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馬の文献:手根骨破片骨折(Palmer. 1986)

「サラブレッドおよびスタンダードブレッドの競走馬における手根骨骨折の有病率」
Palmer SE. Prevalence of carpal fractures in thoroughbred and standardbred racehorses. J Am Vet Med Assoc. 1986; 188(10): 1171-1173.

この症例論文では、馬の手根骨骨折(Carpal fracture)の病態把握のため、1982~1985年にかけて、手根骨骨折を呈した286頭のサラブレッド競走馬およびスタンダードブレッド競走馬の、医療記録(Medical records)の解析が行われました。

結果としては、サラブレッド競走馬の手根骨破片骨折(Carpal chip fracture)の発症箇所を見ると、遠位橈側手根骨(Distal radial carpal bone)が31%と最も多く、次いで、近位第三手根骨(Proximal third carpal bone)が27%、橈骨外側遠位端(Distal lateral border of radius)が16%、近位中間手根骨(Proximal intermediate carpal bone)が10%、などとなっていました。一方、スタンダードブレッド競走馬の手根骨破片骨折の発症箇所を見ると、近位第三手根骨が62%と顕著に多く、次いで、遠位橈側手根骨が33%、近位橈側手根骨(Proximal radial carpal bone)が2%、などとなっていました。このように、サラブレッドに比べてスタンダードブレッドのほうが、中間手根関節(Mid-carpal joint)での骨折が多い要因としては、サラブレッドよりも背側蹄壁の角度(Dorsal hoof wall angle)が大きいスタンダードブレッドでは、一般に蹄反回(Hoof break-over)が容易に行われ、手根関節の過伸展(Hyper-extension)を起こしにくいこと、が挙げられています。

一般的に、馬の手根骨破片骨折は、レース後半の筋疲労(Muscle fatigue)によって、手根関節により重度の過伸展が起こり、手根骨の背側関節縁(Dorsal articular edge)に重度の衝突(Excessive collision)が生じて、破片骨折に至ると考えられています。このため、反時計回りに走行するレースでは、コーナーにおいてより多くの負荷が生じる、左前肢の外側関節面(Lateral articular surface on left forelimb)および右前肢の内側関節面(Medial articular surface on right forelimb)において(左前肢の橈骨外側遠位端など)、破片骨折の発症率が高いことが示唆されています。そして、馬の手根関節には、前腕手根関節(Antebrachial-carpal joint)と中間手根関節という二つの主要関節がありますが、関節が伸展した際の解剖学的特徴を見ると、中間手根関節は上列と下列の手根骨同士が閉じるだけなのに対して、前腕手根関節は上列の手根骨と橈骨遠位端が閉じたあと、さらに僅かに回転する動きを起こすという違いがあります。つまり、中間手根関節への負荷は主に垂直方向への荷重によって起こりますが、前腕手根関節の負荷は手根関節が過伸展して、手根骨と橈骨関節面の上端が接触することで起こるため、手根関節が過伸展にしくいスタンダードブレッドでは、前腕手根関節における骨折の有病率が低くなった、という仮説がなされています。

この研究では、211頭のサラブレッド競走馬、75頭のスタンダードブレッド競走馬の症例が含まれ、全般的な手根骨破片骨折の有病率(Prevalence)は、サラブレッドよりもスタンダードブレッドのほうが低いことが示されました。この要因としては、馬車を曳くスタンダードブレッドでは、前肢に掛かる負荷が、騎手が乗るサラブレッドよりも少ないことが挙げられています。

この研究では、サラブレッドおよびスタンダードブレッドの競走馬に見られた手根骨盤状骨折(Carpal chip fracture)の発症箇所を見ると、橈側手根骨は3%のみで、残りは全て第三手根骨に発症していました。このうち、サラブレッド競走馬では、盤状骨折の大部分(75%)が右前肢に発症していたのに対して、スタンダードブレッド競走馬では、左右の前肢に半々に発症していました。一般的に、反時計回りに走行するサラブレッド競走馬では、最後の直線では右手前で襲歩(Right lead gallop)する馬が多く、この時点で馬の筋疲労が最大になることから、重篤な手根骨間衝突による盤状骨折は、右前肢のほうが高い発症率を示したと考察されています。

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