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馬の文献:舟状骨症候群(Biggi et al. 2012)

「舟状骨の遠位端細片化と形:跛行馬と無跛行馬のレントゲン検査」
Biggi M, Dyson S. Distal border fragments and shape of the navicular bone: Radiological evaluation in lame horses and horses free from lameness. Equine Vet J. 2012; 44(3): 325-331.

この研究論文では、馬の舟状骨症候群(Navicular syndrome)の検査に有用なレントゲン検査(Radiography)の判読方針を検討するため、掌側指神経麻酔(Palmar digital nerve block)での跛行改善(Lameness improvement)によって蹄踵疼痛(Heel pain)の診断が下された377頭の跛行馬(Lame horses)と、55頭の無跛行馬(Sound horses)における、レントゲン所見の比較が行われました。

この研究では、舟状骨(Navicular bone)の遠位端細片化(Distal border fragmentation:上写真の上)が認められた馬の割合は、無跛行馬では3.6%にとどまったのに対して、跛行馬では8.7%にのぼっており、特に、舟状骨での原発病態(Primary navicular pathology)が認められた馬では、24.1%が遠位端細片化を伴っていました。そして、この遠位端細片化の所見は、舟状骨の総合病態グレード(Overall naviular bone grade)、遠位水平端と傾斜端の境界部(Junction between the distal horizontal and sloping borders)における放射線透過性像(Radiolucent area)、滑膜陥入(Synovial invagination)のグレード、などと有意に相関していました。このため、蹄踵疼痛の罹患馬におけるレントゲン検査では、舟状骨の遠位端細片化が、重要な異常所見のひとつに挙げられ、他のタイプの病変と併発する場合も多いことが示唆されました。

この研究では、舟状骨の遠位端細片化のうち、内側細片化(Medial fragmentation)の発生は、内側付着部増殖体(Medial entheseophyte)の存在と有意に相関していましたが、外側細片化の発生は、外側付着部増殖体の存在と有意には相関していませんでした。MRI検査を用いた他の文献では、Impar靭帯からの過緊張(Excessive strain)によって、その付着部に生じた新生骨(Newly formed bone)が骨折することで、遠位端細片化に至るという病因論(Etiology)が提唱されており(Dyson. EVE. 2008;20:268)、この場合には同軸側(Ipsiaxial side)の舟状骨繋靭帯の付着部(Insertion of navicular suspensory ligament)にも、骨増殖体を生じる可能性があると推測されています。このため、舟状骨の遠位端細片化が発生する機序は、内側細片化と外側細片化では必ずしも完全に同じではない、という仮説(Hypothesis)も成り立ち、外側細片化は付着部増殖体の形成を伴わない、偶発的な外傷性裂離骨折(Incidental traumatic avulsion fracture)によって発症する可能性が考えられるかもしれません(=通常の蹄は、外側蹄壁が先に踏着するため)。

この研究では、舟状骨の掌側皮質骨の長さを対象とした場合の、近位伸長(Proximal extension)の長さの割合は、無跛行馬では0~0.138であったのに対して、跛行馬では0~0.242と有意に長かったものの、遠位伸長(Distal extension)の長さの割合は、無跛行馬(0~0.228)と跛行馬(0~0.290)とのあいだで有意差は認められませんでした。このような変化は、舟状骨の繋靭帯から掛かる牽引力により骨再構築(Bone remodeling)に関連していると考察されており、蹄踵疼痛の罹患馬における、重要なレントゲン所見であると予測されます。一方、MRI検査を用いた他の文献で示されているような、舟状骨の遠位端細片化と遠位伸長のあいだの相関は(Biggi and Dyson. EVJ. 2010;43:309)、今回の研究では確認されておらず、この要因としては、MRI検査よりもレントゲン検査のほうが、遠位端細片化を探知する際の感度(Sensitivity)が低かったことが挙げられています。

この研究では、舟状骨の掌側皮質骨の厚み(Palmar cortex thickness)の平均値は、跛行馬のほうが無跛行馬よりも有意に大きく、また、跛行馬においては、近位部や中間部よりも遠位部のほうが、舟状骨の掌側皮質骨の厚みが有意に大きかったことが示されました。そして、無跛行馬と比べた際に、跛行馬における舟状骨の掌側皮質骨の厚みが大きかった症例の割合は、近位部では44%、中間部では43%、遠位部では28%であったことが報告されています。そして、舟状骨の掌側皮質骨の厚みと、舟状骨での原発病態の有無は相関する傾向が見られ(P値は0.07)、また、その他の箇所での原発病態の存在とは、有意に相関していたことが示されました(P値は0.04)。このため、蹄踵疼痛の罹患馬におけるレントゲン検査では、舟状骨の掌側皮質骨の肥厚化(Hypertrophy)が、異常所見のひとつと見なされると推測され、その発生機序に関しては、舟状骨の繋靭帯からの緊張増加が引き金になる可能性が指摘されています。

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