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馬の文献:管骨骨折(Bischofberger et al. 2009)

「第三中手骨および第三中足骨における骨幹部完全骨折の外科的治療:10頭の成馬と11頭の子馬の治療成績」
Bischofberger AS, Fürst A, Auer J, Lischer C. Surgical management of complete diaphyseal third metacarpal and metatarsal bone fractures: clinical outcome in 10 mature horses and 11 foals. Equine Vet J. 2009; 41(5): 465-473.

この症例論文では、馬の第三中手骨および第三中足骨(Third meta-carpal/tarsal bone)の骨幹部完全骨折(Complete diaphyseal fracture)に対する外科的療法の治療効果を評価するため、1992~2005年にかけて、管骨骨幹部完全骨折を呈した21頭の患馬(10頭の成馬と11頭の子馬)における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、成馬における短期生存率(=退院)は30%(3/10頭)、完治率(=意図した騎乗使役に復帰)は20%(2/10頭)に過ぎませんでしたが、子馬における短期生存率は91%(10/11頭)、完治率は90%(9/10頭)(=経過追跡できなかった一頭を除く)にのぼったことが報告されています。また、生存馬の体重の中央値(Median)は、成馬では180-kg、子馬では68-kgでした。このため、馬の管骨の骨幹部完全骨折に対する外科的治療においては、子馬の症例では十分な骨折治癒と良好な予後が期待されるものの、成馬の症例では予後不良を呈する場合が多いことが示唆されました。また、生存した三頭の成馬症例は、体重320-kg以下のポニーまたはアイスランドホースであったことが報告されています。

この研究では、閉鎖骨折(Closed fracture)における生存率は100%(6/6頭)にのぼりましたが(二頭の成馬症例を含む)、開放骨折(Open fracture)における生存率は47%(7/15頭)にとどまりました。しかし、成馬の開放骨折における生存率は13%(1/8頭)に過ぎなかったのに対して、子馬の開放骨折における生存率は86%(6/7頭)に達していました。このため、馬の管骨の骨幹部完全骨折では、閉鎖骨折の維持が予後に有意に影響することが示された反面、子馬の症例に限って言えば、例え開放骨折の病態を呈していても、適切な外科的療法を応用することで、十分な骨折治癒が見られる場合が多いことが示唆されました。

この研究では、創傷感染(Incisional infection)を起こした馬の生存率は29%(2/7頭)に過ぎなかったのに対して、創傷感染を起こさなかった馬の生存率は79%(11/14頭)にのぼっていました。創傷の細菌感染に対しては、全身性抗生物質療法(Systemic anti-micobial therapy)、術創の排液(Incisional drainage)および抗生物質注入、罹患肢の局所灌流(Regional limb perfusion)などが行われましたが、これらの治療が奏効した二頭は、いずれも子馬の症例でした。このため、馬の管骨の骨幹部完全骨折(特に成馬の症例)では、創傷感染の有無が予後に大きく影響することが示唆されました。また、管骨の開放骨折に関する今後の研究では、抗生物質を含有させたポリメタクリル酸メチル(Antimicrobial-impregnated polymethylmethacrylate)のビーズを感染箇所に充填する手法や、抗生物質の骨髄内局所灌流法(Intraosseous regional perfusion)などの治療効果を評価する必要があるかもしれません。

この研究では、内固定法(Internal fixation)の術式としては、一枚もしくは二枚のプレート固定術(Single/Double plate fixation)、または螺子固定術(Lag screw fixation)が選択され、殆どの症例に対して、ギプス、副木(Splints)、経固定具ピンギプス(Trans-fixation pin cast)などの外固定法(External fixation)が併用されました。これらの術式と予後のあいだには、いずれも有意な相関は見られませんでしたが、術後の数週間以内にインプラントの緩みや破損(Implant loosening/failure)による骨折部の不安定性(Unstable fracture)が認められた場合には、有意に予後が悪化しました。この研究では、ロッキング・コンプレッショん・プレート(Locking compression plate: LCP)が使用されたのは一頭のみであったため、今後の研究では、多くの症例に対してLCPによる強度の高い内固定法を応用することで、馬の管骨の骨幹完全骨折に対する外科的療法の治療効果を、再評価する必要があると考えられました。

この研究では、来院時における骨折肢の緊急処置(Emergency management)の状態は、骨折片の変位度(Fragment displacement)や治療後の生存率に対して、有意には影響していませんでした。しかし、閉鎖骨折の状態で搬送されてきた六頭の症例を見ると、その殆ど(5/6頭)に対して適切~良好な応急処置(Adequate to excellent first-aid)が施されており、この全頭が生存したことから、骨折が疑われる馬を搬送する際の緊急処置の重要性を強調しすぎるということはない、という考察がなされています。

この研究では、二頭の症例(いずれも成馬の症例)において、対側肢の負重性蹄葉炎(Support laminitis on contralateral limb)が続発して(いずれも前肢の骨折)、二頭とも安楽死(Euthanasia)となりました。このため、骨折症例の治療において、対側肢蹄葉炎を予防することの重要性が、再確認されるデータが示されたと言えます。

この研究では、経過追跡のできた12頭の生存馬のうち10頭において、術後の98~309日目にインプラント除去(Implant removal)が行われ、その後に跛行(Lameness)を呈した馬は一頭もありませんでした。一方、インプラント除去が行われなかった二頭のうち、一頭は無跛行(子馬の症例)、もう一頭は慢性の軽度跛行(成馬の症例)を示したことが報告されています。

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