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馬の病気:大結腸便秘

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大結腸便秘(Large colon impaction)について。

大結腸の便秘症は、最も頻繁に見られる馬の疝痛の原因の一つで、発症部位の頻度は、骨盤曲(Pelvic flexure)>右背側結腸(Transverse colon)>回腸盲腸移行部(Ileocecal junction)の順に高いことが報告されています。馬の大結腸便秘の危険因子(Risk factors)としては、サク癖(Crib-biting)、馬房で過ごす時間が長い飼養法、運動プログラムの急激な変化、一日二回の給餌方針(Twice-daily feeding management)、敷料の摂食癖(Bedding ingestion behavior)、歯科不良による咀嚼不全(Poor mastication)、飲水不足による全身性の脱水(Systemic dehydration)、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)の投与などが挙げられています。また、腸管狭窄(Intestinal stenosis)、腸結石(Enterolith)、砂疝(Sand colic)なども、大結腸便秘発症の素因となることが知られています。

大結腸便秘の症状としては、初期病態では、腹腔の違和感(Abdominal discomfort)に起因する前掻き(Pawing)、上唇反転(Curling upper lip)、腹部をかえりみる仕草(Looking at flank)、少量の排尿(Passing small volume of urine)などが見られ、病状の進行に伴って、寝起きの繰り返し(Repeatedly lying down)や劇的に転げ回る行動(Vigorous rolling)を呈し、重度の脱水と内毒素血症(Endotoxemia)を示す頻脈(Tachycardia)、頻呼吸(Tachypnea)、毛細血管再充満時間の遅延(Prolonged capillary refilling time)などが認められます。

大結腸便秘の診断では、腹鳴音の減退(Reduced peristalsis)が聴取されますが、経鼻カテーテルによる顕著な胃逆流液(Nasogastric reflux)の排出が認められる症例はあまり多くありません。直腸検査(Rectal examination)では、摂食物を充填して硬化した骨盤曲および左腹側結腸(Firm ingesta-filled pelvic flexure and left ventral colon)が触知されますが、便秘物の量の推定は困難であり、また、横行結腸部(Transverse colon)の便秘では罹患部位の触診は困難である場合が殆どです。この場合、超音波検査(Ultrasonography)によって、触診範囲外の大結腸便秘を探知できる症例もあり、また、直検が困難な子馬やポニーの症例では腹腔レントゲン検査(Abdominal radiography)による診断が有効な場合もあります。腹水検査(Abdominocentesis)では、一般的に白血球数は正常値で蛋白濃度の上昇が認められますが、硬化および膨満した大結腸を穿孔(Colon penetration)する危険が高いため、超音波像で腹水の貯留位置を確かめるなど、極めて慎重に注射針穿刺を行うことが重要です。

大結腸便秘の内科治療では、留置した胃カテーテル(Indwelling gastric tube)を介しての電解質溶液(Electrolyte solution)の経腸的補液療法(Enteral fluid therapy)によって、腸内物水和(Increased ingesta hydration)、結腸蠕動の促進(Stimulation of colon motility)、瀉下作用(Catharsis)などを施す治療法が最も有効かつ経済的であることが示されています。補液療法の開始時には、1~2時間の低容量投与後に徐々に注入量を増やしていく指針が推奨されています。しかし、毎時数リットル以上の胃逆流液が排出される場合や、重度の血液量減少症(Severe hypovolemia)が認められる症例に対しては、経静脈補液療法(Intravenous fluid therapy)によって全身性の再水和(Systemic rehydration)を施し、僅かな過水和状態(Slight over-hydration)を作り出すことで、腸壁からの水和と便秘内容物の軟化(Softening of impacted ingesta)を促す療法が応用されます。また、ミネラルオイル、硫酸マグネシウム(Magnesium sulfate)、サイリウムなどの緩下剤(Laxatives)、および、界面活性剤としてのジオクチルソジウムスルホサクシネート(Dioctyl sodium sulfosuccinate)が、経鼻カテーテルを介して経口投与される場合もありますが、その効能については論議があります。大結腸便秘が解消するまでは、口籠装着(Muzzuling)によって摂食制限(Withholding feed)を実施することが一般的ですが、良質な乾草を少量給餌することで腸蠕動の亢進が期待できることも示唆されています。

内科的治療に不応性(Refractory)を示すような持続性の便秘が認められたり、鎮静剤(Sedatives)などによっても制御不能な重篤な疝痛症状を呈する症例に対しては、正中開腹術(Midline celiotomy)と骨盤曲腸切開術(Pelvic flexure enterotomy)を介して、腸内容物の除去が行われます。施術に際しては、膨満した結腸が破裂(Colon rupture)を起こす危険を考慮して、腹壁切開創(Abdominal incision)の作成時に大結腸穿孔に注意し、また、極めて慎重に大結腸を持ち上げながら創外に出すことが大切です。

馬の大結腸便秘の予後は比較的良好で、内科的療法が奏功した場合の長期生存率(Long-term survival rate)は九割以上で、外科的療法を要した場合でも六割前後であることが報告されています。

Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.

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