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馬の文献:管骨骨折(Rick et al. 1983)

「75頭の馬における第三中手骨または中足骨の顆状突起骨折:レントゲン所見、治療、予後」
Rick MC, O'Brien TR, Pool RR, Meagher D. Condylar fractures of the third metacarpal bone and third metatarsal bone in 75 horses: radiographic features, treatments, and outcome. J Am Vet Med Assoc. 1983; 183(3): 287-296.

この症例論文では、馬の管骨(Cannon bone)(=第三中手&中足骨:Third meta-carpal/tarsal bone)における、顆状突起骨折(Condylar fracture)の発症傾向および外科的療法による治療効果を評価するため、1975~1981年にかけて管骨顆状突起骨折を呈した75頭の患馬(77箇所の骨折)の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

この研究では、75頭の患馬に生じた77箇所の骨折のうち、サラブレッド競走馬に生じたものが92%(71/77骨折)を占めていました。また、前肢の骨折が64%(49/77骨折)、後肢の骨折が36%(28/77骨折)で、特に左前肢における骨折は39%(30/77骨折)にのぼっていました。骨折病態を見ると、非変位性完全骨折(Complete-nondisplaced fracture)が57%(44/75頭)と最も多く、変位性完全骨折(Complete-displaced fracture)が8%(6/75頭)、不完全骨折(Incomplete fracture)が28%(21/75頭)、そして内側顆状突起(Medial condyle)の長軸性骨折(Longitudinal fracture)が5%(4/75頭)となっていました。このため、馬における管骨顆状突起骨折は、サラブレッド競走馬の前肢(特に左前肢)に好発し、完全骨折の病態を呈する可能性が高いことが示唆されました。

この研究では、管骨顆状突起の完全骨折を呈した50頭の患馬のうち、螺子固定術(Lag-screw fixation)による外科的療法が行われた馬では、レース復帰率は36%(16/44頭)であったのに対して、保存性療法(Conservative treatment)が選択された馬では、レース復帰率は0%(0/6頭)であったことが報告されています。一方、管骨顆状突起の不完全骨折を呈した21頭の患馬のうち、外科的療法が行われた馬では、レース復帰率は82%(9/11頭)であったのに対して、保存性療法が選択された馬では、レース復帰率は90%(9/10頭)であったことが報告されています。このため、馬の管骨顆状突起骨折では、完全骨折であった場合には、外科的療法によって予後の改善が期待できるものの、不完全骨折であった場合に比べると、予後不良を呈する危険性が顕著に高いことが示唆されました。

この研究では、管骨顆状突起骨折からレース復帰した35頭のサラブレッド競走馬を見ると、骨折前の獲得賞金は$925/raceであったのに対して、治療後の獲得賞金は$930/raceというように、大きな変化は見られませんでした。このため、馬の管骨顆状突起骨折においては、適切な治療によって骨折治癒とレース復帰が達成された症例においては、骨折自体が競走能力に与える影響は少ないことが示唆されました。しかし、完全骨折を呈した症例群を見ると、骨折前の獲得賞金は$870/raceであったのに対して、治療後の獲得賞金は$502/raceというように、顕著な減少が認められました。

この研究では、レントゲン像上で掌側&底側関節面の断片(Palmar/Plantar surface comminution)が確認された症例においては、手術後に変性関節疾患(Degenerative joint disease)を続発して、予後不良を呈する可能性が高いことが示唆されています。このため、術前レントゲン検査(Pre-operative radiography)では、125度の角度でのスカイライン撮影によって、関節面の断片化の有無を慎重に診断することで、適切な予後判定(Prognostication)に努めることが重要であると提唱されています。

この研究では、骨折線の長さ、正軸隆起(Sagittal groove)から骨折線までの距離、使用された螺子の数などが報告されていますが、これらの所見とその予後との相関は評価されていません。また、骨折を生じた球節(Fetlock joint)においては、滑膜鬱血(Synovial congestion)、骨折対側関節面の損傷(いわゆるKissing lesion)、骨折線周囲の関節軟骨の磨耗や欠損(Articular cartilage wearing/lipping)などが確認されましたが、これらの病変の有無と予後との関係も評価されていません。

この研究では、殆どの外科治療症例において、二本の螺子が使用されましたが、不完全骨折を呈した数頭の患馬においては、一本の螺子のみが挿入されました。しかし、手術後に不完全骨折から完全骨折へと病態が悪化した場合には、一本の螺子のみでは骨折片の不動化(Immobilization)が達成できないことから、骨折線の長さに関わらず、全ての症例に対して、最低でも二本の螺子を挿入することが強く推奨されています。

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