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馬の文献:舟状骨症候群(Brown et al. 2005)

「馬のナビキュラー病の治療のための体外衝撃波療法における即時鎮痛効果の検討」
Brown KE, Nickels FA, Caron JP, Mullineaux DR, Clayton HM. Investigation of the immediate analgesic effects of extracorporeal shock wave therapy for treatment of navicular disease in horses. Vet Surg. 2005; 34(6): 554-558.

この研究論文では、馬のナビキュラー病(Navicular disease)に対する体外衝撃波療法(Extracorporeal shock wave therapy)の即時鎮痛効果(Immediate analgesic effects)を評価するため、掌側指神経麻酔(Palmar digital nerve block)による跛行改善(Lameness improvement)、およびレントゲン検査(Radiography)での異常所見によって、ナビキュラー病の推定診断(Presumptive diagnosis)が下された九頭の患馬に対して、七日間にわたる体外衝撃波療法(一日一回、十五分間)が実施され、力学的歩様解析(Kinetic gait analysis)による跛行評価が行われました。

結果としては、治療前の九頭の患馬は、罹患前肢(Affected forelimb)よりも対側前肢(Contralateral forelimb)のほうが、より大きい垂直地面反力(Vertical ground reaction force)を示し(より大きい荷重)、この両前肢間における垂直地面反力の相違は、体外衝撃波療法の実施後にも有意には変化していませんでした(=衝撃波療法の後にも、罹患肢への荷重量は増えていなかった)。一方、これらの患馬に対して、掌側指神経麻酔を実施した後では、罹患前肢における垂直地面反力が有意に上昇していたことが報告されています。このため、ナビキュラー病の罹患馬に対する体外衝撃波療法では、即時的な鎮痛効果は見られないことが示唆されました。

一般的に、馬の運動器疾患に対する衝撃波療法では、即時的かつ短期的な鎮痛効果(Short-term analgesic effect)が見られるという、経験的な研究報告(Anecdotal reports)が数多くあり(Boening et al. Proc AAEP. 2000;46:203, Palmer et al. Proc AAEP. 2002;48:318, McCarroll et al. Proc AAEP. 2000;46:200)(=いずれも原稿審査の無いプロシーディングしての報告)、このため、米国の複数の州では、乗馬競技会の参加直前における衝撃波療法の実施を制限するルール作りがなされています。しかし、今回の研究では、力学的歩様解析を介しての客観的かつ定量的な跛行検査(Objective and quantitative lameness evaluation)の結果、衝撃波療法によって跛行症状の改善が見られるという、上述のような知見を支持するデータは示されませんでした。

この研究において、ナビキュラー病の罹患馬に対する衝撃波療法が奏功しなかった理由としては、治療期間が十分ではなかった可能性が指摘されています。他の文献では、コラゲナーゼ誘導性の繋靭帯炎(Collagenase-induced suspensory ligament desmitis)の馬に対して、十五週間にわたる衝撃波療法を実施することで、有意に良好な靭帯組織の治癒が超音波検査(Ultrasonography)で確認された、という知見も示されています(McClure et al. Ultrasound Med Biol. 2004;30:461)。しかし、今回の研究のデータから、衝撃波療法によるナビキュラー病への鎮痛効果は、少なくとも漸増性作用(Incremental effect)ではないと考えられ、その効果発現機序(Mechanism of action)の解明には、更なる研究や実験を要するという警鐘が鳴らされています。

一般的に、運動器疾患への衝撃波療法では、げっ歯類を用いた実験によって、腱骨接合部(Tendon-bone junction)における骨形成活動の亢進(Increased osteogenic activity)、および血管新生の誘発(Induction of neovascularization)が認められたという報告がありますが(Wang et al. JOR. 2003;6:984, Wang et al. JBJS. 2002;84:457)、ナビキュラー病の罹患馬に対する衝撃波療法において、同様の反応が認められる否かは証明されていません。また、馬のナビキュラー病におけるMRI検査では、舟状骨(Navicular bone)や舟嚢(Navicular bursa)以外にも、深屈腱(Deep digital flexor tendon)、蹄関節(Distal inter-phalangeal joint)、Impar靭帯などの損傷が、原発病変(Primary lesion)である場合もあることが知られています。このため、診断麻酔やレントゲン検査のみからナビキュラー病の推定診断が下された馬に対して、治療効果の機序が明瞭でない衝撃波療法を舟状骨周辺部を狙って実施することは、その有用性や合理性(Utility or rationale)に欠けるという見方が出来るのかもしれません。

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