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馬の文献:網嚢孔捕捉(Archer et al. 2008)

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「網嚢孔捕捉による馬の疝痛における危険因子:国際的研究」
Archer DC, Pinchbeck GK, French NP, Proudman CJ. Risk factors for epiploic foramen entrapment colic: an international study. Equine Vet J. 2008; 40(3): 224-230.

この症例論文では、馬の網嚢孔捕捉(Epiploic foramen entrapment)によって起こる疝痛の危険因子(Risk factors)を検証するため、米国、英国、アイルランドなどの23ヶ所の大動物病院における、合計109頭の網嚢孔捕捉の罹患馬の医療記録(Medical records)の解析が行われました。

この研究では、網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、サク癖(Crib-biting/Windsucking)の悪癖を持っていた馬は47%で、対照郡のうちサク癖の悪癖を持っていた馬の割合(14%)よりも有意に高く、このため、多重ロジスティック回帰解析(Multiple logistic regression analysis)の結果では、サク癖の悪癖を持っていた場合には、網嚢孔捕捉を発症する可能性が67倍も高くなることが示されました(オッズ比:67.27)。サク癖が網嚢孔捕捉の危険因子となる病因論(Etiology)としては、馬がサク癖をした際に生じる胸腔陰圧(Negative intrathoracic pressure)によって、頭側腹腔部(Cranial abdomen)へと小腸が引き寄せられて、網嚢孔内への小腸迷入(Small intestinal migration)が起こり易くなると仮説されています。

この研究では、網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、来院前の一年間に疝痛の病歴があった馬は24%で、対照郡のうち来院前の一年間に疝痛の病歴があった馬の割合(9%)よりも有意に高く、一年以内における疝痛病歴があった場合には、網嚢孔捕捉を発症する可能性が四倍以上も高くなることが示されました(オッズ比:4.38)。このため、網嚢孔捕捉の罹患馬は、根底にある消化器機能異常(Underlying gastrointestinal dysfunction)が存在し、それが網嚢孔捕捉の発現に関与すると考察されています。また、これらの来院前の一年以内に起こった疝痛は、網嚢孔への小腸の不完全捕捉&遊離(Incomplete entrapment and release)を繰り返したことに起因する臨床症状であった、という可能性もあると考えられます。

この研究では、網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、厩務員(=馬主やその家族以外の人間)が世話を担当していた馬は52%で、対照郡のうち厩務員が世話を担当していた馬の割合(28%)よりも有意に高く、馬主本人やその家族が患馬の世話を担当していなかった場合には、網嚢孔捕捉を発症する可能性が五倍以上も高くなることが示されました(オッズ比:5.50)。この理由については、この論文内では考察されていませんが、馬主本人(またはその家族)が患馬の世話を担当している場合のほうが、馬の行動や仕草の微妙な変化を敏感に察知できて(厩務員が交代制である場合などにはなおさらに)、飼料の給餌量や内容、および運動や放牧などの管理法を変えたりすることで、知らず知らずのうちに潜在的な疝痛予防につながった、と考えられるかもしれません。

この研究では、患馬の体高(Height)が高いほど網嚢孔捕捉の有病率が高い傾向が認められ、体高が1cm増えるごとに網嚢孔捕捉を発症している可能性が約5%増加することが示されました(体高1cm当たりのオッズ比:1.05)。これは、例えば体高173cmの馬は、体高137cmの馬に比べて、網嚢孔捕捉を発症している可能性が六倍近く高くなることを指しています(オッズ比:5.9)。この理由としては、体の大きい馬ほど網嚢孔も大きく、小腸の迷入や捕捉を起こしやすかった、という仮説がなされており、他の文献では、網嚢孔の直径とその馬の体重に軽度の相関(Weak correlation)が認められた(P値は有意ではない)、という報告もあります。しかし、対照郡において、馬体が大きくても網嚢孔捕捉を発症していない馬の割合は高いため、網嚢孔捕捉の危険因子となりうる体高のカットオフ値を決めて、それを網嚢孔捕捉の診断指標とするのは困難であると考えられました。

一般的に、馬の網嚢孔は、加齢による肝臓萎縮(Hepatic atrophy)によって拡大して、高齢馬ほど網嚢孔捕捉を発症しやすい、という仮説があり、上述の体高と有病率の関係も、この年齢と網嚢孔捕捉の発症率の相関を反映したものであるかもしれません。しかし、この論文では、患馬の年齢も多重ロジスティック回帰解析における因子として含まれていますが、年齢自体は有意な危険因子とは認められておらず、また、他の因子との統計的な相互作用(Statistical interaction)も示されていません。

この研究では、網嚢孔捕捉の罹患馬は、対照郡の馬に比べて、驚きやすい(Easily frightened)、興奮した際に汗だくになる(Sweats up when excited)、周囲環境に“野次馬”的な反応を示す(Very inquisitive reaction to surroundings)、ストレス緊張下で給餌されるとガツガツ食べる(Goes off food when stressed)、などの性格を有すると網嚢孔捕捉の有病率が低い傾向が認められ、これらの性格的特徴が認められた場合には、網嚢孔捕捉を発症する可能性が半分~三分の一以下まで低くなることが示されました(オッズ比:0.29~0.41)。しかし、これらの性格がなぜ網嚢孔捕捉の有病率の低さにつながったのかに関しては、この論文内では明確には結論付けられていません。

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