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馬の文献:種子骨骨折(Eddy et al. 2004)

「馬の近位種子骨の中央部横骨折モデルにおける無頭漸減不定ピッチ螺子とAO皮質骨螺子の生体力学的比較」
Eddy AL, Galuppo LD, Stover SM, Taylor KT, Jensen DG. A biomechanical comparison of headless tapered variable pitch compression and AO cortical bone screws for fixation of a simulated midbody transverse fracture of the proximal sesamoid bone in horses. Vet Surg. 2004; 33(3): 253-262.

この研究論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の中央部骨折(Mid-body fracture)に対する有用な外科的療法の術式を評価するため、40本の屍体前肢(Cadaver forelimbs)の内側種子骨(Medial sesamoid bone)に横骨切術(Transverse osteotomy)を施し、それを無頭漸減不定ピッチ圧迫螺子(Headless tapered variable pitch compression screw:Acutrak螺子)またはAO規格の皮質骨螺子(AO cortical bone screw:AO螺子)を用いての螺子固定術(Lag screw fixation)によって整復し、球節の伸展試験(Fetlock extension test)を介して、この二種類の整復法における物理的強度の生体力学的比較(Biomechanical comparison)が行われました。

結果としては、降伏荷重(Yield load)、整復部破損荷重(Repair failure load)、検体破損荷重(Failure load)、変位度(Displacement)、硬度(Stiffness)などの測定値を見ると、Acutrak螺子およびAO螺子のあいだに有意差は認められませんでした。Acutrak螺子の利点としては、(1)無頭のため過剰な骨増生(Excessive bone formation)を生じにくいこと、(2)骨と螺子の境界(Bone-screw-interface)がより密着しているためインプラント破損を起こす可能性が低いこと、などが挙げられています。このため、馬の種子骨の中央部骨折においても、Acutrak螺子による内固定法(Internal fixation)を用いることで、AO螺子に匹敵する物理強度(Physical strength)を維持しながら、過剰骨増生やインプラント破損などの危険を抑える効果が期待されると考えられました。

一般的に、体重500-kgの馬の前肢には、起立時には1.5キロニュートン、歩行時には3.5キロニュートンの荷重が掛かることが知られています(Merkens et al. EVJ. 1993;20:29)。この研究では、Acutrak螺子の降伏荷重は1.9キロニュートン、AO螺子の降伏荷重は1.8キロニュートンであったことから、いずれの整復法においても、馬の歩行時の負荷には単独では耐えられないと推測されます。そして、馬の歩行時における球節の伸展角度は138°程度であることが知られており(Bach et al. Vet Q. 1996;18:S79)、この研究における降伏点での球節角度(Acutrak螺子では144°、AO螺子では147°)は、これよりも少ないことが示されました。つまり、馬の近位種子骨の中央部骨折に対する螺子固定術に際しては、使用する螺子の種類に関わらず、必ず遠肢ギプス(Distal-limb cast)などの外固定法(External fixation)を併用して、球節の伸展角度を制限することで、整復部位に掛かる負荷を抑えて、インプラント破損を予防する必要があることが示唆されました。

この研究では、透視装置先導(Fluoroscopic-guidance)によるC字型クランプを用いて、螺子を挿入する術式が用いられ、術者の訓練に伴ってより正確な角度で螺子を設置できるようになったことが報告されています。しかし、この研究では、皮膚を剥離した屍体前肢を使用しての手術の再現であったため、実際の臨床症例においては、クランプ鉤が種子骨の尖端部からずれてしまい、螺子の挿入角度に誤差が生じる可能性もあると考察されており、十分な術者の経験と、慎重な術中監視(Intra-operative monitoring)を要する術式であると言えます。また、AO螺子と異なり、Acutrak螺子を使用した場合には、C字型クランプを外すことなくドリル穿孔から螺子設置までの全ての過程を行えるので、骨片間の圧迫性を失うことなく、より堅固な外科的整復が期待されると考察されています。

この研究では、ほぼ全ての検体(15/16肢)において、尖端骨片(Apical fragment)の箇所の骨折において検体破損が起きており、螺子そのものが折れたり曲がったりした検体は見られませんでした。一方、Acutrak螺子では50%(4/8肢)の検体で粉砕骨折(Comminuted fracture)が生じていたのに対して、AO螺子では71%(5/7肢)の検体で粉砕骨折を生じていました。AO螺子は、螺子頭から尖端までの太さがほぼ一定であるのに対して、Acutrak螺子は尖端に向かうにつれて先細りになっているため、この部位での螺子強度が低くなった(=骨強度は高く押さえられて粉砕骨折しにくかった)という仮説がなされています。

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