは85%(23/27頭)であったことが報告されています。このうち、第三手根骨の盤状骨折を呈した15頭の症例におけるレース復帰率は87%(13/15頭)、関節軟骨損傷を呈した7頭の症例におけるレース復帰率は100%(7/7頭)であったことが報告されています。このため、手根関節の診断麻酔に陽性を示した患馬(=麻酔後に跛行が改善した馬)に対しては、レントゲン像上での異常が無いからという理由のみで、一概に馬房休養(Stall rest)などの保存性療法(Conservative treatment)を選択するのではなく、積極的な関節鏡手術を介して、原因疾患の発見、および病巣治療を行うことで、良好な予後が期待されることが示唆されました。

この研究では、14箇所の関節において、スカイライン撮影像(=Dorsoproximal-dorsodistal projection)での第三手根骨の骨硬化症が認められました。このため、例え骨折や軟骨下骨(Subchondral bone)の異常が認められない症例においても、骨硬化症の所見を示した場合には関節鏡手術による精密検査を応用するべきである、という治療選択指針が推奨されると考察されています。しかし、他の文献では、このような骨硬化症は正常範囲内での骨再構築(Bone remodeling)を示すだけの場合もある、と提唱されています(Young et al. Proc AAEP. 1988:339)。また、第三手根骨の骨折の10%は、このスカイライン撮影像のみで認められる、という知見も報告されていることから(Schneider et al. EVJ. 1988;6:33)、通例的な手根関節のレントゲン検査においても、常にこのスカイライン撮影像を含めることが重要である、という警鐘が鳴らされています。

この研究では、41箇所の関節のうち、関節膨満(Joint effusion)が見られたのは82%、屈曲試験(Flexion test)に陽性を示したのは60%にのぼりました。このため、例えレントゲン検査が陰性であった症例においても、診断麻酔、触診、屈曲試験などを駆使した包括的な跛行検査(Comprehensive lame exam)を行うことで、より信頼性の高い診断が下せることが示唆されました。

この研究で見られた内側掌側手根骨間靭帯の裂傷は、馬の手根骨骨折に稀に併発する病態であることが知られており、他の文献では、罹患馬のうち約半数において良好な治癒が示されるものの、靭帯組織の50%以上が損傷された場合には、予後が悪化しやすいことが報告されています(McIlwraith. EVJ. 1992;24:367)。

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