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馬の文献:回腸便秘(Parks et al. 1989)

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「馬の回腸便秘:75症例」
Parks AH, Doran RE, White NA, Allen D, Baxter GM. Ileal impaction in the horse: 75 cases. Cornell Vet. 1989; 79(1): 83-91.

この症例論文では、馬の回腸便秘(Ileal impaction)に対する外科療法の治療効果、およびその予後に関与する因子を評価するため、1980~1987年における75頭の回腸便秘の罹患馬の医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、75頭の回腸便秘の罹患馬のうち、69頭に対して正中開腹術(Midline celiotomy)が実施され、このうち67頭では、腸壁を介しての生食注入および腸管マッサージによって、停滞腸内容物の遊離(Releasing impacted ingesta)が達成されましたが、残りの二頭では、腸切開術(Enterotomy)を介しての、便秘物の直接的な摘出を要しました。そして、麻酔覚醒(Anesthesia recovery)した65頭の患馬における短期生存率(Short-term survival rate)は62%(40/65頭)で、安楽死(Euthanasia)となった25頭の原因としては、ショック、蹄葉炎(Laminitis)、腹膜炎(Peritonitis)、癒着(Adhesion)、胃破裂(Gastric rupture)などが挙げられました。このため、馬の回腸便秘に対しては、開腹術による外科的な便秘整復が有効な治療法であると考えられますが、その予後は良好~中程度で、様々な術後合併症(Post-operative complication)を続発して、安楽死となる症例も比較的に多いことが示唆されました。

この研究では、疝痛症状の経過が0~12時間の場合には、生存率(Survival rate)は62%であったのに対して、経過が12~24時間の場合には、生存率が38%まで悪化したことが報告されており、術前の臨床症状が長さ(Duration of pre-operative clinical sign)と、術後の斃死率(Mortality rate)とのあいだには、有意な正の相関(Positive correlation)が認められました。また、生存馬(Survivors)に比べて非生存馬(Non-survivors)のほうが、有意に高い体温(37.7度v.s. 38.2度)、血液蛋白濃度(7.8g/dl v.s. 8.9g/dl)、アニオンギャップ(15mEq/l v.s. 21mEq/l)を示しました。このため、入院時の疝痛経過が12時間に及んでいたり、臨床症状や血液所見に顕著な異常が認められた回腸便秘の症例においては、速やかな開腹術によって、積極的な便秘部位の外科的整復(Aggressive surgical reduction)に努めることが重要であることが示唆されました。

この研究では、75頭の回腸便秘の罹患馬のうち、回腸切除(Ileal resection)および空腸盲腸吻合術(Jejunocecostomy)が応用されたのは47頭でしたが、これらの腸切開術&切除術&吻合術(Enterotomy/Enterectomy/Anastomosis)を要した馬の生存率は36%で、要しなかった馬の生存率65%よりも、顕著に低い傾向が示されました。このため、この論文の考察では、上述のような術式の実施は、予後に“有害な作用”(Deleterious effect)をもたらすと結論付けられています。しかし、これは、腸切除や吻合術そのものが悪影響を及ぼしたというよりも、これらの術式を要するほど罹患部位の虚血性壊死(Ischemic necrosis)が悪化していた症例においては、一次性病態の影響から術後に合併症を続発する危険が高かったことを反映しているデータであると考えられ、便秘部位の腸管損傷の重篤度によっては、腸切除術や吻合術などの実施をためらうべきではない、という解釈がなされるべきなのかもしれません。

この研究では、75頭の回腸便秘の罹患馬のうち、経鼻カテーテルからの胃逆流液の排出(Nasogastric reflux)が見られたのは56%で、直腸検査(Rectal examination)において小腸膨満(Small intestinal distension)が認められたのは96%でしたが、便秘を起こした回腸そのものが触知されたのは25%の症例のみでした。このため、回腸便秘の罹患馬においては、臨床所見および直腸検査の結果から、非絞扼性の小腸通過障害(Non-strangulating small intestinal obstruction)であるという推定診断(Presumptive diagnosis)は可能である場合が多いものの、直腸検査によって術前に回腸便秘の確定診断(Definitive diagnosis)ができる可能性は、それほど高くないことが示唆されました。

この研究では、回腸便秘の罹患馬のうち、アラビアン品種が20%を占め、同病院の全疝痛症例に占めるアラビアン品種の割合(10%)よりも高い傾向が示されました。また、回腸便秘の罹患馬のうち、牝馬が56%を占め、同病院の全疝痛症例に占める牝馬の割合(44%)よりも高い傾向が示されました。しかし、この論文の中では、なぜ牝馬やアラビアン品種において回腸便秘が好発するのか、に関しては明確な理由は考察されていません。

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