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馬の文献:蹄葉炎(Taylor et al. 2002)

「慢性蹄葉炎の罹患馬に対する装蹄療法による跛行重篤度への短期的な影響」
Taylor D, Hood DM, Wagner IP. Short-term effect of therapeutic shoeing on severity of lameness in horses with chronic laminitis. Am J Vet Res. 2002; 63(12): 1629-1633.

この研究論文では、馬の蹄葉炎(Laminitis)に対する装蹄療法(Therapeutic shoeing)の治療効果を検討するため、慢性蹄葉炎(Chronic laminitis)を呈した十頭の患馬に対して、通常の平坦な蹄鉄(Standard flat shoe)、エッグバー蹄鉄(Egg-bar shoe)、ハートバー蹄鉄(Heart-bar shoe)、EDSS蹄鉄(Equine digital support system)の四種類の装蹄療法が施され、七日目における跛行検査(Lameness examination)および力学的歩様解析(Kinetic gait analysis)による跛行重篤度(Lameness severity)の評価が行われました。

この研究では、以下のObelグレードによる、蹄葉炎の疼痛症状の点数化が行われました。
Obelグレード1:馬は起立時に、絶え間なく両蹄への体重移動を繰り返し、常歩時には無跛行であるものの、速歩時には歩様の短縮が認められる(When standing, horse lifts feet incessantly. When walking, lameness is not evident. When trotting, horse has a short gait)。
Obelグレード2:馬は躊躇無く歩くものの、蹄葉炎に特徴的な歩様を示す。しかし、両前肢は容易に挙上させることができる(Horse moves willingly at a walk, but gait is characteristic for a horse with laminitis. Forefeet can be lifted easily)。
Obelグレード3:馬は歩くことをためらい、前肢を挙上することに抵抗する(Horse moves reluctantly and will resist attempts to lift a forefoot)。
Obelグレード4:馬は強制しない限りは動こうとしない(Horse will not move unless forced)。

結果としては、十頭の慢性蹄葉炎の患馬に対して実施された、四種類のいずれの装蹄療法においても、跛行グレード、Obelグレード、歩様解析の測定値には、有意差(Significant difference)は認められず、跛行重篤度の改善は達成されなかったことが示されました。このため、慢性蹄葉炎に対する装蹄療法では、短期的な臨床症状の回復(Short-term improvement of clinical signs)は期待されず、また、装蹄療法の治療効果(Therapeutic effect)を評価する場合には、跛行の重篤度は必ずしも有用な指標(Reliable parameter)にはなりえないことが示唆されました。そして、実際の蹄葉炎の臨床症例に対しては、数週間~数ヶ月の長期間にわたる疼痛症状の変化(Long-term alteration of pain)を観察したり、定期的なレントゲン検査(Periodic radiography)によって病態経過を評価することが重要である、という考察もなされています。

一般的に、エッグバー蹄鉄は負荷中心を蹄踵側へと移動(Shifting the center of load toward heel)させて、深屈腱(Deep digital flexor tendon)から掛かる緊張力の緩和(Reduction of tensile force)を促し、また、ハートバー蹄鉄は遠位変位(Distal displacement)してくる蹄骨(Coffin bone)を、蹄叉の箇所で底側から支持(Solar support at frog)する機能が期待されます。そして、EDSS蹄鉄はこの二つの作用に加えて、蹄踵を挙上(Raising heel)して蹄尖を短縮(Shortened toe)することで、蹄の反回(Break-over)を容易にして、背側蹄葉組織(Dorsal lamina tissue)に掛かる負荷を減退できると考えられています。

この研究において、装蹄療法による治療効果が示されなかった潜在的な要因(Potential factor)としては、研究に用いられたような慢性蹄葉炎の罹患馬では、静的な病態(Static pathological condition)を呈していたため、短期間のあいだには顕著な臨床症状の改善は探知できなかったことが挙げられています。このため、蹄葉組織の裂離(Hoof lamina separation)や蹄骨回転や沈下(Rotation/Sinking of distal phalanx)が進行する前の、蹄葉炎の初期病態(Early-stage)においては、様々な装蹄療法によって、病態の悪化防止や改善効果が期待できるケースもありうる、という考察がなされています。また、始めて装着される蹄鉄によって、慣れていない箇所に圧迫が生じるなど、装蹄療法の実施そのものが新たな疼痛発現を引き起こした可能背も指摘されています。

一般的に、馬の蹄葉炎における“痛み”の発症機序としては、蹄底下圧迫の上昇(Increased subsolar pressures)、蹄葉結合部の外傷的裂傷(Traumatic tearing of the laminar interface)、炎症に起因する疼痛(Pain associated with inflammation)、脈管不全症(Vascular insufficiency)、二次性の変性関節疾患(Secondary degenerative joint disease)などが挙げられています。また、蹄葉炎の罹患馬が示す跛行は、痛みによってのみ起こるわけではなく、近位指骨間関節の慢性亜脱臼(Chronic subluxation of the proximal interphalangeal joint)などの機械的原因(Mechanical cause)で生じることも知られています。このような、蹄葉炎馬の跛行原因の多様性(Diversity)が、この研究において、装蹄療法が奏功しなかった一つの要因である可能性もある、と考察されています。

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