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馬の文献:大結腸便秘(Monreal et al. 2010)

「大結腸便秘または大結腸背方変位を呈した108頭の馬に対する経腸補液療法」
Monreal L, Navarro M, Armengou L, José-Cunilleras E, Cesarini C, Segura D. Enteral fluid therapy in 108 horses with large colon impactions and dorsal displacements. Vet Rec. 2010; 166(9): 259-263.

この症例論文では、大結腸便秘(Large colon impaction)または大結腸背方変位(Large colon dorsal displacement)を呈して、胃逆流液の排出(Gastric reflux)が無いことが確認された後、経腸補液療法(Enteral fluid therapy)が応用された108頭の馬(78頭の大結腸便秘、30頭の大結腸背方変位)の治療成績が報告されています。この論文では、経鼻胃カテーテル(Nasogastric tube)を介して、二時間おきに8~10リットルの経腸補液が実施され(水道水1リットル当たり、6グラムのNaClと3グラムのKClを溶かした溶液)、脱水(Dehydration)や疼痛の症状に応じて、経静脈補液療法(Intravenous fluid therapy: 10-20ml/kg/hour)や、鎮痛剤(Anagesics: Xylazine, Butorphanol, etc)の投与が併用されました。

結果としては、大結腸便秘の罹患馬の99%(77/78頭)において、経腸補液療法による疝痛症状の消失(Resolution of colic signs)が見られ、平均治療時間は22.5時間、平均投与液量は127リットルであったことが示されました。一方、大結腸背方変位の罹患馬の83%(25/30頭)において、経腸補液療法による疝痛症状の消失が見られ、平均治療時間は15.3時間、平均投与液量は91リットルであったことが報告されています。このため、馬の大結腸便秘または大結腸背方変位に対しては、経腸補液療法によって、便秘内容物の軟化(Softening of impacted ingesta)や大結腸変位の整復が達成され、良好な予後を示す馬の割合が高いことが示唆されました。

一般的に、大結腸疾患に対する経腸補液療法では、経静脈補液よりも迅速かつ効果的に腸内容物水和(Ingesta hydration)が誘導され、また、胃内容物の増量による胃結腸反射(Gastrocolic response)が起こり、腸蠕動亢進(Increasing intestinal motility)という付加的な効能も期待できることが知られています。また、古典的な治療指針である、経静脈補液に硫酸マグネシウムの経口投与を併用する手法では、腸壁を介して腸管内へと作用する溶液量よりも、泌尿器から損失される量が多いことが予想され、高マグネシウム血症などの合併症(Complication)を起こす危険もあることが報告されています。一方、大結腸変位においては、右背側大結腸(Right dorsal colon)の便秘から、その下流部でのガス貯留を呈して、腸管の変位に至ることが多いと考えられ、経腸補液による腸内容物の軟化によって、変位した腸管の整復が誘導されたと考察されています。

この論文では、経腸補液の投与量として、毎時4~5リットルが選択され、良好な治療成績が認められましたが、他の文献では、毎時10リットルの経腸補液では、腹部不快感(Abdominal discomfort)を示す症例が多いことが報告されており(Lopes et al. EVJ. 2002;34:505)、また、大結腸便秘の軟化のためには、毎時2.5リットル以上の経腸補液を要するという知見も示されています(Lopes et al. Proc AAEP. 1999:99)。そして、この論文では、六頭の患馬において、経腸補液の開始後に腹部不快感の症状を呈したことが報告されており、慎重なモニタリングによって、経腸補液による異常な胃膨満(Gastric distension)の続発をモニタリングすることの重要性が、あらためて示唆されたと言えます。

この論文では、経腸補液療法が応用された多くの症例において、鼻汁の分泌過剰を示す表情(Runny face)が観察されており、これは、胃カテーテルを介しての経腸補液によって、効果的に腸内過水和(Intestinal overhydration)が達成されたことを示唆するデータであると考察されています。そして、同様な臨床所見は、経静脈補液のみが行われた他の研究においては、殆ど見られなかったことが報告されています(Dabareiner et al. JAVMA. 1995;206:679, Lopes et al. AJVR. 2004;65:695)。

この論文では、経腸補液療法が応用された殆どの症例において、血漿のカリウム濃度およびクロール濃度が有意に上昇し、蛋白濃度、BUN濃度、クレアチニン濃度などの有意に減少していました。このため、経腸補液療法には、便秘箇所の腸内容物の水和&軟化という効能だけでなく、経静脈補液と同様な、血液希釈(Hemodilution)による内毒素血症(Endotoxemia)の緩和や、電解質不均衡の解消(Resolution of electrolyte imbalance)なども期待できると考えられました。

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