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馬の文献:蹄葉炎(Steward. 2010)

「スチュワード木靴を用いての蹄葉炎の治療」
Steward ML. The use of the wooden shoe (Steward Clog) in treating laminitis. Vet Clin North Am Equine Pract. 2010; 26(1): 207-214.

この総説論文では、馬の慢性蹄葉炎(Chronic laminitis)に対するスチュワード木靴(Steward Clog)を用いた治療法が解説されています。

慢性蹄葉炎の症例に対しては、スチュワード木靴の装着によって、疼痛緩和(Pain reduction)と治癒向上(Healing enhancement)が期待されます。木靴の形からくる回転モーションは、損傷した蹄葉組織(Damaged lamellae)に掛かる剪断力(Shear force)を減退させ、また、健常な脈管系再生の促進(Stimulation of heathy vascular regrowth)や蹄骨の再整列(Realignment of distal phalanx)、荷重を蹄底に均一に作用させる、などの効能が期待されます。

スチュワード木靴の作製に用いられる合板(Plywood)は加工が容易で、各症例の蹄形に合わせた木靴の調整(Modification)が簡単にでき、また、蹄底部の特定箇所の素材を削り取ることで、疼痛箇所の荷重緩和が可能となります。また、木という素材は、馬の体重を支えるのに十分な強度を持ちながら、踏着の際に生じる衝撃を吸収(Absorption)して、荷重時の疼痛を減退させる効果もあります。さらに、蹄底部をエチレン酢酸ビニル素材(Ethylene vinyl acetate)で覆った場合には、更なる衝撃吸収ができ、滑り止めの効果も期待されます。

スチュワード木靴の装着に際しては、まず蹄底を適切に削切(Appropriate trimming)することが大切で、変位した蹄骨の底部を地面に平行に再整列化させ、かつ、より蹄踵部での荷重を促すようにする指針が重要です。削切は蹄叉尖(Apex of frog)の位置から開始して蹄踵方向に進めていき、蹄底支持面(Solar plane of support)を蹄叉の幅が最大になる位置(Widest part of frog)に維持します。また、蹄底全体での荷重を可能にして、掌側または底側への木靴設置(Palmar/Plantar clog placement)を介して、負荷分布を掌側または底側蹄底へと拡大させます。次に、蹄底と木靴のあいだにクッションを設置するため、混ぜ合わせた圧痕素材(Impression material)を、蹄叉尖の箇所より蹄踵側の蹄底部へと充填させます。

スチュワード木靴そのものを作成する際には、蹄尖部の短縮化と蹄踵挙上による蹄反回の改善、および、適度な高さをもたせることで、起立&歩行時の重心を馬体の尾側方向へシフトさせる構造が重要です。一般的に、馬が歩きながら曲がる際には、蹄側壁に掛かる捻転力(Torque force)が40%増加することが知られていますが、スチュワード木靴によって起こる回転モーションでは、この時の蹄壁と蹄葉間におけるモーメントアーム(=支点から作用点までの距離)を減少させることで、蹄葉組織への捻転力を緩和できます。また、蹄踵挙上を介して蹄反回を容易にすることで、深屈腱から作用される牽引力を減退する効果も期待され、6度の蹄踵挙上によって約24%の負荷軽減が達成できると考えられています。スチュワード木靴の形状を決定する場合、木の厚みがあり過ぎると、馬が通常以上に速く歩いてしまう可能性があり、また、回転モーションを作用させるため、木靴の縁を削りすぎて蹄底支持面積が狭くなり過ぎて、蹄部の安定性を損なわないように注意する事も重要です。さらに、蹄反回向上のための蹄尖短縮が行き過ぎると、遠位肢のナックリングを起こす症例も見られます。

スチュワード木靴の装着は、二本~十本の木ネジによって行われ、通常ネジは蹄壁内ではなく蹄壁のすぐ外側に設置され、支柱としての支持作用(Strut support function)をもたらします。また、背側蹄壁が広範囲にわたって削切された症例などにおいて、ネジと木靴の境い目(Screw-shoe interface)には接着強度を増すために、装蹄グルーが塗られることが一般的で、内外側方向への安定性を向上させるため、ギプス素材が巻かれる場合もあります。

スチュワード木靴を用いての装蹄療法は、沈下型蹄葉炎(Sinker laminitis)よりも回転型蹄葉炎(Rotational laminitis)に対して良好な治療効果を示し、片側性の回転型蹄葉炎において十分な治療成績を示したことが報告されています(Steward et al. Proc AAEP. 2003:337, O’Grady et al. Proc AAEP. 2007:423)。しかし、重篤な蹄骨変位を呈した症例に対しては、この装蹄療法のみで、正常歩様を回復するのは困難なケースが多いと考えられています。

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