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馬の文献:大結腸捻転(Sheats et al. 2010)

「超音波による馬の大結腸捻転の術後検査」
Sheats MK, Cook VL, Jones SL, Blikslager AT, Pease AP. Use of ultrasound to evaluate outcome following colic surgery for equine large colon volvulus. Equine Vet J. 2010; 42(1): 47-52.

この症例論文では、馬の大結腸捻転(Large colon volvulus)の外科的治療における、超音波検査(Ultrasonography)を介しての術後の予後判定(Prognostication)の有用性を評価するため、2006~2008年における16頭の大結腸捻転の罹患馬に対して、開腹術(Celiotomy)後の超音波検査が実施されました。この研究では、大結腸切除(Large colon resection)を要しない捻転整復が行われた馬のみ含まれ、臨床症状および血液検査所見から多臓器不全症候群(Multiple organ dysfunction syndrome)の発症が認められた症例において、予後不良という判断が下されました。

結果としては、手術直後には全頭に認められた大結腸壁の肥厚(Thickened large colon wall)(=厚さ5mm以上)が、良好な予後を示した九頭の患馬では、平均20時間で退縮(Involution)したのに対して、多臓器不全症候群を発症した七頭の患馬では、退縮に要したのが平均40時間と有意に長かったことが示されました。これは、より損傷が深刻な腸壁ほど、浮腫(Edema)や炎症(Inflammation)の退行に長時間を要した結果であると推測され、この腸壁損傷に併発する粘膜バリアーの減退から、内毒素血症(Endotoxemia)や多臓器不全症候群の発症に至ったと考察されています。このことから、超音波検査を用いて、大結腸壁の肥厚が18時間以内に減退する所見をモニタリングすることで、外科的治療が応用された大結腸捻転の罹患馬における、信頼性のある予後判定が可能であることが示唆されました。

この研究では、超音波検査において18時間以内に腸壁肥厚の退縮が認められた患馬のうち、二頭が予後不良を呈し、安楽死(Euthanasia)が選択され、剖検(Necropsy)において、限局性壊死病巣(Focal necrotic lesion)が発見されました。これは、腹壁を介しての超音波検査(Trans-abdominal ultrasonography)では大結腸の全域の評価をするのは困難であることを反映していたと言え、超音波検査に併行して、術中病理検査(Intra-operative histologic evaluation)やドップラー超音波検査(Doppler ultrasonography)なども実施して、総合的に大結腸生存能(Large colon viability)の評価を下すことの重要性を示唆した結果であると考えられました。

この研究では、11頭の生存馬(Survivors)が要した大結腸壁肥厚の退縮時間(26時間)と、五頭の非生存馬(Nonsurvivors)が要した退縮時間(33時間)とのあいだには有意差は認められませんでした。一方、血液検査所見では、生存馬は非生存馬に比べて、有意に低い蛋白濃度(生存馬:39g/L vs 非生存馬:50g/L)(=麻酔覚醒直後の測定値)、および有意に低い乳酸濃度(生存馬:6.7mmol/L vs 非生存馬:10.1mmol/L)(=術前の測定値)、などが認められました。このことから、超音波検査は、捻転を生じていた大結腸の病態の把握と、その病態に伴う多臓器不全症候群の危険性の目安にはなるものの、生存率の予測のためには、他の検査所見も考慮して、総括的に患馬の全身症状を判断することが重要であると考えられました。

この研究では、二回転(720度)以上に及ぶ大結腸捻転を呈した六頭の患馬のうち、四頭は多臓器不全症候群を続発して予後不良を示したものの、他の二頭は速やかな腸壁肥厚の退縮を呈して良好な予後が認められました。しかし、360度以下の捻転を起こした患馬郡の生存率は89%であったのに対して、540度以上の捻転を起こした患馬郡の生存率は43%に過ぎませんでした。このため、術中に重篤な大結腸のねじれが発見された患馬は、予後不良を呈する可能性が高い反面、捻転の経過が短ければ大結腸の切除を要することなく治癒が期待できる症例もあると考えられ、その際の予後予測には、超音波検査による大結腸壁の肥厚のモニタリングが有効であると考察されています。

この研究では、五頭の非生存馬のうち四頭において、死後病理学的検査(Post-mortem pathological examination)において、大結腸組織の虚血性壊死(Ischemic necrosis)が認められました。この研究には、大結腸切除および吻合術(Large colon anastomosis)が実施された症例は含まれておらず、この五頭においても、大結腸切除をしないという判断が下された理由には触れられていません。このため、積極的な大結腸切除&吻合術を行っていれば、これらの患馬は生存したかもしれない可能性は否定できません。しかし一方で、術後の超音波検査において、18時間以上にわたる持続性の腸壁肥厚(Prolonged large colon wall thickening)が確認されれば、すぐに二度目の開腹術を行って、壊死が起き始めている大結腸を切除する、という治療指針が可能な症例もあるのかもしれません(経済的に可能であれば)。

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