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馬の文献:術後腸閉塞(Freeman et al. 2000)

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「馬の小腸手術における短期および長期生存率と術後腸閉塞の発症率」
Freeman DE, Hammock P, Baker GJ, Goetz T, Foreman JH, Schaeffer DJ, Richter RA, Inoue O, Magid JH. Short- and long-term survival and prevalence of postoperative ileus after small intestinal surgery in the horse. Equine Vet J Suppl. 2000; (32): 42-51.

この症例論文では、小腸手術(Small intestinal surgery)が行われた馬における、短期または長期生存率(Short- and long-term survival rate)、および術後腸閉塞(Postoperative ileus)の発症率(Prevalence)を評価するため、1994~1999年において小腸疾患の治療のために開腹術(Laparotomy)が行われた74頭の罹患馬の、医療記録(Medical records)の解析が行われました。

結果としては、近位小腸炎(Proximal enteritis)を発症した症例を除く70頭の患馬のうち、術後腸閉塞を続発したのは七頭で、発症率は10%であったことが報告されています。この七頭うち五頭は、空腸盲腸吻合術(Jejunocecal anastomosis)が応用された症例であったことから、空腸盲腸吻合術は他の術式(空腸々々吻合術もしくは空腸回腸吻合術)よりも術後腸閉塞を起こし易いことが示唆されました。この要因としては、(1)一般的に空腸盲腸吻合術を要する回腸の病態では、罹患部位がより遠位であることから、十二指腸や空腸の病態よりも症状発現に時間が掛かり、経過が悪化した状態で開腹術となる場合が多いこと、(2)回腸断端(Ileal stump)からの腸内容物漏出(Ingesta leakage)に起因して生じる腹膜炎(Peritonitis)によって、腸蠕動異常を続発しやすいこと、(3)術後に回腸盲腸弁(Ileocecal valve)の機能損失を続発して、吻合部位における通過障害に至る危険性が高いこと、などが挙げられています。

この研究では、小腸手術が行われた74頭の患馬のうち、退院したのは63頭でしたが(短期生存率:85%)、このうち、絞扼性病変(Strangulating lesion)を生じた場合の短期生存率は84%で、それ以外のタイプの病変を生じた場合の短期生存率(91%)よりも低かった事が示されました。また、退院した63頭の患馬うち、経過確認(Follow-up confirmation)ができた馬に限ると、七ヶ月以上の長期生存率は75%、一年以上の長期生存率は68%であったことが報告されています。このため、絞扼性の小腸疾患は、それ以外の病態に比べて予後が悪い傾向が認められましたが、全般的な小腸手術における短期および長期生存率は、良好~中程度であることが示唆されました。

この研究では、小腸手術が行われた74頭の患馬のうち、14頭において経過不良にともなう複数回の開腹術を要し、これらの再手術を要した馬の短期生存率は64%にとどまり、開腹術が一回だけであった馬の生存率よりも有意に低い傾向が示されました。これは、二度以上の手術侵襲による悪影響と言うよりも、複数回の開腹術を要するほど病態の悪化した患馬のほうが、術後合併症(Post-operative complication)の危険性が高く、予後不良に至る可能性が高かったことを反映したデータであると考えられました。このため、初回の手術で病態の完治が達成できなかったと判断された症例に対しては、再手術をためらうべきではありませんが、その後の経過は芳しくない場合が多いことを畜主に正確に伝え、十分な情報に基づく合意(インフォームドコンセント:Informed consent)を得ることが重要であることが示唆されています。

この研究では、原因疾患となった絞扼性の小腸病態としては、一位が有茎性脂肪腫(Pedunculated lipoma)、二位が網嚢孔捕捉(Epiploic foramen entrapment)、三位が小腸重積(Small intestinal intussusception)で、その後に、腸間膜裂孔捕捉(Mesentery rent entrapment)、小腸捻転(Small intestinal volvulus)などが続きました。一方、原因疾患となった非絞扼性(Non-strangulating)の小腸病態としては、一位が近位小腸炎、二位が癒着(Adhesion)で、その後に、腹腔内膿瘍(Intra-abdominal abscess)、漿膜炎 (Serositis)、馬回虫便秘症(Ascarid impaction)などが続きました。そして、これらの好発疾患の傾向は、他の文献に見られるデータとほぼ合致していました。

この研究では、他の文献で報告されている小腸疾患の予後および腸閉塞の発症率と、この論文のデータとの比較が行われており、80年代後半~90年代前半では、外科的な小腸疾患全体における生存率は五割~七割前後であったのに対して、90年代後半以降ではこの生存率が八割以上まで上昇している傾向が認められ、これは手術技術および術後管理法の進歩に起因していると考察されています。一方、術後腸閉塞の発症率は、80年代および90年代の双方において、二割~五割程度であったことが報告されており、さらなる術後腸閉塞の予防法や治療法の研究が必要であると提唱されています。

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