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馬の文献:大結腸左背方変位(Baird et al. 1991)

「馬における大結腸の腎脾間捕捉:1983~1988年の57症例」
Baird AN, Cohen ND, Taylor TS, Watkins JP, Schumacher J. Renosplenic entrapment of the large colon in horses: 57 cases (1983-1988). J Am Vet Med Assoc. 1991; 198(8): 1423-1426.

この症例論文では、大結腸左背方変位(Large colon left dorsal displacement)に起因する腎脾間捕捉(Renosplenic entrapment)の診断に有効な要素、および内科的&外科的療法の治療効果を評価するため、1983~1988年にわたる57頭の腎脾間捕捉の罹患馬の診療記録(Medical records)の解析が行われました。結果としては、ローリング法(右側横臥位→背側臥位→左側横臥位→胸骨位→右側横臥位)を介しての内科的療法で、79%の整復率が達成されたことが示され、内科的療法および正中開腹術(Midline celiotomy)を介しての外科的療法の両方において、合計93%の生存率(Survival rate)が報告されています。

この研究では、ローリング法による内科的療法によって良好な治療成績(79%の整復率)が示されましたが、この手法は医原性(Iatrogenic)の大結腸捻転(Large colon volvulus)や大結腸破裂(Large colon rupture)を引き起こす危険もあることから、腎脾間捕捉の確定診断(Definitive diagnosis)が下された症例に対してのみ実施するべきであるという警鐘が鳴らされています。また、直腸壁を介して捕捉されている大結腸を操作する手法(Colon manipulation per rectum)は、直腸裂傷(Rectal tear)を生じる可能性があるため、実施は推奨されていません。

この研究では、腎脾間捕捉の罹患馬のうち、61%において大結腸が腎脾間靭帯(Renosplenic ligament)の上部を走行している状態が直腸検査(Rectal examination)によって触知されましたが、その他の症例では、膨満した大結腸に邪魔されて、大結腸の捕捉そのものを直腸検査によって確定診断することは出来ませんでした。このため、重度の大結腸膨満(Severe colonic distension)を呈する症例に対しては、左側腹壁を介しての腹部超音波検査(Abdominal ultrasonography)によって、腎脾間捕捉と大結腸便秘(Large colon impaction)の鑑別診断を下す必要があると考えられました。また、大結腸が重度に膨満していて、直腸検査による腎脾間捕捉の鑑別診断が出来ない症例では、ローリング法による整復はあまり成功率が高くなく、大結腸破裂の危険もあることから、速やかに正中開腹術による外科的療法を選択するべき場合が多いと考察されています。

この研究では、腎脾間捕捉の罹患馬のうち、53%を雄馬(種牡馬+去勢馬)が占め、その割合は疝痛馬全体に占める雄馬の割合(54%)と有意差が無く、牝馬よりも雄馬のほうが腎脾間捕捉の発症率が高いという、他の文献で報告されているような性別偏向(Gender predilection)は認められませんでした。

この研究では、23%の腎脾間捕捉の罹患馬において、腹水採取時に脾臓穿刺(Splenic puncture)に起因する血液混入が起こり(=腹水検体のPCV値が血液のPCV値よりも高い所見によって確認)、この傾向は捕捉された大結腸によって、脾臓の腹側縁が下方へと押し下げられた事に起因すると考えられました。このため、腎脾間捕捉が疑われる症例では、出来るだけ超音波検査によって脾臓の拡大範囲および腹水の貯留域を確認してから、腹水検体の穿刺および採取を試みるべきであるという考察がなされています。

この研究では、腎脾間捕捉の再発率(Recurrence rate)は7.5%と“それほど高くない”ことから、全頭に対して結腸固定術(Colopexy)などの予防的処置を講じる必要はないと考えられ、腎脾間捕捉の再発を起こした症例に対してのみ、結腸固定術を実施する指針が提唱されています。しかし、この研究における一頭の症例では、一年以内の期間中に三回もの腎脾間捕捉の再発が起こったことが報告されており、開腹術時に触知される腎脾間隙の大きさによっては、この空隙を縫合閉鎖する手法も有効であるかもしれません。

この研究では、腎脾間捕捉の罹患馬のうち、外科的療法を要した患馬は、内科的療法での治療が奏功した患馬に比べて、有意に長時間にわたる臨床症状と、有意に高い腹水白血球数(Peritoneal fluid WBC count)が認められました。このうち、ロジスティック回帰解析(Logistic regression analysis)では、臨床症状の短さと内科的治療の成功率に有意な相関が認められました(臨床症状の短さ一時間当たりに対するオッズ比は0.78)。しかし、腹水白血球数の低さも内科的治療の成功率に有意な相関を示したことから、臨床症状の継続時間が不確かな症例においては、腹水検査の結果を指標として開腹術実施のタイミングを判断する指針が有用であることが示唆されました。

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