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馬の文献:舟状骨症候群(Ackerman et al. 1977)

「馬のナビキュラー病:危険因子、レントゲン所見、治療成績」
Ackerman N, Johnson JH, Dorn CR. Navicular disease in the horse: risk factors, radiographic changes, and response to therapy. J Am Vet Med Assoc. 1977; 170(2): 183-187.

この研究論文では、馬のナビキュラー病(Navicular disease)の病態把握、発症に関わる危険因子(Risk factors)、舟状骨(Navicular bone: Distal sesamoid bone)のレントゲン所見(Radiographic changes)、外科的および内科的療法による治療成績(Response to surgical/medical therapies)を評価するため、1966~1974年にかけて、掌側指神経麻酔(Palmar digital nerve block)での跛行改善(Lameness improvement)によってナビキュラー病の推定診断(Presumptive diagnosis)が下された74頭の患馬の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

この研究では、患馬の性別および品種が、ナビキュラー病の危険因子となりうる傾向が示されました。ナビキュラー病を発症する可能性は、種牡馬であった場合には二倍以上(牝馬と比べた場合のオッズ比:2.2)、去勢馬であった場合には四倍以上(種牡馬と比べた場合のオッズ比:4.4)、クォーターホースであった場合には四倍近く(他の品種と比べた場合のオッズ比:3.9)も、高くなることが示されました。このように、オス馬やクォーターホースにおいて、ナビキュラー病の有病率(Prevalence)が高くなった要因については、この論文内では詳細には考察されていません。

この研究では、レントゲン検査(Radiography)が行われた70頭の患馬のうち、異常所見が認められたのは42頭(60%)にとどまりました。このうち、異常所見の種類としては、骨嚢胞(Bone cyst)が26頭と最も多く、次いで、骨棘形成(Spurring)が24頭、再構築像(Remodeling)が13頭、脈管新生亢進(Increased vascularity)が2頭などとなっていました(異常所見の重複あり)。この研究では、馬のナビキュラー病に関する他の文献と異なり、舟状骨の近位縁における脈管新生亢進は、骨嚢胞に分類されており、このタイプ分けが、骨嚢胞の割合が多く、脈管新生亢進の所見を呈した患馬が少なかったひとつの要因になる、という考察がなされています。

この研究では、退院から六ヶ月以上にわたる経過追跡(Follow-up)ができた患馬のうち(跛行以外で安楽死となった馬は除く)、正常歩様に回復した馬は24%にとどまり、跛行が原因で安楽死(Euthanasia)となった馬は16%でした。このうち、外科的療法(掌側指神経切除術:Palmar digital neurectomy)が応用された患馬郡では、正常歩様に回復した馬は36%でしたが、跛行が原因で安楽死となった馬は27%にのぼっていました。一方、内科的療法(NSAID投与および装蹄療法)が応用された患馬郡では、正常歩様に回復した馬は19%のみで、跛行が原因で安楽死となった馬は11%であったことが報告されています。このため、掌側指神経切除術によって蹄踵を無痛化(Analgesia)する外科的な“治療”では、正常歩様への回復率を向上できる効能が期待されるものの、病気の進行自体は変化しない、もしくは悪化させる危険性があり(患馬が無痛化された罹患肢へと過度に荷重するようになるため)、このことが、長期生存率(Long-term survival rate)の低下につながった可能性もあると考えられました。

この研究では、退院から六ヶ月以上にわたる経過追跡ができた患馬のうち(跛行以外で安楽死となった馬は除く)、レントゲン検査で異常所見が認められた馬では、正常歩様に回復した馬は30%でした(安楽死になった馬は17%)。一方、レントゲン検査で異常所見が認められなかった残りの馬では、正常歩様に回復した馬は13%でした(安楽死になった馬は13%)。このうち、レントゲン検査が陰性であった馬では(掌側指神経麻酔には陽性)、舟嚢(Navicular bursa)、深屈腱(Deep digital flexor tendon)、蹄関節(Coffin joint)などのレントゲンには写らない病態が存在したと推測されました。このため、舟状骨以外における原発病巣(Primary lesion)が不確定な症例に対しては、必ずしも適切な治療が施されなかったケースも考えられ、この事が、レントゲン検査で異常所見が認められなかった馬のほうが予後が悪い傾向にあった要因であると考えられました。

この論文は、馬の遠位肢に対してMRI検査が頻繁に実施されるようになる以前に書かれたものであるため、レントゲン像上で顕著な異常が見られるような、病態が進行した症例のみが抽出された可能性は否定できません。また、この時代におけるナビキュラー病の治療法には、舟嚢や蹄関節への抗炎症剤の注射(Articular/Synovial injections of anti-inflammatory drugs)や、骨吸収抑制剤(Bone resorption inhibitor)の投与などは含まれていませんでした。このように、ナビキュラー病の診断感度が低く、治療法の選択肢が少なかった事が、予後不良を呈する患馬が多かった(治療によって跛行消失した馬は24%のみ)ことに影響しているのかもしれません。

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