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馬の文献:管骨骨折(Russell et al. 2006)

「競走馬の第三中手骨および第三中足骨の伝播性顆状突起骨折に対する起立位整復手術」
Russell TM, Maclean AA. Standing surgical repair of propagating metacarpal and metatarsal condylar fractures in racehorses. Equine Vet J. 2006; 38(5): 423-427.

この症例論文では、馬の第三中手骨および第三中足骨(Third meta-carpal/tarsal bone)の顆状突起骨折(Condylar fracture)に対する有効な外科的療法を検討するため、管骨の伝播性顆状突起骨折(Propagating condylar fracture)を呈した13頭の競走馬に対して、起立位手術(Standing surgery)を介しての螺子固定術(Lag screw fixation)が行われました。

この研究では、DetomidineとButorphanolによる鎮静後、前肢に対しては内側&尺側&筋皮神経麻酔(Median, ulnar and musculocutaneous nerve blocks)、皮下周回麻酔(Subcutaneous ring block)を併用、後肢に対しては伏在&脛骨&腓骨神経麻酔(Saphenous, tibial and peroneal nerve blocks)および皮下周回麻酔を併用することで、遠位肢の無痛化(Distal limb analgesia)が施され、その後、手根&足根上部麻酔(Supratarsal/carpal block)も併用されました。術者は、外側顆状突起骨折では罹患肢側から、内側顆状突起骨折では対側肢側からアプローチし、両肢および腹部をドレープで覆った後、針穿刺+レントゲン検査によって螺子挿入位置を確認し、穿刺切開創(Stab incision)を介して、ドリル穿孔、カウンターシンキング、深度測定、タッピング、および螺子挿入が行われました。螺子は骨折線が確認された箇所にのみ挿入され、最も遠位側の螺子から近位側螺子の順に設置されました。この研究の術式では、術者の怪我や事故は一度も起きず、全ての起立位手術が安全に実施されました。

結果としては、13頭の患馬のうち、退院したのは12頭(短期生存率:92%)、競走復帰を果たしたのは8頭で(レース復帰率:62%)、レース復帰して勝利したのは5頭(38%)であったことが報告されています。このうち、後肢の骨折におけるレース復帰率は75%(3/4頭)で、前肢の骨折におけるレース復帰率56%(5/9頭)よりもやや高く、また、雄馬におけるレース復帰率は78%(7/9頭)で、牝馬におけるレース復帰率25%(1/4頭)よりも顕著に高い傾向が認められました。このため、馬の管骨における非変位性(Non-displaced)の顆状突起骨折に対しては、起立位整復手術によって中程度~良好な予後が達成され、競走復帰を果たす馬の割合も、比較的に高いことが示唆されました。

一般的に、馬の管骨外側顆状突起の骨折では、骨折線が皮質骨面へと抜けるのに対して、内側顆状突起の骨折では、骨折線が骨幹部(Mid-diaphyseal region)へと亀裂上に走行して、非変位性の不完全骨折(Incomplete fracture)の病態を呈することが知られています。また、このような管骨顆状突起の不完全骨折では、麻酔覚醒(Anesthesia recovery)の際に馬がよろめくことで致死性の完全骨折(Catastrophic complete fracture)に移行してしまう危険性が、四割以上に達することが報告されています(Richardson et al. JAVMA. 1984;185:761)。このため、起立位手術による内固定を応用することで、麻酔覚醒による事故を予防でき、また、手術費を安価に抑える効果も期待されます。

この研究では、13頭の患馬のうち一頭が、退院前(術後の三日目)に管骨の致死性完全骨折を続発して安楽死(Euthanasia)となっています。この症例は、遠位管骨に複数の骨折線の走行が認められるなど、より不安定な骨折病態であったと推測されており、起立位手術による螺子固定術ではなく、全身麻酔下(Under general anesthesia)でのプレート固定が応用されていれば、より良好な予後が達成できたと考察されています。

この研究では、手術からレース復帰までの期間は平均11.8ヶ月でしたが、繋靭帯炎(Suspensory desmitis)を併発して、長期の休養を要した一頭のデータを除いた場合には、平均10.3ヶ月で競走復帰を果たしたことが示されました。馬の管骨内側顆状突起骨折に関する他の文献では、全身麻酔下でのプレート固定が応用され、プレート除去のための二度目の手術を要したという事情から、手術からレース復帰までに13.3ヶ月掛かったことが報告されています(Zekas et al. EVJ. 1999;31:309)。

この研究では、一頭目の症例に対して、伏在&脛骨&腓骨神経麻酔および皮下周回麻酔が用いられましたが、ドリル穿孔が骨髄腔(Medullar cavity)に達した時に馬が動いて、折れたドリルビットが回収できなくなるという事故が起きました(骨内に遺残したビットは予後には影響なし)。このため、二頭目以降の症例に対しては、手根&足根上部麻酔による更なる患部の無痛化が行われるようになり、それ以降では同様な事故は一度も起きなかったことが報告されています。

この研究では、五頭目までの症例に対しては、導入時の鎮静後、DetomidineとButorphanolの追加静脈注射による鎮静の維持が行われましたが、鎮静が深くなり過ぎて、馬がふらついたり、遠位肢のナックリングなどが見られました。このため、六頭目以降の症例に対しては、導入時の鎮静の十五分後から、Detomidineの静脈点滴(Intra-venous infusion)による鎮静の維持が行われ、この結果、鎮静の深さを迅速かつ細かく制御できるようになり、よりスムーズな起立位手術が実施できたことが報告されています。

この研究では、内側顆状突起骨折の螺子固定術に対しては、対側肢側からのアプローチが選択されましたが、この場合には、術者は馬の胸前やお腹の下にもぐりこむ姿勢で施術しなくてはなりませんでした。しかし、骨折部位に近い方の骨折片における皮質骨の厚さ(Cis cortex thickness)が20-mm以上ある場合には、骨折部位から遠い方の骨折片(Trans cortex)から螺子挿入しても、骨折片内に十分な数のスレッドを刻むことができ、堅固な骨折片間圧迫(Inter-fragmentary compression)を作用させられることが知られています(Yovich et al. Vet Surg. 1985;14:230)。このため、厚みが20-mmに及ぶ内側顆状突起の骨折では、骨折部位からは逆軸側に当たる外側皮質骨面から螺子挿入を行うことで、術者の安全を確保する選択肢もありうる、という考察がなされています。

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