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馬の文献:舟状骨症候群(Pauwels et al. 2008)

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「馬の舟嚢と蹄関節のあいだのコルチコステロイド拡散の評価」
Pauwels FE, Schumacher J, Castro FA, Holder TE, Carroll RC, Sega GA, Rogers CW. Evaluation of the diffusion of corticosteroids between the distal interphalangeal joint and navicular bursa in horses. Am J Vet Res. 2008; 69(5): 611-616.

この研究論文では、馬の舟状骨症候群(Navicular syndrome)に対する有効な内科的療法を検討するため、32頭の健常な実験馬を用いて、メトロプレドニゾロン(Methylprednisolone Acetate: 40mg)またはトリアムシノロン(Triamcinolone acetonide: 10mg)を、舟嚢(Navicular bursa)または蹄関節(Coffin joint: Distal inter-phalangeal joint)に注射して、三時間後における舟嚢または蹄関節の滑液採取(Synovial fluid collection)、およびコルチコステロイドの濃度測定が行われました。

結果としては、メトロプレドニゾロンの蹄関節注射では舟嚢へと拡散した平均薬剤濃度は240ng/mlであったのに対して、メトロプレドニゾロンの舟嚢注射では蹄関節へと拡散した平均薬剤濃度は50ng/mlであったことが示されました。一方、トリアムシノロンの蹄関節注射では舟嚢へと拡散した平均薬剤濃度は124ng/mlであったのに対して、トリアムシノロンの舟嚢注射では蹄関節へと拡散した平均薬剤濃度は91ng/mlであったことが報告されています。このため、蹄関節内に注射されたコルチコステロイドは、蹄関節から舟嚢内へと良好に到達することが示され、舟嚢内の病巣に対する抗炎症剤の投与法として、蹄関節注射が有効であると考えられました。他の文献では、メトロプレドニゾロンやトリアムシノロンにおける、臨床的な効能を示す最低濃度(Clinically effective minimum concentration)は、30~40ng/mlであることが報告されており(Autefage et al. EVJ. 1986;18:193)、今回の研究で、蹄関節から舟嚢に拡散したコルチコステロイドは、治療効果を誘導するのに十分な濃度であると考察されています。

一般的に、舟状骨症候群の罹患馬に対する診断麻酔(Diagnostic anesthesia)では、掌側指神経麻酔(Palmar digital nerve block)や蹄関節麻酔(Coffin joint block)よりも、舟嚢麻酔(Navicular bursa block)のほうが、舟状骨およびその周囲組織を、より特異的に無痛化(Analgesia)できることが知られています。しかし、舟状骨症候群の治療に際しては、舟嚢内への薬剤注入では、レントゲン検査誘導による針穿刺(Radiography-guided needle insertion)を要し、深屈腱に針を貫通させることになるため、複数回の実施には適していないと考えられます。このため、手技的に簡単な蹄関節注射を介して、舟嚢内にコルチコステロイドを到達させる治療指針は極めて有用であると考察されています。また、舟状骨症候群の罹患馬では、蹄関節の変性関節疾患(Degenerative joint disease)や側副靭帯損傷(Collateral ligament injury)などを続発しているケースもある事が知られており、これらの病変を併行して治療できるという利点も指摘されています。

この研究の限界点(Limitation)としては、舟状骨症候群を発症していない、健常な実験馬のみを用いられたことが上げられます。実際の舟状骨症候群の罹患馬では、舟嚢組織の慢性損傷および線維化(Fibrillization)によって、薬剤の拡散が起こりにくくなっている可能性がある反面、炎症性反応により滑膜透過性(Permeability)が亢進しているケースも考えられ、これらの要素は、実際の臨床症例に対するコルチコステロイド注射によって、より詳細に評価する必要があると考察されています。また、コルチコステロイドの局所投与では、症状改善効果(Symptom-modifying effect)が主で、病気改善効果(Disease-modifying effect)は限られているという知見もあり、複数回にわたる舟嚢内へのコルチコステロイド注射によって、舟状骨症候群の病態悪化という長期的副作用(Long-term adverse effect)が生じるのか否かも、今後の検討課題であると考えられます。

この研究では、単一の薬剤濃度の、単一投与のみが試験されています。このため、投与薬剤の濃度や容量(Concentration and volume)を増加させることで、蹄関節から舟嚢内へと拡散されるコルチコステロイドの濃度がどう変化するのか、そして、有効な薬剤濃度がどの程度長く持続するのかに関しても、蹄関節注射療法における投与量や投与頻度(Dosage and frequency)を知る上で重要であり、今後の研究の対象と言えるかもしれません。また、他の研究では、中間手根関節(Inter-carpal joint)へとコルチコステロイドが注射された場合、血液中には微量のコルチコステロイドが検出されたものの、対側前肢(Contralateral forelimb)の同じ関節では検出可能なコルチコステロイド濃度の上昇は起きておらず(Gough et al. EVJ. 2002;34:80)、今回の研究で、左右前肢を別々の治療郡に用いた実験モデルは適切であった、という考察がなされています。

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