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馬の文献:術後腸閉塞(Roussel et al. 2001)

「馬の術後腸閉塞の発症に関わる危険因子」
Roussel AJ Jr, Cohen ND, Hooper RN, Rakestraw PC. Risk factors associated with development of postoperative ileus in horses. J Am Vet Med Assoc. 2001; 219(1): 72-78.

この症例論文では、馬の術後腸閉塞(Postoperative ileus)の発症に関わる危険因子(Risk factor)を発見するため、1990~1996年において疝痛手術のあとに腸閉塞を続発した69頭の患馬、および腸閉塞を起こさなかった309頭の患馬の医療記録(Medical records)の比較が行われました(術後腸閉塞の罹患率は18%)

結果としては、69頭の術後腸閉塞の罹患馬のうち、安楽死(Euthanasia)となったのは11頭(斃死率:16%)であったのに対して、術後腸閉塞を起こさなかった309頭の患馬のうち、安楽死となったのは18頭(斃死率:6%)に過ぎなかったことから、術後腸閉塞は開腹術が行われた疝痛馬における、重要な術後合併症(Postoperative complication)であることが示唆されました。

この研究では、入院時PCV値が45%以上であった馬では、術後腸閉塞の発症率が42%(32/77頭)であったのに対して、入院時PCV値が45%未満であった馬では、術後腸閉塞の発症率は12%(37/298頭)にとどまりました。そして、多重ロジスティック回帰分析(Multiple logistic regression analysis)の結果から、入院時PCV値が45%以上あった場合には、術後腸閉塞を続発する可能性が四倍以上も高まることが示唆されました(オッズ比:4.3)。これは、入院時に重度の脱水(Dehydration)や血液量減少症(Hypovolemia)を起こしていた馬ほど、術後に小腸運動の減退を続発しやすかったためと推測され、PCV値が高い疝痛馬に対しては、術中または術後に十分な補液療法(Fluid therapy)や腸管運動促進剤(Prokinetic agent)の投与を行うなど、積極的に術後腸閉塞の予防&早期治療に努めることが重要であると考えられました。

この研究では、手術時間(Surgery duration)が二時間以上であった馬では、術後腸閉塞の発症率が30%(35/115頭)であったのに対して、手術時間が二時間以下であった馬では、術後腸閉塞の発症率は13%(34/261頭)にとどまりました。そして、多重ロジスティック回帰分析の結果から、手術時間が二時間を越えた場合には、術後腸閉塞を続発する可能性が二倍も高まることが示唆されました(オッズ比:2.0)。また、麻酔時間(Anesthesia duration)が二時間半以上であった馬の術後腸閉塞の発症率は31%(33/73頭)で、麻酔時間が二時間半以下であった馬の術後腸閉塞の発症率13%(36/270頭)よりも高く、麻酔時間が二時間半を越えた場合には、術後腸閉塞を続発する可能性が三倍近くも高まることが示唆されました(オッズ比:2.9)。これらの結果から、長時間の手術を要する症例ほど、より重篤な腸管病態を有していて、その一次性病変(Primary lesion)が術後の腸管運動の減退を引き起こした、という予測ができる反面、手術時間や麻酔時間が長引くほど、麻酔覚醒後の全身状態の悪化や、消化管漿膜の乾燥や損傷などの悪影響につながりやすく、二次的な結果として腸閉塞の術後合併症を引き起こした、という仮説もなされています。

この研究では、骨盤曲切開術(Pelvic flexure enterotomy)が応用された馬では、術後腸閉塞の発症率が9%(15/164頭)であったのに対して、骨盤曲切開術が行われなかった馬では、術後腸閉塞の発症率は25%(54/212頭)に達していました。そして、多重ロジスティック回帰分析の結果から、骨盤曲切開術が応用された場合には、術後腸閉塞を続発する可能性が半分以下も低くなることが示唆されました(オッズ比:0.3~0.4)。このデータから、骨盤曲切開術による積極的な大結腸内容物の除去(Aggressive ingesta removal)が実施されていれば、術後に小腸から大腸への消化液&摂食物の流動がスムーズになり、術後腸閉塞の予防につながった症例がいた可能性がある、という考察なされています。しかし、術式の選択には病態の重篤度に伴う偏向(Bias)が生じた可能性が高く、また、骨盤曲切開術を行うことで、腹膜炎(Peritonitis)や癒着(Adhesion)などの合併症を続発する可能性が増したり、手術時間の延長や治療費の増加などにつながることから、術後腸閉塞の予防効果が期待できるという理由のみで、不必要な骨盤曲切開術を実施することは推奨されない、という警鐘が鳴らされています。

この研究では、絞扼性小腸病変(Strangulating lesion of small intestine)を呈した馬の術後腸閉塞の発症率は37%(30/82頭)、非絞扼性小腸病変を呈した馬の術後腸閉塞の発症率は34%(17/50頭)で、大腸病変を呈した馬における術後腸閉塞の発症率(9%)よりも高く、絞扼性および非絞扼性の小腸病変を起こした場合には、術後腸閉塞を続発する可能性が七倍~八倍以上も高まることが示唆されました(オッズ比:7.5~8.4)。また、小腸切除および吻合術(Small intestinal resection/anastomosis)が応用された馬の術後腸閉塞の発症率は40%(29/73頭)で、小腸切除&吻合術を要しなかった馬の術後腸閉塞の発症率13%(40/303頭)よりも高く、小腸切除&吻合術が行われた場合には、術後腸閉塞を続発する可能性が四倍以上も高まることが示唆されました(オッズ比:4.3)。これらの結果から、小腸疾患を呈した症例に対する開腹術においては、大腸疾患を呈した症例よりも、より積極的に腸管運動促進剤の投与などの、術後腸閉塞の予防処置を検討する必要があると考えられました。

この研究では、腹腔洗浄(Abdominal lavage)が行われた馬における術後腸閉塞の発症率は39%(31/79頭)で、腹腔洗浄が行われなかった馬における術後腸閉塞の発症率13%(38/297頭)よりも高い傾向が示されました。これは、腹腔洗浄が選択された症例は、重篤な腹腔汚染(Abdominal contamination)や腹膜炎の危険が高いと判断された馬であったため、結果的に術後腸閉塞を起こす馬の割合が増加したと推測されています。しかしこのデータは、腹腔洗浄が実施された患馬においても、腹腔汚染の有意な改善や術後腸閉塞の予防は達成されなかった、という解釈もでき、また、腹腔洗浄の過程に伴う侵襲そのものが、術後腸閉塞の発症率上昇につながったという可能性も否定できない、という考察もなされています。

この研究では、アラビアン品種における術後腸閉塞の発症率は28%で、その他の数品種における術後腸閉塞の発症率(サラブレッド:20%、クォーターホース:14%)よりも高い傾向が示されました。しかし、多重ロジスティック回帰分析の結果では、この品種の違いにともなう発症率の有意差は認められず、また、この論文の考察でも、アラビアン品種における術後腸閉塞の発症率が高い理由については結論付けられていません。

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