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馬の文献:管骨骨折(Jalim et al. 2010)

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「116頭の競走馬における第三中手骨の背側皮質疲労骨折に対する螺子固定術」
Jalim SL, McIlwraith CW, Goodman NL, Anderson GA. Lag screw fixation of dorsal cortical stress fractures of the third metacarpal bone in 116 racehorses. Equine Vet J. 2010; 42(7): 586-590.

この症例論文では、馬の第三中手骨(Third metacarpal bone)の背側皮質疲労骨折(Dorsal cortical stress fracture)に対する外科的療法の治療効果を評価するため、1986~2008年にかけて、管骨背側疲労骨折に対する螺子固定術(Lag screw fixation)が応用された116頭の患馬における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、92頭の初診サラブレッド症例のうち、手術後に競走復帰を果たした馬は83%(76/92頭)で、五回以上の出走を果たしたのは63%(58/92頭)でしたが、骨折前にすでに出走していた76頭の症例を見ると、手術後に競走復帰した馬は86%(65/76頭)にのぼりました。また、手術からレース復帰までの期間は、平均で11.3ヶ月であったことが報告されています。このため、馬の第三中手骨の背側皮質疲労骨折においては、螺子固定術によって十分な骨折治癒と、比較的に良好な予後が期待され、ほとんどの馬が競走復帰できることが示唆されました。

この研究では、骨折前と手術後にそれぞれ三回以上レース出走していた42頭のサラブレッド症例を見ると、一レース当たりの平均獲得賞金は、骨折前の$10,161/raceから、手術後には$5,633/raceまで減少していました。また、レース順位を元に算出した成績指数(Performance index)の平均値を見ても、骨折前の1.24から、手術後には0.79まで減少していました。そして、骨折前に比べて手術後のほうが、平均獲得賞金が悪化した馬は71%、成績指数が悪化した馬は55%にのぼりました。このため、馬の第三中手骨の背側皮質疲労骨折においては、螺子固定術によって競走能力を維持または向上できる馬の割合はそれほど高くないと考えられる反面、これらの競走成績の低下を招いた背景には、(1)調教師が骨折病歴を考慮して、手術後の馬を意図的にレベルの低いレース(賞金の低いレース)に出走させる傾向にあった、(2)能力の高い馬(=手術後でも競走能力が落ちない馬)ほど、早期に繁殖転用されて治療後に三回出走しない傾向にあった、(3)加齢にともなって自然に競走能力が低下した、などの要因が関与した可能性もあると推測されており、平均獲得賞金や成績指数のデータのみから、外科的療法の治療効果を過小評価(Under-estimation)するのは適当ではないと考察されています。

一般的に、馬の管骨背側疲労骨折では、背側管部の隆起(管骨骨膜炎や“ソエ”の外観)や隆起部位の圧痛(Pain on palpation)などの症状が見られ、レントゲン検査では側方撮影像(Latero-medial view)および背内掌外方撮影像(Dorsomedial-to-palmarlateral view)によって診断が下されます。そして、治療としては、螺子固定術のほかにも、骨髄腔(Medullar cavity)に達するドリル穿孔(=骨穿刺術:Osteostixis)も応用されており、骨髄組織から骨折部位へと骨芽細胞(Osteoblasts)や成長因子(Growth factor)が供給されたり、ドリル孔を介して骨髄から増殖してきた海綿骨(Cancellous bone)によって骨折箇所が安定化(Immobilization)される、などの効能が期待されます。そして、骨穿刺術が応用された他の文献を見ると、レース復帰率は89%(Cervantes et al. JAVMA. 1992;200:1997)もしくは93%(Hanie et al. EVJ. 1992;11:24)であったことが報告されています。

この研究では、螺子固定術から60日目に、起立位手術(Standing surgery)による螺子除去が行われました。そして、92頭の初診サラブレッド症例のうち、12%(11/92頭)が疲労骨折を再発(Recurrence)して、二度目の螺子固定術が行われました。他の文献における疲労骨折の再発率を見ると、螺子固定術と骨穿刺術が併用された場合には4%(Dallap et al. EVJ. 1999; 31: 252)、骨穿刺術のみが行われた場合には4%(Cervantes et al. JAVMA. 1992;200:1997)もしくは14%(Hanie et al. EVJ. 1992;11:24)であったことが報告されています。

この研究では、116頭の管骨背側疲労骨折の患馬のうち、サラブレッドが89%を占め、また、左前肢の骨折は68%に達したのに対して、右前肢の骨折は27%にとどまりました(残りの5%は両前肢の骨折)。また、患馬の年齢とレース復帰率のあいだに、統計的に有意な相関は認められませんでしたが、各年齢におけるレース復帰率を見ると、二歳馬では91%、三歳馬では81%、四歳以上の馬では77%というように、高齢馬ほど競走復帰する割合が低い傾向が見られました。

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