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馬の文献:網嚢孔捕捉(Archer et al. 2004a)

「馬の網嚢孔における小腸捕捉:1991~2001年にわたる71症例の回顧的解析」
Archer DC, Proudman CJ, Pinchbeck G, Smith JE, French NP, Edwards GB. Entrapment of the small intestine in the epiploic foramen in horses: a retrospective analysis of 71 cases recorded between 1991 and 2001. Vet Rec. 2004; 155(25): 793-797.

この症例論文では、馬の網嚢孔(Epiploic foramen)における小腸捕捉(Small intestinal entrapment)の危険因子および外科治療効果を評価するため、1991~2001年にわたる71頭の網嚢孔捕捉(Epiploic foramen entrapment)の罹患馬の医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、71頭の網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、麻酔覚醒(Anesthesia recovery)したのは60頭で、退院したのは49頭であったことが報告されており(短期生存率:69%)、平均入院期間は11日間(範囲6~28日)にのぼったことが示されています。また、生存分析(Survival analysis)の結果では、網嚢孔捕捉の罹患馬は、他の種類の外科的疝痛(Surgical colic)の罹患馬に比べて、比較的に低い生存率が認められ、予後不良を呈して安楽死(Euthanasia)となる症例もかなり多いことが示唆されました。

この研究では、網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、サク癖(Crib-biter/Windsucker)の悪癖をもつ馬が41%を占め、対照郡に占めるサク癖馬の割合(10%)よりも有意に高く、このため、多重ロジスティック回帰解析(Multiple logistic regression analysis)の結果では、サク癖の悪癖をもつ場合には、網嚢孔捕捉を発症する危険が八倍近くも高くなることが示唆されました(オッズ比:7.87)。この理由については、この論文内では結論付けられていませんが、他の文献では、サク癖によって生じる胸腔陰圧(Negative intrathoracic pressure)が、小腸を頭側方向へと引き寄せて、網嚢孔捕捉に至るという仮説もなされています。

この研究では、網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、十月~三月のあいだに来院した馬が77%を占め、そのピークは一月(網嚢孔捕捉の全罹患馬の21%)であったことが示されており、馬の網嚢孔捕捉は冬季に好発する傾向が認められました。この理由については、この論文内では結論付けられていませんが、冬季に放牧時間が減ることで運動不足による腸蠕動の減退&異常を生じたり、秋季~冬季にかけて飼料の質が悪化すること、などが関与すると推測されています。

この研究では、網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、サラブレッド種(純血種または混血種)が66%を占め、対照郡に占めるサラブレッド種の割合(46%)よりも有意に高く、馬の網嚢孔捕捉はサラブレッドに好発する傾向が認められました。また、この研究では、網嚢孔捕捉の罹患馬の平均年齢は10.2歳、去勢馬(Gelding)の占める割合は55%で、いずれも対照郡とのあいだに有意差は認められず、他の文献で報告されているような、高齢馬および去勢馬に網嚢孔捕捉が好発する傾向は見られませんでした。

この研究では、71頭の網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、馬体に対して左から右へと小腸が網嚢孔を通過していたのは69頭にのぼり、右から左へと小腸が網嚢孔を通過していたのは二頭のみでした。この二つの病態のうち、どちらが好発するかに関しては、文献によって相違がありますが、この病態の違いによって、診断のしやすさ、疝痛の重篤度、予後などが有意に変わるという知見は示されていません。

この研究では、71頭の網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、捕捉されている小腸の遊離後に小腸切除(Small intestinal resection)を要したのは52頭でした。このうち、36頭では側々空腸盲腸吻合術(Side-to-side jejunocecal anastomosis)、九頭では端々空腸々々吻合術(End-to-end jejunojejunal anastomosis)、七頭では側々空腸々々吻合術(Side-to-side jejunojejunal anastomosis)が実施されましたが、術式の違いによる予後の相違については解析や考察はされていません。

この研究では、退院した49頭の網嚢孔捕捉の罹患馬のうち、二頭において網嚢孔捕捉の再発(Recurrence)が見られ(=開腹術で確認)、この二頭はいずれも二度目の手術後に予後不良から安楽死となりました。また、再発しても開腹術(Celiotomy)や剖検(Necropsy)が行われなかった症例もあると考えられることから、実際の網嚢孔捕捉の再発率はもっと高い可能性もあると考察されています。馬の網嚢孔は、尾側大静脈(Caudal vena cava)および門脈(Portal vein)が境界を成していることから、外科的に縫合閉鎖することは難しく、網嚢孔捕捉の再発予防に有効な手法は報告されていません。

この研究では、馬の網嚢孔捕捉は、全疝痛症例の3.4%、全外科的疝痛症例の5.3%、全小腸疾患の8.9%を占めていました。網嚢孔捕捉の有病率(Prevalence)は、症例報告によって多少の差異があるものの、比較的に多く見られるタイプの病態であることが知られており、小腸疾患による馬の疝痛原因の第二位に当たるという知見もあります(第一位は有茎性脂肪腫)。

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