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馬の文献:舟状骨症候群(Schumacher et al. 2003)

「蹄関節に疼痛がある馬における舟嚢への局所麻酔薬の影響」
Schumacher J, Schumacher J, Gillette R, DeGraves F, Schramme M, Smith R, Perkins J, Coker M. The effects of local anaesthetic solution in the navicular bursa of horses with lameness caused by distal interphalangeal joint pain. Equine Vet J. 2003; 35(5): 502-505.

この研究論文では、馬の舟状骨症候群(Navicular syndrome)に対する有効な診断麻酔法(Diagnostic anesthesia)を検討するため、六頭の実験馬を用いて、蹄関節(Coffin joint: Distal inter-phalangeal joint)への内毒素(Endotoxin: LPS)の注射によって跛行誘導(Lameness induction)した後、舟嚢(Navicular bursa)へ3.5mLの局所麻酔薬(Local anesthetic solution)の注入を行い、その10分後、20分後、30分後、および蹄関節麻酔(Coffin joint block)のあとの歩様を、ビデオ映像を用いて評価されました。

結果としては、舟嚢麻酔から10分後および20分後には、半数の馬の歩様が改善したものの、全体としての跛行グレードは有意には変化せず、30分後および蹄関節麻酔の後には、舟嚢麻酔前に比べて、跛行グレードの有意な減少が確認されました。また、舟嚢麻酔から20分後には、舟嚢麻酔前に比べて、跛行グレードがやや改善する傾向が見られました(統計的な有意差は無し)。このため、舟嚢麻酔から20分以上が経過した時点で、跛行改善(Lameness improvement)が見られた症例においては、蹄関節に疼痛が存在していた可能性は否定できず、掌側蹄踵領域に疼痛を限局化(Pain localization)するのは適当ではないことが示唆されました。

一般的に、馬の舟状骨症候群などの掌側蹄踵疼痛(Palmar heel pain)を生じる病態においては、その診断に際して、掌側指神経麻酔(Palmar digital nerve block)が最も頻繁に用いられますが、この麻酔法では蹄関節や蹄底部なども無痛化(Analgesia)されるため、掌側蹄踵に特異的な診断麻酔ではない、という警鐘が鳴らされています。また、蹄関節麻酔では、蹄関節以外にも、舟嚢や舟状骨(Navicular bone)、さらには蹄尖部も無痛化されるため、同じく掌側蹄踵に特異的な診断麻酔ではないことが知られています。このため、舟状骨や舟嚢などの掌側蹄踵における疼痛を確定診断(Definitive diagnosis)するためには、舟嚢麻酔が最も特異的で信頼性が高いことが提唱されていますが、今回の研究の結果から、舟嚢麻酔の実施後、20分以内に跛行改善が見られた場合のみ、掌側蹄踵に特異的な無痛化と見なす、という診断指針が有用であると考えられました。

この研究では、舟嚢麻酔によって蹄関節領域が無痛化された要因としては、舟嚢のすぐ近くを走行している指神経の内外側枝(Medial/Lateral branches of digital nerve)が麻酔されたことが挙げられています。他の文献では、舟嚢麻酔および蹄関節麻酔の両方において、蹄踵底部の疼痛よりも蹄尖底部の疼痛のほうが、より効果的に無痛化されるという知見が示されています(Schumacher et al. EVJ. 2001;33:265)。一方、舟嚢麻酔によって蹄関節領域が無痛化された他の要因としては、舟嚢から蹄関節内へと麻酔薬が浸潤することで、蹄関節内に起因する疼痛を直接的に無痛化した、という可能性も指摘されています。他の文献では、蹄関節から舟嚢へと麻酔薬が浸潤する確率は65%であるのに対して、舟嚢から蹄関節へと麻酔薬が浸潤する確率は13%に過ぎない、という報告もなされている反面(Bowker et al. JAVMA. 1993;203:1708)、蹄関節から舟嚢への麻酔薬の流入量は、舟嚢から蹄関節への麻酔薬の流入量よりも、有意に低かったという知見も示されています(Gough et al. EVJ. 2002;34:80)。

この研究では、舟嚢への麻酔注射に際して、木のブロックに蹄尖を載せて球節を屈曲(Fetlock flexion)させた状態で、蹄冠の最背側部と最掌側部の中間点から遠位側に1cmの箇所を、舟状骨の位置であると予測付けて、蹄球間の中央部に穿刺した針を、この舟状骨の位置を狙って進展させて、抵抗があった深さで止める手法が応用されました。過去の文献では、このような舟状骨の位置の推測法は、その他の術式に比べて、より信頼性の高い舟嚢注射を実施する上で有用である事が示されています(Schramme et al. EVJ. 2000;32:263)。

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