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馬の文献:大結腸捻転(Driscoll et al. 2008)

「馬の大結腸切除および吻合術:1996~2006年の52症例」
Driscoll N, Baia P, Fischer AT, Brauer T, Klohnen A. Large colon resection and anastomosis in horses: 52 cases (1996-2006). Equine Vet J. 2008; 40(4): 342-347.

この症例論文では、馬の絞扼性および非絞扼性大結腸病変(Strangulating and non-strangulating lesions of the large colon)の外科治療のために応用される、大結腸切除および吻合術(Large colon resection and anastomosis)の治療効果の評価および予後予測(Prognostication)の指標を発見するため、1996~2006年にわたって大結腸切除&吻合術が行われた52頭の患馬の診療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、大結腸切除&吻合術が行われた52頭の患馬のうち、麻酔覚醒(Anesthesia recovery)において安楽死(Euthanasia)が選択されたのは8頭で(麻酔覚醒生存率:85%)、このうち退院できたのは30頭でした(短期生存率:58%)。また、絞扼性大結腸疾患(=270度以上の捻転)を呈した馬の生存率(47%)は、非絞扼性大結腸疾患を呈した馬の生存率(78%)よりも有意に低いことが示されました。このことから、大結腸切除&吻合術による絞扼性大結腸病変の外科治療では、予後は中程度~不良を示す場合が多いことが示唆されました。この研究における入院時の疝痛症状の経過時間(Duration of colic sign)は、他の文献よりも長く、病態の悪化した症例を多く含んでいたと推測され、これが他の文献よりも短期生存率(Short-term survival rate)が低かった要因であると考察されています。

この研究では、生存馬(Survivors)における術後24時間時点での心拍数(平均48/min)は、非生存馬(Nonsurvivors)における術後24時間の心拍数(平均80/min)よりも有意に低かったことが示されましたが、術前のTPRや血液検査所見には有意差は認められませんでした。術後24時間の心拍数は、手術および術後治療に対する患馬の反応性を反映していると考えられることから、術前の心拍数よりも術後の心拍数に基づいて、その後の予後の判定を下す指針が有効であると考察されています。しかし、他の文献では、術前および術後のTPRや血液検査結果による予後判定が有効であるという知見もあることから、今後の研究では、サンプル数を増やしたり、複数の検査項目を用いて術後の生存率の予測を行う指針を検証する必要があると提唱されています。

この研究では、七頭の症例において、一年以内の過去に大結腸捻転(Large colon volvulus)または大結腸右背方変位(Large colon right dorsal displacement)による開腹術が行われており、大結腸捻転の再発(Recurrence)による二度目の手術において大結腸切除&吻合術が行われており、この七頭のうち短期生存したのは三頭のみでした。このため、最初の手術で大結腸切除&吻合術が実施されていれば、大結腸捻転を再発することなく生存していた可能性も否定できませんが、この研究では、サンプル収集が行われた期間中における、大結腸捻転の自然再発率(Spontaneous relapse rate)は示されていないので、「疑わしきは切除」という積極的な大結腸切除(Aggressive large colon resection)の必要性を結論付けるのは難しいと考えられました。

この研究では、52頭中の8頭(15%)が、致死性骨折(Catastrophic fracture)、球節脱臼(Fetlock luxation)、内毒素性ショック(Endotoxic shock)などの麻酔覚醒中の事故で安楽死となっており、これは、大結腸切除&吻合術は長時間にわたる手術となる場合が多く、また、内毒素血症(Endotoxemia)や全身性灌流不全(Systemic poor perfusion)などによって、患馬がふらつき易かったり、自力で立ち上がるのが難しい症例が多かったためと考えられます。このため、大結腸切除&吻合術が応用される症例に対しては、プールや吊起帯(Sling)などによる覚醒補助(Support recovery)を積極的に実施するべきなのかもしれません。

この研究では、無事に麻酔覚醒した44頭のうち、14頭が退院前に安楽死処置となっており、その原因としては、内毒素血症、術後腸閉塞(Post-operative ileus)、腹膜炎(Peritonitis)などが挙げられていて、これらの疾患を発症した場合には、退院前の死亡率が七倍~二十倍も悪化することが示されています。これらの合併症は、平均して術後の8.5日間で起こっており、大結腸切除&吻合術が成功した馬においても、術後の1~2週間は十分な集中治療(Intensive care)を必要とする症例が多いと考えられました。

この研究では、無事に退院した30頭の入院期間は平均14日であり、また、最も多く認められた合併症は下痢(Diarrhea)と発熱(Pyrexia)で、術後合併症を示さずに退院したのは三頭に過ぎなかったことが報告されています。さらに、退院後も、約四割の症例において、疝痛症状の再発が見られたことが示されています。このため、大結腸切除&吻合術が応用される症例においては、合併症を起こす危険が高く、術後処置にかなりの期間と費用を要する場合が多いことを、術前に畜主に通知するのが大切であるという考察がなされています。

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