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馬の文献:舟状骨症候群(Turner. 1986)

「馬のナビキュラー病の治療のために装蹄原理」
Turner TA. Shoeing principles for the management of navicular disease in horses. J Am Vet Med Assoc. 1986; 189(3): 298-301.

この研究論文では、馬のナビキュラー病(Navicular disease)に対する有効な装蹄療法(Therapeutic shoeing)の原理(Principles)を検討するため、1979~1982年にかけて、掌側指神経麻酔(Palmar digital nerve block)での跛行改善(Lameness improvement)によって、ナビキュラー病の推定診断(Presumptive diagnosis)が下されて、装蹄療法が応用された36頭の患馬の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

この研究での装蹄療法の原理としては、(1)アンダーランヒールや蹄踵収縮(Contracted heels)の改善と蹄繋軸の矯正(Correction of hoof-pastern axis)、(2)荷重できる組織を全て用いての蹄底支持面積の拡大、(3)蹄反回(Hoof break-over)の改善、(4)一定の運動量の維持、などが挙げられました。具体的には、3度の角度の蹄踵挙上具(3-degree heel wedge)の挿入、蹄底支持具(Solar support)の装着、蹄繋軸に基づく蹄壁と蹄踵の角度(Hoof wall and heel angles)の統一化などが施された後、蹄球端(Tip of heel bulbs)から蹄繋軸に平行に下ろした線と蹄底面の交差点を、理想的な蹄踵掌側縁(Palmar edge of hoof heel)として、この箇所まで蹄鉄尾を伸張することで、蹄底支持面の後方伸展(Palmar extension of solar support surface)が行われました。また、装蹄後には十日間以下の非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs: Phenylbutazone)の投与が併用され、四~六週間おきに同様の装蹄療法が繰り返されました。

結果としては、36頭のナビキュラー病の患馬のうち、全頭が跛行の改善(Lameness improvement)を示し、論文投稿時点では31頭が正常歩様に回復していました。このうち、跛行発現から八ヶ月以内に装蹄療法が施された25頭の患馬では、その全頭が正常歩様に回復していた(治癒率:100%)のに対して、跛行発現から一年以上経ってから装蹄療法が施された残りの11頭の患馬では、正常歩様に回復していた馬は六頭のみでした(治癒率:55%)。このため、ナビキュラー病の罹患馬に対しては、装蹄療法を介しての蹄繋軸矯正や蹄反回改善によって、比較的に良好な治療成績が示され、特に臨床症状の発現から早期に装蹄療法が応用された場合には、極めて良好な予後が期待できることが示唆されました。

この研究では、36頭のナビキュラー病の患馬のうち、クォーターホースの症例が23頭を占めており、クォーターホースにおいてナビキュラー病の有病率(Prevalence)が高い傾向が認められました。一方、馬の使役タイプや、レントゲン検査(Radiography)で認められた異常所見の種類は、装蹄療法による予後とは有意には相関していませんでした。しかし、この研究では症例のサンプル数が少なく、馬の用途やレントゲン所見の違いによる、装蹄療法の治療効果の偏差を評価するのは難しいと推測されます。また、この論文では無治療の対照郡(Controlled group)は設定されていないため、純粋に装蹄療法が奏功した症例と、運動量を抑えるなどの管理法改善によって、ナビキュラー病が自然に快方に向かった症例との区別はなされていません。

この研究では、症例の抽出(Inclusion)や治療法の選択は無作為(Random selection)ではないため、装蹄療法が奏功しそうな患馬に対してのみ治療が試みられたという偏向(Bias)が働いたと推測され、装蹄療法の治療効果が過剰評価(Over-estimation)されていた可能性は否定できません。また、この論文は、馬の遠位肢に対するMRI検査が一般的でない時代に書かれたものであるため、原発病態(Primary disorders)のタイプ(舟状骨そのものの異常か?、それとも周囲組織の異常か?)は特定されておらず、装蹄療法の応用が有効であると推測される適応症(Indication)については詳細には検討されていません。

この研究では、ナビキュラー病の診断法としては、掌側指神経麻酔によって“90%の跛行改善”が見られた場合という、やや曖昧な基準しか示されていません。つまり、ナビキュラー病の病態が、舟嚢(Navicular bursa)、深屈腱(Deep digital flexor tendon)、蹄関節(Coffin joint)、舟状骨繋靭帯(Navicular suspensory ligament)、Impar靭帯などの、周辺軟部組織(Surrounding soft tissue)に進行していた慢性症例(Chronic cases)において、掌側指神経麻酔による歩様改善が限定的(Limited gait improvement)であった場合には、この論文の症例郡には含まれていなかった(治り易いナビキュラー病馬だけ含まれていた?)という可能性もあると考えられました。

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