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馬の文献:種子骨骨折(Anthenill et al. 2007)

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「サラブレッド競走馬の近位種子骨骨折における危険因子としての運動歴と装蹄法の関与」
Anthenill LA, Stover SM, Gardner IA, Hill AE. Risk factors for proximal sesamoid bone fractures associated with exercise history and horseshoe characteristics in Thoroughbred racehorses. Am J Vet Res. 2007; 68(7): 760-771.

この症例論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の骨折に関与する危険因子(Risk factors)を検証するため、1999~2002年にわたって競馬場で安楽死(Euthanasia)となった269頭のサラブレッド競走馬における、医療記録(Medical records)の解析が行われました。

この研究では、近位種子骨骨折の危険因子として走行距離が挙げられており、骨折馬は非骨折馬に比べて、総走行距離、レース当たりの走行距離、骨折発症前の8~12ヶ月における一月当たりの走行距離、などが有意に長いことが示されました。また、骨折馬は非骨折馬に比べて、調教&競走に使役されている生涯日数が有意に長かったものの、レースとレースのあいだの休養日数は、骨折馬と非骨折馬とのあいだに有意差は認められませんでした。このため、サラブレッド競走馬の近位種子骨骨折では、8~12ヶ月にわたる骨の微細損傷(Micro-injury)の蓄積から骨折に至る可能性が高いと考えられており、レース間に休養期間を与えると言うよりも、長期間にわたって調教&競走に使役しない期間を置き、骨組織の疲労蓄積(Fatigue accumulation)を十分に治癒させるという管理方針を取ることで、より効果的な骨折予防が期待されることが示唆されています。

この研究では、骨折発症前の数ヶ月のデータを見ると、一月当たりの走行距離が1ハロン長くなるごとに、種子骨骨折を起こす危険が3~5%も高くなることが示唆されています(1ハロンごとのオッズ比:1.03~1.05)。そして、非骨折馬のほうが骨折馬に比べて、骨折前の半年間の走行距離が23ハロンも長かったことが示されており、これは種子骨骨折を起こす危険が七割近くも増加することを意味していました(オッズ比:1.7)。

この研究では、近位種子骨骨折の危険因子として性別が挙げられており、種牡馬(Stallion)では牝馬に比べて二倍以上も種子骨骨折を起こす危険が高く(オッズ比:2.3)、四倍近くも種子骨の中央部骨折を起こす危険が高い(オッズ比:3.7)ことが示されました。この要因としては、(1)牝馬に比べて攻撃的な気質(Aggressive disposition)であることの多い種牡馬では、より重篤な骨折を起こし易かったこと、(2)牝馬に比べて性格が荒いことの多い種牡馬では、骨折のケアーを十分に許容せず予後悪化につながり易かったこと、(3)種牡馬に比べて牝馬のほうが、軽度の跛行でも繁殖牝馬として引退する場合が多く、結果的に微細損傷の蓄積に起因するような致死的な骨折(Catastrophic fracture)まで至る可能性が低くなったこと、などが挙げられています。

この研究では、近位種子骨骨折の危険因子として装蹄法は含まれておらず、鉄頭歯鉄を施した蹄鉄の有無(Toe grab shoe)もしくはその鉄頭歯鉄の長さ、リム蹄鉄(Rim shoe)の有無、蹄鉄パッドの有無などは、いずれも種子骨発症の危険性とは有意には相関していなかった事が示されました。しかし、上述のように、この研究には致死的骨折を起こした馬のデータしか含まれていないため、軽度の骨折を起こした馬のデータを含めた場合には、装蹄法の違いによって種子骨骨折の発症率が増加していた可能性もある、という考察がなされています。他の文献を見ると、鉄頭歯鉄を使用している馬では、繋靭帯合同装置(Suspensory apparatus)の損傷を起こす危険性が七倍~十六倍も高くなることが報告されています(Kane et al. AJVR. 1996;57:1147)。

この研究の限界点(Limitation)としては、使用されたデータが無作為に選ばれた検体(Randomly selected samples)ではなく、安楽死の対象となるような重篤な骨折症例からのみ採取されたデータであるため、運動歴や装蹄法などが、軽度の病態を含む種子骨骨折そのものの発症機序(Pathogenic mechanism)に、直接的に関与するのか否かを推測するのは適当ではないと考察されています。

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