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馬の文献:種子骨骨折(Woodie et al. 2000)

「馬の近位種子骨の中央部骨折における二種類の圧迫整復法の生体力学的特性」
Woodie JB, Ruggles AJ, Litsky AS. In vitro biomechanical properties of 2 compression fixation methods for midbody proximal sesamoid bone fractures in horses. Vet Surg. 2000; 29(4): 358-363.

この研究論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の中央部骨折(Mid-body fracture)に対する有用な外科的療法の術式を評価するため、20本の屍体前肢(Cadaver forelimbs)の内側種子骨(Medial sesamoid bone)に横骨切術(Transverse osteotomy)を施し、それを螺子固定術(Lag screw fixation)または周回ワイヤー固定術(Circumferential wire fixation)によって整復し、球節の伸展試験(Fetlock extension test)によって、この二種類の圧迫整復法(Compression fixation methods)における物理的強度の生体力学的特性(Biomechanical properties)の比較が行われました。

結果としては、螺子固定術の降伏負荷(Yield load)は2900ニュートン、周回ワイヤー固定術の降伏負荷は3400ニュートンで、両整復法のあいだに有意差は認められませんでしたが、10本の屍体前肢のうち1本では、最大試験負荷である5000ニュートンによっても、検体破損が起こらなかったことが報告されています。また、繋靭帯の体部と脚部(Suspensory body/branches)および種子骨遠位靭帯(Distal sesamoidean ligament)における緊張度(Strain)も、両術式のあいだで有意差は見られませんでした。このため、馬の近位種子骨の中央部骨折に対する外科的整復に際しては、螺子固定術および周回ワイヤー固定術の両術式で、同程度の物理的強度を達成できることが示唆されました。

この研究では、螺子固定術が用いられた10本の屍体前肢のうち、9本が尖端骨片の螺子穴部位での検体損失が起こり、このうち3本では螺子の屈曲(Screw bending)が見られました。一方、周回ワイヤー固定術が用いられた10本の屍体前肢のうち、8本がワイヤーの捻転箇所の破損が起こっていました。このため、種子骨の螺子固定術においては、その整復強度は、螺子挿入されている尖端部の骨片の強度に依存するのに対して、周回ワイヤー固定術においては、その整復強度は、ワイヤーの断端同士を捻り合わせた箇所の強度に依存することが示唆されました。

この研究では、周回ワイヤー固定術が用いられた10本の屍体前肢のうち、9本が外側種子骨(骨切術していない方の種子骨)に横骨折(Transverse fracture)または尖端骨折(Apical fracture)が生じていたのに対して、螺子固定術が用いられた10本の屍体前肢では、そのうち1本のみに尖端骨折が生じていました。このような、外側種子骨に見られた新たな骨折は、ワイヤー破損後に起こったと推測されています。このため、周回ワイヤー固定術では、破損後のワイヤーには荷重に耐えうる余地が殆ど残っておらず、対軸側種子骨(Contra-axial sesamoid bone)への負荷転化が起こってしまったのに対して、螺子固定術では、破損後の螺子にも多少の耐性が残っていて、対軸側種子骨を保護する結果につながった、という考察がなされています。一方で、種子骨骨折の臨床症例におけるワイヤー固定術では、対軸側種子骨の二次性骨折(Secondary fracture)の発現は報告されておらず、この研究結果の有意性については疑問が残ると考えられました。

この研究結果では、螺子固定術とワイヤー固定術のあいだに、物理的強度の有意差は認められなかったため、実際の臨床症例における術式の決定に際しては、他の要因を考慮する必要があると考えられます。一般的に、種子骨中央部骨折における螺子固定術では、正確な角度&深さで螺子を挿入する必要があるため、ワイヤー固定術に比べて、手術の難易度が高いことが知られていますが、螺子固定術を試みて問題が起きた際には、ワイヤー固定術に切り替えることも可能です。一方で、ワイヤー固定術では、侵襲性の大きい関節切開術(Arthrotomy)と腱鞘切開術(Tendon sheath resection)の両方を要することから、術後に変性関節疾患(Degenerative joint disease)や腱鞘炎(Tenosynovitis)の原因となる可能性があり、また、インプラント破損が起きた場合には、骨組織内で折れたり曲がったりした螺子よりも、軟部組織内に迷入したワイヤーのほうが、術後合併症(Post-operative complication)を生じる危険が高いことが示唆されています。

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