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馬の文献:回腸便秘(Hanson et al. 1998)

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「馬の回腸便秘の外科的整復:28症例」
Hanson RR, Wright JC, Schumacher J, Baird AN, Humburg J, Pugh DG. Surgical reduction of ileal impactions in the horse: 28 cases. Vet Surg. 1998; 27(6): 555-560.

この症例論文では、馬の回腸便秘(Ileal impaction)に対する、外科的療法の治療効果を評価するため、1988~1993年における28頭の回腸便秘の罹患馬の医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、正中開腹術(Midline celiotomy)による外科的療法が応用された28頭の回腸便秘の罹患馬のうち、二頭は広範囲にわたる小腸の虚血性壊死(Extensive ischemic necrosis)のため術中に安楽死(Euthanasia)となりましたが、その他の26頭の患馬のうち、退院したのは24頭で、短期生存率(Short-term survival rate)は86%であったことが示されました(=24/28頭)。また、退院後の経過追跡(Follow-up)が出来なかった三頭を除くと、術後に一年以上生存した馬は20頭で、長期生存率(Long-term survival rate)は80%にのぼりました(=20/25頭)。このため、馬の回腸便秘に対する外科的療法では、比較的に良好な予後が期待できることが示唆されました。

この研究では、回腸便秘の外科的整復が行われた26頭の患馬のうち22頭(85%)において、小腸壁を介しての生食注入(Saline infusion through intestinal wall)、および腸管をマッサージして停滞腸内容物を盲腸内に押し流す手法によって、便秘部位の遊離が達成されました。しかし、他の二頭では、重度の腸壁浮腫および肥厚(Excessive edema/thickening of the intestinal wall)が認められた事から、回腸から盲腸への迂回手術(Jejunocecal bypass surgery)が実施されました。この研究では、心脈管状態の悪化(Deteriorating cardiovascular status)や持続性の腹痛症状(Persistent signs of abdominal pain)などを指標として、入院後の比較的に早い時期、つまり、便秘部位の腸管病態が悪化する前に開腹術が応用されており、このため、腸切開術(Enterotomy)を要することなく、停滞腸内容物の遊離が可能であった症例が多かったと考察されています。

古典的には、回腸便秘は回腸壁の機能不全(Ileal wall dysfunction)に起因しており、その部位を迂回して便秘再発を予防するために、積極的な空腸盲腸吻合術(Jejunocecal anastomosis)を実施するべきであるという仮説もなされてきました。しかし、空腸盲腸吻合術では、腸断端からの腸内容物漏出(Ingesta leakage from stump)や回腸盲腸弁(Ileocecal valve)の機能損失などに起因して、術後に腹膜炎(Peritonitis)やイレウス(Post-operative ileus)等の合併症(Complication)を引き起こし易いことが報告されています。このため、初期病態の患馬に対して、速やかに開腹術が応用された場合には、この研究の術式のように、迂回手術をせず、生食注入と腸管マッサージで、便秘箇所の遊離のみを行う外科療法によっても、十分に良好な予後が期待できると考えられました。

この研究では、28頭の回腸便秘の罹患馬のうち、沿岸性バミューダ乾草(Coastal Bermuda hay)のみが給餌されていた馬が27頭にのぼり、術後には全ての患馬に対して、この乾草の給餌を控える飼養管理法が推薦されました。沿岸性のバミューダ乾草は、リグニンや粗繊維(Crude fiber)の含有量が高く、小腸内での便秘を起こし易いと推測されています。しかし、この研究の九頭の患馬においては、回腸便秘の外科手術後にも沿岸性バミューダ乾草の給餌が続けられましたが、回腸便秘の再発(Recurrence)は認められませんでした。一方、この研究では、28頭の回腸便秘の罹患馬のうち、その半数(14頭)が九月~十一月に来院しており、馬の回腸便秘は秋季に好発する傾向が示されました。このため、沿岸性バミューダ乾草の摂食は、馬の回腸便秘の危険因子(Risk factor)にはなりうるものの、晩夏~初秋にかけて馬の飲水量が減少(Decreased water intake)したり、飼料内容の変更が行われる(=腸内細菌叢の急変)ことなども、回腸便秘の発病素因(Predisposing factor)であるという考察がなされています。

この研究では、28頭の回腸便秘の罹患馬のうち、軽度~中程度の疝痛症状(Mild to moderate abdominal pain)を示したのは22頭(79%)で、腹水検査(Abdominocentesis)による異常所見も顕著ではなりませんでした。このため、殆どの患馬において、重篤な疼痛症状や腹水性状の変化を呈することの多い、小腸絞扼(Small intestinal strangulation)の可能性は低いことが術前予測されました。しかし、経鼻カテーテルからの胃逆流液の排出(Nasogastric reflux)が認められたのは15頭(54%)、直腸検査(Rectal examination)で小腸便秘が触知されたのは11頭(39%)のみで、術前に回腸便秘の確定診断(Definitive diagnosis)を下すのは必ずしも容易ではない事が示唆されました。

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