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馬の文献:種子骨骨折(Busschers et al. 2008)

「25頭の馬における近位種子骨中央部骨折の外科的整復」
Busschers E, Richardson DW, Hogan PM, Leitch M. Surgical repair of mid-body proximal sesamoid bone fractures in 25 horses. Vet Surg. 2008; 37(8): 771-780.

この症例論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の中央部骨折(Mid-body fracture)に対する外科的療法の治療効果を評価するため、1996~2006年にかけて近位種子骨の中央部骨折に対する外科的整復(Surgical repair)が応用された25頭の患馬における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。この研究では、16頭に対して螺子固定術(Lag screw fixation)、9頭に対しては半周回ワイヤー固定術(hemi-circumferential wire fixation)が実施されました。

結果としては、25頭の種子骨中央部骨折の患馬のうち、術後にレース復帰できたのは28%(7/25頭)に過ぎず、術式に分けて見ると、螺子固定術が行われた馬では44%(7/16頭)がレース復帰したのに対して、ワイヤー固定術が行われた馬は一頭もレース復帰できませんでした(0/9頭)。このため、馬の近位種子骨における中央部骨折では、螺子固定術が応用された場合には、中程度の予後が期待されるものの、半周回ワイヤー固定術が応用された場合には、殆どの馬がレース復帰できないことが示唆されました。

他の文献において、種子骨の外科的整復における物理的強度は、螺子固定術とワイヤー固定術でほぼ同じであることが報告されています(Wilson et al. Vet Surg. 1999;28:355 and Woodie et al. Vet Surg. 2000;29:358)。にも関わらず、この研究のように、ワイヤー固定術のほうが予後が悪いという結果が示された要因としては、(1)術後に種子骨周囲の軟部組織内にワイヤーが埋没したり、軟部組織が退縮していくことで、ワイヤーがゆるんで整復強度の減退につながったこと、および、(2)腱鞘(Tendon sheath)の内部を通過させたワイヤーが屈腱組織を刺激(Irritation)したり、ワイヤーが屈腱&腱鞘などの軟部組織に迷入(Migration)や接触(Impingement)したこと、などが挙げられています。

この研究では、螺子固定術が行われた16頭の患馬のうち、10頭に対しては関節鏡手術(Arthroscopy)が併用され、これらの馬のレース復帰率は60%(6/10頭)に達したことが報告されています。これは、関節鏡下での目視による完全な骨折整復(Complete fracture reduction)、関節面の平坦化(Joint surface realignment)の確認、細かい骨折片の除去(Fragment removal)が行えることで、骨折治癒の向上や、予後の改善につながったためであると考察されています。

この研究では、手術直後(麻酔覚醒から24時間以内)のレントゲン像上での骨折間隙の減少(Fracture gap reduction)が認められたのは、螺子固定術では88%(14/16頭)であったのに対して、ワイヤー固定術では22%(2/9頭)にとどまりました。そして、この骨折間隙の減少が見られなかった馬のうち、レース復帰できた馬は一頭もありませんでした。このため、馬の種子骨中央部骨折に対する外科的整復においては、手術直後のレントゲン検査によって骨折間隙の減少具合を確認することが、有用な予後判定(Prognostication)の指標になると考えられました。

この研究では、25頭の種子骨中央部骨折の患馬のうち、骨折片の変位が3mm未満であった14頭の患馬では、レース復帰率は36%(5/14頭)であったのに対して、骨折片の変位が3mm以上であった11頭の患馬では、レース復帰率は18%(2/11頭)にとどまったことから、骨折片の変位度は予後に相関するという見方もできると言えます。しかし上述のように、術後レントゲン検査によって骨折間隙の減少を確認することで、比較的に信頼性の高い予後判定を下せることから、術前に重度の骨折片の変位が認められたからと言って、外科的整復を諦める必要はない、という考察がなされています。一方、骨折片の変位箇所を見ると、種子骨の外後面(=掌底&遠軸側域:Palmaro/Plantaro-abaxial aspect)のほうが内前面(=背軸側域:Dorsoaxial aspect)よりも骨折変位が大きかった馬は76%(19/25頭)にのぼっていました。これは、球節の関節包(Fetlock joint capsule)や種子骨間靭帯(Inter-sesamoidean ligament)によって保持されている種子骨の内前面部では、骨折片の変位が起こりにくかったためと推測されています。

この研究では、螺子やワイヤーによる内固定術(Internal fixation)の他に、遠位肢ギプス(Distal-limb cast)の装着による外固定術(External fixation)が併用されたのは、螺子固定術が行われた馬では88%(14/16頭)であったのに対して、ワイヤー固定術が行われた馬では22%(2/9頭)にとどまりました。また、遠位肢ギプス無しでも、術後に骨折間隙の減少が認められたのは、螺子固定術では100%(2/2頭)であったのに対して、ワイヤー固定術では14%(1/7頭)に過ぎませんでした。このため、種子骨骨折のワイヤー固定術に際しては、必ず外固定法を併用するべきであると提唱されています。

この研究では、術前において既に変性関節疾患(Degenerative joint disease)を発症していた馬では、レース復帰率は38%(3/8頭)であったのに対して、術前に変性関節疾患を発症していなかった馬では、レース復帰率は24%(4/17頭)というように、両郡のあいだに有意差は認められませんでした。このため、馬の種子骨中央部骨折では、骨折の治癒そのものが予後を左右する主要因であり、術前レントゲン検査による変性関節疾患の診断は、あまり有用な予後判定の指標にはならないことが示唆されました。

この研究では、25頭の種子骨中央部骨折の患馬のうち、前肢の骨折が84%(21/25頭)、後肢の骨折が16%(4/25頭)を占め、前肢の骨折のうちでは、内側種子骨(Medial sesamoid bone)の骨折が95%(20/21頭)であったのに対して、外側種子骨(Lateral sesamoid bone)の骨折は5%(1/21頭)にとどまりました。このため、馬の近位種子骨における中央部骨折は、前肢の内側種子骨に最も好発することが示唆されました。

この研究では、25頭の種子骨中央部骨折の患馬のうち、内固定術に海綿骨移植(Cancellous bone graft)が併用されたのは五頭のみにとどまり、海綿骨移植によって予後が有意に向上するというデータは示されませんでした。しかし、これは、サンプル数が少なかったことに起因すると推測され、海綿骨移植の治療効果を否定するものではないという考察がなされています。

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