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馬の文献:舟状骨症候群(Schoonover et al. 2005)

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「馬の舟状骨症候群に対する一般的な三種類の治療法の定量的比較」
Schoonover MJ, Jann HW, Blaik MA. Quantitative comparison of three commonly used treatments for navicular syndrome in horses. Am J Vet Res. 2005; 66(7): 1247-1251.

この研究論文では、馬の舟状骨症候群(Navicular syndrome)に対する有効な治療法を検討するため、掌側指神経麻酔(Palmar digital nerve block)による跛行改善(Lameness improvement)、およびレントゲン検査(Radiography)による異常所見によって、舟状骨症候群の推定診断(Presumptive diagnosis)が下された十二頭の馬に対して、蹄踵挙上(Heel elevation)による装蹄療法(Shoeing therapy)が実施され、その二週間後にフェニルブタゾン(Phenylbutazone)の投与(五日間)、さらに、その後にトリアムシノロンが蹄関節注射(Coffin joint injection)され、それぞれの時点において、力学的歩様解析(Kinetic gait analysis)を介しての、跛行改善効果の比較が行われました。

結果としては、装蹄療法から二週間後には、治療前に比べて、両前肢への負荷パーセント体重(Percent body weight of force)が有意に増加しており、また、フェニルブタゾンの投与後には、より跛行の重い側の前肢への負荷パーセント体重が有意に増加していました。しかし、トリアムシノロンの蹄関節注射の後では、装蹄療法の後と比べて、負荷パーセント体重には有意な変化は認められませんでした。このため、舟状骨症候群の罹患馬に対しては、装蹄療法およびフェニルブタゾン投与によって、良好な跛行症状の改善が示されるものの、これらの療法が奏功した症例に対しては、コルチコステロイドの蹄関節注射による、更なる跛行改善は期待できないことが示唆されました。つまり、舟状骨症候群の治療に際しては、獣医師よりも装蹄師の仕事の割合が大きく、クスリに頼るのではなく、病因となっている蹄形や肢軸の異常を矯正することを第一指針とすることの重要性を、再確認させるデータが示されたと言えるかもしれません。

この研究では、力学的歩様解析を応用することで、馬の舟状骨症候群に対する三種類の治療法の効能が、客観的かつ定量的に評価(Objective and quantitative evaluation)されているという利点があります。その反面、交差臨床試験(Cross-over clinical trial)が適応されておらず、全症例に対して装蹄療法が常に最初に実施され、次いでフェニルブタゾン投与、蹄関節注射の順に治療が実施されていました。このため、装蹄療法に対するフェニルブタゾン投与および蹄関節注射の相対的治療効果(Relative treatment effect)を評価するには、不適切な研究デザインである、という限界点(Limitation)が挙げられます。しかし、コルチコステロイドの関節注射は、病態そのものの改善作用(Disease-modifying effect)は限定的であり、痛みだけを覆い隠してしまうことで、病気の進行(Disease progression)を早めてしまう危険性が指摘されています。つまり、馬の舟状骨症候群の治療においては、始めから痛み止めに依存するのではなく、装蹄療法に不応性(Refractory)であった症例にのみ、関節注射の応用を検討するべきである、という提唱がなされています。

この研究では、蹄踵挙上を介しての装蹄療法では、治療後の二週間目までには、有意な治療効果が認められるというデータが示されました。しかし、他の文献を見ると、装蹄療法の指針によっては、その治療効果の判断のために、より長期間にわたる経過観察を行い、新しい蹄形や治療用蹄鉄(Therapeutic shoes)に対する患馬の適応期間(Adaptation period)を置くことが重要である、という知見も示されています(Ostblom et al. EVJ. 1984;16:203, Turner et al. JAVMA. 1986;189:298)。

この研究では、コルチコステロイドの蹄関節注射が、装蹄療法と抗炎症剤投与の後に実施された場合には、有意な治療効果は認められませんでした。しかし、他の文献では、難治性疼痛を呈する舟状骨症候群の罹患馬(装蹄療法が奏功しなかった症例)に対して、コルチコステロイドとヒアルロン酸(Hyaluronate)が併せて舟嚢注射(Navicular bursa injection)された場合には、良好な跛行改善が示されたことが報告されています(Dabareiner et al. JAVMA. 2003;223:1469)。この治療成績の違いが生じた理由としては、(1)舟嚢注射のほうが蹄関節注射よりも有効な投薬法であった、(2)コルチコステロイドとヒアルロン酸の相乗効果(Synergetic effect)によって十分な跛行改善が達成された(Owen et al. JAVMA. 1980;177:710)、(3)装蹄療法が奏功しないタイプの病態にはコルチコステロイドの効能が示され易かった、などの三つの可能性が考えられ、これらの効能の発生機序(Mechanism of action)を解明するためには、よりサンプル数を増やした更なる研究を要すると考察されています。

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