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馬の文献:腸結石症(Cohen et al. 2000)

「テキサス州における馬の腸結石症の危険因子」
Cohen ND, Vontur CA, Rakestraw PC. Risk factors for enterolithiasis among horses in Texas. J Am Vet Med Assoc. 2000; 216(11): 1787-1794.

この症例論文では、馬の腸結石症(Enterolithiasis)を引き起こす危険因子(Risk factors)を発見するため、26頭の腸結石の罹患馬(=腸結石馬)、52頭の外科治療を要した疝痛馬(=外科疝痛馬:Surgical colic)、および52頭の内科治療が行われた疝痛馬(=内科疝痛馬:Medical colic)、の三つのグループにおける、個体情報、給餌内容、飼養環境、疝痛発症時の病歴などを含む、医療記録(Medial record)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、アラビアンまたはミニチュアホースにおいて、有意に腸結石症の有病率(Prevalence)が高いことが示され、また、腸結石馬は外科および内科疝痛馬に比べて、馬房で過ごす時間が有意に長く、アルファルファ乾草を給餌されている割合が有意に多いことが示されました。多重ロジスティック回帰分析(Multiple logistic regression analysis)の結果によれば、好発品種(アラビアンまたはミニチュアホース)である場合や、一日のうち50%以上の時間を馬房で過ごす場合、およびアルファルファ乾草を給餌されている場合には、腸結石を発症している可能性が四倍以上も高くなることが示唆され(オッズ比:3.7~4.5)、これらが馬の腸結石症における重要な危険因子であることが示唆されました。

アルファルファが給餌されている馬ほど、腸結石の有病率が高くなる要因としては、アルファルファはマグネシウム含量が高く、結石成分の供給源となると共に、結腸内環境をアルカリ化する作用(Alkalization)が強いためであると考えられており、また、蛋白含量の高いアルファルファ乾草では、腸壁からのマグネシウム吸収(Magnesium absorption)を妨げて、さらに結石結成を助長する可能性も示唆されています。

馬房で過ごす時間が長い馬ほど、腸結石の有病率が高くなる要因としては、運動不足によって飼料の貯留時間(Ingesta retention time)が長くなったり、粗飼料の消化性(Dry matter digestibility)が減退することが挙げられています。また、放牧や騎乗される時間や回数が多ければ(一日のうち馬房で過ごす時間が50%以下である場合)、飲水量(Water intake)が増したり、飼料を食べ終えるのに長時間を要することから、摂食したアルファルファの希釈効果(Dilution effects on consumed alfalfa)によって腸結石が形成されにくくなる、という仮説もなされています。

この研究では、飼養頭数の多い牧場ほど、腸結石の有病率が高い傾向が認められ、大規模な牧場(飼養頭数が10頭以上)では小規模の牧場(飼養頭数が10頭以下)に比べて、腸結石を発症している可能性が三倍以上も高くなることが示唆されました(オッズ比:3.2)。この牧場規模と腸結石の有病率の相関についても、上述にある馬房で過ごす時間と同様な説明がされており、飼養頭数が一桁であるような小規模の牧場では、各馬が騎乗&放牧される時間が多めとなり、飼料の消化性向上、飲水量増加、摂食物の希釈効果、などが重なり合って、腸結石を起こしにくくなっている、という考察がなされています。

この研究では、外科および内科疝痛馬に比べて腸結石馬のほうが、入院時における疼痛症状の経過が長い傾向が認められ、多重ロジスティック回帰分析の結果によれば、疼痛症状の長さが12時間以上であった場合には、腸結石を発症している可能性が三倍~五倍も高くなることが示唆されました(オッズ比:3.4~5.0)。腸結石の罹患馬では、大結腸の不完全通過障害(Incomplete obstruction)から間欠性疝痛(Intermittent colic)を起こす症例が一般的であることから、急性発現性(Acute onset)を呈して緊急搬入(Emergency administration)されることの多い他の疝痛馬よりも、入院時の経過が長くなり易いと考えられました。

この研究では、外科および内科疝痛馬に比べて腸結石馬のほうが、血清ビリルビン値(Serum bilirubin)が高い傾向が認められ、多重ロジスティック回帰分析の結果によれば、ビリルビン値が4.2mg/dl以上であった場合には、腸結石を発症している可能性が四倍~十三倍も高くなることが示唆されました(オッズ比:4.5~13.1)。この研究における腸結石馬には、ビリルビン値上昇の原因となりうる、貧血(Anemia)、胆汁うっ滞性疾患(Cholestatic disease)、肝細胞疾患(Hepatocellular disease)などの発症を示唆する臨床&血液所見は示されていません。このため、腸結石の罹患馬では、経過の長い軽度疝痛(Prolonged mild colic)が続いた結果、数十時間~数日に及ぶ食欲不振(Anorexia)を呈して、血清ビリルビン値の上昇を引き起こした可能性が高いと考察されています。

この研究では、腹水検査(Abdominocentesis)が行われた腸結石馬のうち、小結腸(Small colon)に結石を生じた症例では、その75%において腹水蛋白濃度の上昇(2.5g/dl以上)が認められたのに対して、他の消化管部位に結石を生じた症例では、その13%のみにおいて腹水蛋白濃度の上昇が見られました。この理由については考察されていませんが、小結腸は内径が小さく、腸管内圧上昇の許容量(Allowance to increased luminal pressure)が低いことから、結石による通過障害から結腸膨満(Colonic distension)に至った際に、病態が軽度であったり経過が短時間な場合にも、腸壁の虚血性損傷(Ischemic damage of intestinal wall)を生じ易く、これが腹水中への蛋白漏出(Protein leakage)を助長した要因である可能性もあるかもしれません。

この論文は、テキサス州にある獣医大学病院からの報告ですが、カリフォルニア州出身の馬は、腸結石馬ではその7%を占め、外科および内科疝痛馬ではその4%を占めており、三つのグループのあいだに有意差は認められませんでした。米国では一般的に、カリフォルニア州またはフロリダ州において、腸結石の有病率が高いことが知られていますが、これらの州から売却&輸送されてくる馬全体を見た場合には、腸結石の罹患馬の絶対数自体は多いとは言えず、疝痛馬の出身地のみで腸結石の発症を疑うのは適当でないという警鐘が鳴らされています。

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