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馬の文献:大結腸捻転(Suthers et al. 2013a)

「馬の絞扼性大結腸捻転における生存性」
Suthers JM, Pinchbeck GL, Proudman CJ, Archer DC. Survival of horses following strangulating large colon volvulus. Equine Vet J. 2013; 45(2): 219-223.

この症例論文では、馬の大結腸捻転の生存性(Survival)を予測するのに有用な指標を解明するため、2001~2010年にかけて、絞扼性の大結腸捻転(strangulating large colon volvulus)を呈して、開腹術(Laparotomy)による外科的治療が選択された116頭の症例おける、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、全症例のデータを使った解析では、術前のヘマトクリット値(PCV値)が高いほど、生存できない危険性が高い傾向が認められ、PCV値(%)が1ポイント高いごとに、非生存となる確率が8%も高くなる(ハザード比:1.08)、という知見が示されました。しかし、PCV値と時間のあいだには、統計上の有意な相互作用(Significant interaction)が認められ、例えば、術後の三日目の時点では、PCV値(%)が1ポイント高いごとに、非生存となる確率が3%だけ高くなる(ハザード比:1.03)ことが報告されています。術前のPCV値の高さは、全身性炎症反応の度合い(Degree of systemic inflammatory response)を反映しており、このことが、死亡率の上昇(Increased risk of mortality)につながったと推測されており、早期に入院および手術することの重要性を再確認させるデータが示された、という考察がなされています。過去の文献では、術前のPCV値の高さが、他のタイプの疝痛の長期生存性(Long-term survival for other colic types)、および、大腸疾患の術後の長期生存性(Long-term survival following surgery for large intestinal disease)などと、有意な負の相関(Negative correlation)を示していたという報告があります(Archer et al. EVJ. 2011;43:56, Proudman et al. EVJ. 2005;37:360, Proidman et al. EVJ. 2005;37:366)。

この研究では、麻酔覚醒(Anesthesia recovery)した症例のデータのみを使った解析では、術後48時間での心拍数(Heart rate)が高いほど、生存できない危険性が高い傾向が認められ、心拍数(毎分)が一回多いごとに、非生存となる確率が4%高くなる(ハザード比:1.04)、という知見が示されました。同様の知見は、過去の文献でも報告されています(Southwood et al. VetClinNAEqPract. 2004;20:167)。馬の大結腸捻転における術後の頻脈(Post-operative tachycardia)は、内毒素血症(Endotoxemia)の続発や、全身性の炎症反応の重篤度と相関していると推測され、予後判定の指標(Prognostic parameter)となる論理性があると考えられました。

この研究では、麻酔覚醒した症例のデータのみを使った解析では、術中に漿膜変色が認められた場合(Abnormal serosal color intraoperatively)には、生存できない危険性が三倍以上も高い傾向が認められました(ハザード比:3.61)。漿膜面の変色は、大結腸の脈管損失の度合い(Degree of vascular compromise of the large colon)や、粘膜防御機能の消失(Loss of mucosal barrier function)に起因する、全身性炎症反応の重篤度に相関すると考えられ、これらの要因が、予後不良(Poor prognosis)という治療成績に反映されたと考察されています。大結腸捻転の手術時において、腸管内部の粘膜面を視診したり、特殊な計測機器を使うことなく、漿膜面の色調そのものが予後判定の指標になりうる事は、極めて有用な知見であると言えるかもしれません。

一般的に、馬の開腹術において、術中における腸管病態の判断指標としては、表面酸素測定(Surface oximetry)、蛍光定量的評価(Fluorometric evaluation)、大結腸内腔圧(Colonic luminal pressure)などが報告されていますが(MacDonald et al. Surg Gynecol Obstet. 1993;176:451, Brusie et al. EVJ. 1989;21:358, Mathis et al. Vet Surg. 2006;35:356)、これらは、信頼性がそれほど高くなく、常に使用できるとは限りません。また、骨盤曲(Pelvic flexure)の切開部位の組織を術中組織検査(Intra-operative histologic evaluation)して、腺窩と間質の厚みの比(Ratio of crypts and interstitial space)を計測する手法も(Van Hoogmoed et al. Vet Surg. 2000;29:572)、現実的ではないことが多く、大結腸全体の病態と相関していない可能性もある、という考察がなされています。

この研究では、麻酔覚醒した症例のデータのみを使った解析では、術後の入院期間に疝痛症状が認められた場合(Colic during post-operative hospitalization)には、生存できない危険性が二倍以上も高い傾向が認められました(ハザード比:2.63)。これらの術後疝痛は、局所部位の虚血(Localized sires of ischemia)、癒着形成や狭窄(Adhesion formation and stenosis)に起因すると考えられ、例え開腹術から麻酔覚醒できた症例であっても、術後の入院期間中において、予後不良という予測をたてたり、安楽死(Euthanasia)を選択する場合の判断基準として、かなり信頼性が高いという考察がなされています。

この研究では、116頭の症例馬のうち、麻酔覚醒されたのは77%であり、また、これらの症例のうち、退院したのは71%、一年間生存したのは48%、二年間生存したのは34%であったことが報告されています。過去の文献では、大結腸捻転を呈した馬が退院できた確率は、36%から74%まで様々で(Mair et al. EVJ. 2005;37:296, Snyder et al. JAVMA. 1989;195:757, Ellis et al. Vet Surg. 2008;37:786)、このような差異が生まれた理由としては、各研究における対象症例の病態の重篤さが、必ずしも均一でなかったことが影響していると推測されています。そして、今回の研究における対象症例を見ると、開腹術にて大結腸の捻転が360度以上に及んでいて、絞扼性捻転であると確認された症例のみを含めたデータ解析がされていました。このため、かなり腸管病態の重い症例のみが選別された可能性が高く、その結果として、二割以上の馬が術中に安楽死となったり(麻酔覚醒までいかなかった)、退院から二年以上生存できたのは半数以下に留まるというような、術後の予後が悪いという傾向につながった、という考察がなされています。

この研究では、対象症例のうち、牝馬は40%のみで、また、発症から手術までは平均10時間を経過していた、という特徴がありました。さらに、開腹術の際に、大結腸の切除術と吻合術(Large colon resection and anastomosis)が実施されたのは二頭のみで、殆どの症例は、捻転した大結腸のねじれを戻しただけで閉腹されていました。つまり、これらの要因が、予後の悪さ(長期生存率が50%以下)につながった、という可能性は否定できません。他の文献では、馬の大結腸捻転に対する切除術と吻合術によって、比較的に良好な治療成績が達成されたという知見もありますが(Ellis et al. Vet Surg. 2008;37:786)、こちらの場合には、対象症例の88%を牝馬が占め、発症から手術までは平均4時間しか経過していなかった、という違いがあることを考慮すべきなのかもしれません。

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