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馬の文献:蹄葉炎(Virgin et al. 2011)

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「ギプス治療を受けた馬における負重性蹄葉炎の発症率:2000~2009年の113症例の回顧的調査」
Virgin JE, Goodrich LR, Baxter GM, Rao S. Incidence of support limb laminitis in horses treated with half limb, full limb or transfixation pin casts: a retrospective study of 113 horses (2000-2009). Equine Vet J Suppl. 2011; 43 Suppl 40: 7-11.

この研究論文では、馬の負重性蹄葉炎(Support limb laminitis)の発症率(Incidence)および危険因子(Risk factors)を検討するため、2000~2009年にかけて、遠位肢ギプス(Distal limb cast)、全肢ギプス(Full limb cast)、もしくは、経固定具ピンギプス(Transfixation pin cast)を用いての治療を受けた113頭の患馬における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、113頭の患馬のうち、負重性蹄葉炎を続発したのは14頭で、その発症率は12%にのぼりました。そして、多因子ロジスティック回帰解析(Multivariate logistic regression analysis)の結果では、ギプスの装着期間(Duration of casting)および患馬の体重(Body weight)が、負重性蹄葉炎の危険性に有意に影響していることが示され、ギプスの装着期間が一週間長引くごとに、負重性蹄葉炎を発症する可能性が18%増加し(一週間ごとのオッズ比:1.18)、また、患馬の体重が1kg増すごとに、負重性蹄葉炎を発症する可能性が1%増加すること(体重1kgごとのオッズ比:1.01)が示されました。このため、ギプス装着を要するような馬の運動器疾患(Musculoskeletal disorders)では、負重性蹄葉炎が深刻な術後合併症(Post-operative complications)になりうることが示唆され、ギプスの装着期間が増加したり、患馬の体重が重い場合には、経時的なレントゲン検査によるモニタリングや、蹄叉支持具(Frog support)の装着などによって、負重性蹄葉炎の積極的な予防処置(Aggressive preventive measures)に努めることが重要であると考えられました。

この研究では、多因子ロジスティック回帰解析の結果から、全肢ギプスおよび経固定具ピンギプスの装着が、負重性蹄葉炎の危険性に有意に影響していることが示され、遠位肢ギプスに比べて、全肢ギプスが装着された場合には負重性蹄葉炎を発症する可能性が五倍近く増加し(オッズ比:4.96)、経固定具ピンギプスが装着された場合には負重性蹄葉炎を発症する可能性が四倍以上も増加すること(オッズ比:4.63)が示されました。これは、手根部および足根部(Carpus/Tarsus)よりも近位側まで達する全肢ギプスでは、罹患肢の動きが不自由になったり、褥瘡(Decubital sore)を続発しやすくなり、対側肢(Contralateral limb)への負担が増加したためと推測されています。一方で、経固定具ピンギプスを要するような重度の運動器疾患では、原発疾患(Primary disorders)やピン挿入箇所に起因する疼痛を呈して、罹患肢への早期かつ十分な体重負荷が達成できなかったケースが多かったと推測されており、つまり、この研究のデータのみから、経固定具ピンギプスの治療効果を過小評価(Under-estimation)する必要はないと考えられました。

この研究では、不負重性跛行(Non-weight-bearing lameness)の有無、骨折(Fracture)の有無、前肢と後肢の違い、品種の違いなどは、負重性蹄葉炎の危険性には有意には影響していませんでした。しかし、不負重性跛行を呈した患馬における負重性蹄葉炎の発症率は23%におよび、それ以外の患馬(罹患肢への体重負荷ができた馬)における負重性蹄葉炎の発症率11%よりも顕著に高く、臨床的に有意な危険因子と見なされると考察されています。また、骨折症例における負重性蹄葉炎の発症率は18%に及び、負重性蹄葉炎の罹患馬のうち50%は骨折症例であったことが示され、骨折において対側肢の蹄葉炎を引き起こしやすいという他の文献のデータとも合致していました(Levine et al. EVJ. 2007;39:401, Redden et al. Clin Tech Eq Pract. 2004;3:57)。

一般的に、重度跛行に起因する負重性蹄葉炎は、内毒素血症(Endotoxemia)などに起因する通常のタイプの蹄葉炎とは異なった病因(Etiology)で発症すると推測されていますが、罹患肢への荷重量の増加そのものは、直接的な原因ではないと推測されています。馬の蹄内の血液循環は、体重の負荷および非負荷の繰り返し(Cyclic loading and unloading of the foot)によるポンプ作用によって維持されていることが知られており(いわゆる蹄機作用)、罹患肢への荷重が出来なくなり、対側肢における十分な頻度の非負荷が妨げられることが、負重性蹄葉炎の発症につながるという病因論が仮説されています。

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