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馬の文献:大結腸便秘(Dabareiner et al. 1995)

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「馬における大結腸便秘:1985~1991年の147症例」
Dabareiner RM, White NA. Large colon impaction in horses: 147 cases (1985-1991). J Am Vet Med Assoc. 1995; 206(5): 679-685.

この症例論文では、大結腸便秘(Large colon impaction)の発病および生存率(Survival rate)に影響を与える要因を発見するため、1985~1991年にわたる1100頭の疝痛来院馬の診療記録(Medical records)の解析が行われました。結果としては、大結腸便秘は全疝痛来院馬の13%を占め、そのうち16%の罹患馬において開腹術(Laparotomy)による外科療法が行われ、合併症(Complications)としては血栓性静脈炎(Thrombophlebitis)と下痢(Diarrhea)が最も多く認められました。大結腸便秘の罹患馬における退院率は95%でしたが、そのうち38%において疝痛の再発(Recurrence)が見られ、長期生存率(Long-term survival rate)は、内科療法のみによる治療が行われた患馬では81%で、外科療法が応用された患馬では58%であったことが示されています。

この論文では、大結腸便秘の罹患馬のうち54%において、発症前の二週間以内に馬房拘束時間の増加(Increased stall confinement)が行われたという病歴が示されており、その理由としては、運動器疾患(Musculoskeletal disorders)や関節鏡手術(Arthroscopic surgeries)に起因する休養が最も多く挙げられています。馬房拘束時間の増加が大結腸便秘の発症に関与する理由としては、飲水量の減少(Reduced water intake)が挙げられると考察されています。また、馬およびロバにおいては運動をすることで粗飼料(Dry matter)や粗蛋白質(Crude protein)の消化性(Digestibility)が6~20%も向上するという研究報告もあることから、運動量の低下そのものに起因する粗飼料&粗蛋白質の消化性減退も、大結腸便秘の病因になりうると仮説されています。

この論文では、大結腸便秘の罹患馬のうち、安楽死(Euthanasia)が選択された馬は生存馬に比べて、心拍数(Heart rate)の増加、呼吸数(Respiratory rate)の増加、血中乳酸濃度(Blood lactate concentration)の上昇、白血球数(White blood cell count)の減少、腹水蛋白濃度(Protein concentration in peritoneal fluid)の上昇、などに有意差が認められました。このうち、心拍数、呼吸数、血中乳酸濃度などの増加や上昇は、末梢循環の悪化(Poor peripheral perfusion)を反映し、白血球数の減少は大結腸内の便秘物に起因する、腸壁の圧迫性壊死(Pressure necrosis)および粘膜損傷(Mucosal damage)を反映していると考察されています。また、腹水蛋白濃度の上昇は腸管膨満(Intestinal distension)および脈管損傷(Vascular compromise)の重篤度に相関すると考えられるため、大結腸便秘の予後判定(Prognostication)に有用な指標であることが示唆されています。

この論文では、大結腸便秘の内科療法として、経静脈補液(Intravenous fluid)、鎮静剤(Sedatives)、鎮痛剤(Analgesics)、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)の投与が行われました。このうち鎮静剤としては、アルファアドレナリン受容体作動薬(Alpha-adrenoceptor agonist)であるXylazineが最も有用であったことが示されており、これは内臓痛の緩和(Relief of visceral pain)を介してのアドレナリン作用性腸管運動抑制の反転作用(Reversing the effects of adrenergic inhibition of intestinal motility)によるものと考えられました。また、非ステロイド系抗炎症剤であるFlunixin meglumineも、プロスタグランディン介在性内臓痛(Prostaglandin-mediated visceral pain)を緩和する作用が期待できますが、内毒素血症(Endotoxemia)や腸管膨満&絞扼(Intestinal distension/strangulation)などの臨床症状の発現が不明瞭になる可能性があるため、適切な投与量の決定と慎重なモニタリングを実施することが重要であると言えます。

大結腸便秘の内科療法における経静脈補液は、水和状態の改善(Improving hydration)によって腸管からの更なる水分吸収を抑えることで(Preventing additional fluid resorption from intestinal tract)、便秘を起こしている腸内容物の硬化を予防する効果が期待できます。しかし、維持水分量以上の経静脈補液によって過水和状態(Overhydration)を作り出し、腸壁からの水分浸出を促して腸内容物の軟化(Softening intestinal contents)を施す療法は、必ずしも有用な治療指針ではないことが示されています。このため、過水和状態の誘導と腸内容物の軟化のためは、経静脈補液に経腸補液療法(Enteral fluid therapy)を併用することが必要になってくると考えられます。

この論文では、大結腸便秘の罹患馬のうち33%において、瀉下剤(Cathartics)であるMagnesium sulfateや、潤滑剤(Laxatives)であるMineral oilの経口投与も行われています。しかし近年では、瀉下剤によって腸壁から腸管内へと間接的に水分を引き込む療法は、経腸補液療法によって直接的に腸管内水分量を増加させる療法には及ばないことが示されており、また、Magnesium sulfateが腸内容物自体から水分を吸い取ってしまい、腸内容物を硬化させて便秘症状を悪化させる可能性もあるという議論も成されています。さらに、潤滑剤によって腸内容物の軟化を促す療法では、実際にはMineral oilは便秘を起こしている腸内容物の周辺を通過するのみで、その深部まではあまり到達しないという仮説もあります。このため、古典的な大結腸便秘の治療法とも言える瀉下剤や潤滑剤の使用には賛否両論(Controversy)があります。

この論文では、大結腸便秘の罹患馬のうち、牝馬が62%、去勢馬が31%、牡馬が7%を占めていました。他の文献を見ても、妊娠牝馬(Pregnant mares)もしくは出産後牝馬(Postprturient mares)において大結腸疾患を起こす可能性が高いことが示唆されていますが、この報告のデータで、なぜ牝馬における大結腸便秘の発症率が高いのかは綿密には考察されていません。

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