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馬の文献:大結腸捻転(Hackett et al. 2015)

「サラブレッド牝馬の大結腸捻転における退院生存性は疾患の経過時間に影響される」
Hackett ES, Embertson RM, Hopper SA, Woodie JB, Ruggles AJ. Duration of disease influences survival to discharge of Thoroughbred mares with surgically treated large colon volvulus. Equine Vet J. 2015; 47(6): 650-654.

この症例論文では、馬の大結腸捻転(Large colon volvulus)において、短期生存率(退院するまで生存した:Survival to discharge)に影響を与える因子を解明するため、1986~2011年にかけて、大結腸の外科的治療が行われたサラブレッド雌馬(二歳以上)の症例における、医療記録(Medical records)の多因子ロジスティック回帰分析(Multivariable logistic regression analysis)が行われました。

結果としては、入院前の疝痛の継続時間(Colic duration prior to admission)が長いほど、死亡率(Mortality rate)が高い傾向が認められ、経過が2時間以下の症例に比較して、経過が2~4時間では死亡する確率が三倍も高く(オッズ比:3.0)、経過が4時間以上では死亡する確率が十一倍以上も高い(オッズ比:11.6)ことが示されました。このため、馬の大結腸捻転の治療に際しては、早期発見(Early detection)と緊急入院(Rapid referral)、および、速やかな外科的処置(Timely surgical intervention)によって治療成績が向上する、という原則を裏付けるデータが示されたと考察されています。この研究の調査対象となったエリアは、繁殖シーズンには牝馬の状態が注意深く観察される傾向にあり、大病院からの距離も近いことから、疝痛馬の早期発見と緊急手術によって予後が良化することが、データ上も明確に現れやすかった、という考察もなされています。

この研究では、入院時のヘマトクリット値(Packed cell volume [PCV] at admission)が高いほど、死亡率が高い傾向が認められ、PCV値が46%未満の症例に比較して、46%以上の症例では死亡する確率が二倍以上も高い(オッズ比:2.3)ことが示されました。しかし、46%というPCVのカットオフ値は、必ずしも重篤な病状を示唆する基準値とは考えられず、実際のところ、PCV値が46%以上であった症例郡でも、死亡率は18%(82/453頭)にとどまっていました。このため、真の意味での「予後不良」の指標(つまり、馬を安楽死すべきと見なす基準値)としては、もう少し高いPCVのカットオフ値を設定すべきであると推測されます。

この研究では、手術時間(Surgical duration)が長いほど、死亡率が高い傾向が認められ、手術時間が60分間未満の症例に比較して、60~120分間では死亡する確率が二割ほど高く(オッズ比:1.2)、手術時間が120分間以上では死亡する確率が四割も高い(オッズ比:1.4)ことが示されました。これは、病状が重く予後が悪い症例ほど、結腸切除(Colon resection)などの手間のかかる作業を要して、結果的に手術時間が長くなった事が考えられます。しかし、その一方で、長時間にわたる手術や麻酔のストレスそのものが、術後の予後を悪化させたという解釈(Interpretation)も可能であり、手術時間を短く抑えることの重要性は、やはり再認識すべきと言えるかもしれません。それに加えて、この研究では、術中に低血圧(60mmHg以下)になる時間が長いほど、死亡率が高い傾向が認められ、低血圧が10分間未満の症例に比較して、10分間以上の症例では死亡する確率が二倍以上も高い(オッズ比:2.7)ことが示されました。このため、全身状態の悪化した疝痛馬に全身麻酔(General anesthesia)をかける際には、充分な量の補液(Adequate fluid administration)や、昇圧剤(Vasopressor)の投与によって、血圧を適切な値に維持することの大切さを、再確認させるデータが示されたと考察されます。

この研究では、術後48時間の時点での心拍数(Heart rate 48hr post-operatively)が多いほど、死亡率が高い傾向が認められ、心拍数が48/min未満の症例に比較して、48/min以上の症例では死亡する確率が三十倍近くも高い(オッズ比:28.3)ことが示されました。また、術後の便性が悪いほど、死亡率が高い傾向が認められ、正常な糞便を呈した症例に比較して、水様性下痢便(Watery diarrhea)の症例では死亡する確率が七倍以上も高く(オッズ比:7.6)、血様性下痢便(Hemorrhagic diarrhea)の症例では死亡する確率が十一倍以上も高い(オッズ比:11.1)ことが示されました。このため、術中に消化管の虚血病態(Ischemic condition)や生存性(Viability)の判断が難しかった症例においても、術後数日間の心拍数や便性を慎重に評価することで、予後不良になる症例を見極められる可能性があると考えられました。

この研究では、入院期間(Length of hospitalization)が長いほど、死亡率が低い傾向が認められ、入院が四日間以下であった症例に比べて、五~六日間では死亡する確率が三分の一以下も低く(オッズ比:0.3)、七日間以上では死亡する確率が十分の一以下も低いこと(オッズ比:0.1)が示されました。このデータの解釈については、この論文のなかでは、明確には考察されていませんでした。しかし、例えば、術後の経過がとても良い症例において、手術から四日間以内に退院するケースがあり得るにしても、逆に、外科手術が奏功せず安楽死(Euthanasia)が選択される症例では、術後の数日目の時点で決断が下される場合が多くなるため、結果的に、「入院期間が1~4日間」という症例郡における死亡率が高くなってしまったのかもしれません。

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