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馬の文献:種子骨骨折(Southwood et al. 1998)

「関節鏡手術による馬の種子骨遠軸性骨折片の摘出:1989~1997年の47症例」
Southwood LL, Trotter GW, McIlwraith CW. Arthroscopic removal of abaxial fracture fragments of the proximal sesamoid bones in horses: 47 cases (1989-1997). J Am Vet Med Assoc. 1998; 213(7): 1016-1021.

この症例論文では、近位種子骨(Proximal sesamoid bone)の遠軸性骨折(Abaxial fracture)に対する外科的療法の治療効果を評価するため、1989~1998年にかけて種子骨の遠軸性骨折を呈して、関節鏡手術(Arthroscopy)での骨折片摘出(Fracture fragment removal)が応用された47頭の患馬の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。この研究では、競走成績を定量的に評価(Quantitative evaluation)するため、着順スコア(Order of finish score)の算出(一着回数×5 + 二着回数×3 + 三着回数×1)が行われています。

結果としては、経過追跡(Follow-up)ができた41頭のうち、35頭の競走馬を見ると、レースへの復帰を果たしたのは71%(25/35頭)で、骨折前と同レベルの競走に復帰できた馬は46%(16/35頭)にとどまりました。一方、経過追跡ができた41頭のうち、6頭の非競走馬(Non-racehorses)を見ると、その全頭が競技復帰を果たし、全頭とも骨折前と同じかより高いレベルでの競技へ復帰したことが報告されています。このため、馬の近位種子骨の遠軸性骨折においては、関節鏡手術を介しての骨折片摘出によって、中程度~良好な予後が達成され、特に非競走馬では、十分な競技能力の回復が期待されることが示唆されました。

この研究では、レントゲン像上での遠軸性骨折片のサイズに応じて、骨折病態の点数化(Grading)が試みられています(骨折片の長さが15mm未満ではグレード1、15~25mmではグレード2、25mm以上ではグレード3)。この結果、二歳または三歳の若齢馬の症例では、四歳齢以上の症例に比べて、よりサイズの大きい骨折片を生じる傾向にあり、この現象は、成長期の若い馬ほど骨強度が低く、剥離骨折(Avulsion fracture)を起こしやすかった事に起因する、という推測がなされています。そして、経過追跡ができた35頭の競走馬では、グレード1骨折のレース復帰率は100%であったのに対して、グレード2骨折のレース復帰率は67%にとどまりました。また、軽度の骨折(グレードの低い)のほうが、出走数や獲得賞金、着順スコアも有意に高いというデータが示されました。このため、繋靭帯付着部(Insertion of suspensory ligament)への損傷が少ない(=グレードが低い)症例のほうが、球節の安定性(Fetlock joint stability)が維持されて、術後に良好な予後を示す場合が多いと考えられました。しかし、この研究での骨折グレードは、骨折片の縦方向へのサイズのみに基づき、骨折片の厚み(=奥行き方向への長さ)は反映していないので、このグレードが必ずしも正確な予後指標(Prognostic indicator)にならない症例もありうる、という考察もなされています。

この研究では、遠軸性骨折片が生じた箇所に応じて、骨折病態のタイプ分けが試みられています(遠軸性骨折は種子骨の遠軸面のみの骨折、尖端遠軸性骨折[Apical-abaxial fracture]は種子骨の尖端部および遠軸面の両方にまたがる骨折)。そして、遠軸性骨折でのレース復帰率は83%であったのに対して、尖端遠軸性骨折でのレース復帰率は59%にとどまった事が報告されています。これは、骨折線が尖端部から遠軸面への広い範囲に掛かる場合には、より重篤な繋靭帯付着部の損傷を引き起こして、術後に球節の不安定性(Instability)や変性関節疾患(Degenerative joint disease)を続発しやすかったためと考えられています。

この研究では、骨折発生から治療までの期間が30日未満であった場合には、この期間が30日以上であった場合に比べて、レース復帰率が有意に低いことが示され、早期治療された症例のほうが予後が悪いという、矛盾する解析結果(Conflicting result)になっていました。しかしこの現象は、骨折病態が重篤であった症例のほうが、緊急手術を要して、骨折発生から治療までの期間が短くなる傾向にあったことを反映したデータであると考えられており、いたずらに手術を遅らせることで予後が改善するわけではない、という警鐘が鳴らされています。

この研究では、47頭の患馬のうち、超音波検査(Ultrasonography)が行われた10頭では、その全頭において繋靭帯炎(Suspensory desmitis)の併発が確認されましたが、このうち80%(8/10頭)は意図した用途(Intended use)への騎乗復帰を果たしたことが報告されています。このため、超音波検査で繋靭帯炎が発見された場合にも、その所見のみで予後が悪いという判断を下すのは早合点であると言えますが、この研究では、術後の跛行グレードや休養期間の長さなどは、解析時の考慮に入れられていないため、繋靭帯炎が術後の競走能力に及ぼす影響を正確に評価するのは難しい、という考察もなされています。

この研究では、47頭の患馬のうち、サラブレッドまたはクォーターホースの競走馬が83%(39/47頭)を占め、また、三歳齢以下の馬の割合は57%(27/47頭)に達しており、馬における種子骨の遠軸性骨折は、若齢の競走馬に好発する疾患であることが示唆されました。一方、前肢の骨折は81%(38/47頭)、内側種子骨(Medial sesamoid bone)の骨折は98%(46/47頭)に及んでおり、後肢よりも衝撃の大きい前肢、外側よりも荷重の大きい内側の種子骨において、遠軸性骨折の発症率が高い傾向が示されました。しかし、非競走馬の症例郡を見ると、競走馬の症例郡に比べて、後肢の種子骨における罹患率が有意に高いことが報告されており、遠軸性骨折の発症の機序(Mechanism)は、その馬の使役用途や運動様式の違いによって大きく左右される可能性があると推測されています。

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