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馬の文献:十二指腸近位空腸炎(Cohen et al. 1994)

「十二指腸近位空腸炎の罹患馬における蹄葉炎の有病率と発病因子:1985~1991年の33症例」
Cohen ND, Parson EM, Seahorn TL, Carter GK. Prevalence and factors associated with development of laminitis in horses with duodenitis/proximal jejunitis: 33 cases (1985-1991). J Am Vet Med Assoc. 1994; 204(2): 250-254.

この症例論文では、馬の十二指腸近位空腸炎(Duodenitis-proximal jejunitis)の罹患馬における蹄葉炎(Laminitis)の有病率(Prevalence)と、その発現に関与する罹患因子(Predisposing factors)を発見するため、1985~1989年における十二指腸近位空腸炎の罹患馬の診療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、116頭の馬が十二指腸近位空腸炎のため来院し、そのうち33頭において蹄葉炎の発症が認められ(有病率:28%)、体重が550kg以上である症例や、出血性胃逆流液(Hemorrhagic gastric reflux)が見られた場合には、有意に蹄葉炎を発症する可能性が高いことが示されました。また、この研究では、予防的ヘパリン投与(Prophylactic heparin administration)が行われた場合には、有意に蹄葉炎を発症する可能性が低くなることが示されました。これらの結果から、体重の重い個体および出血性の胃逆流液を呈した症例においては、蹄葉炎を続発する危険を考慮して、ヘパリン投与などの予防的処置を講じることが有効であるという考察がなされています。

この研究では、多重ロジスティック回帰分析(Multiple logistic regression analysis)の結果から、体重が550kg以上である症例では、安楽死(Euthanasia)となる可能性が二倍以上も高くなることが示されました(オッズ比:2.39)。これは、十二指腸近位空腸炎に起因して、蹄葉状組織の退行性変化(Degenerative change)を生じた際には、体重の重い馬ほど葉状層に掛かる負荷が大きくなり、蹄骨剥離を起こし易かったためと考察されています。また、単一因子ロジスティック回帰分析では、体重450kg以下の馬を対照郡とした場合、450~500kgの患馬のオッズ比は3.6、500~550kgの患馬のオッズ比は5.6、そして、550kg以上の患馬のオッズ比は17.3というように、体重の増加に比例するように蹄葉炎発病の危険が高まる傾向が認められました。通常、診療中に体重そのものを制御することは困難ですが、体重の重い馬ほどより慎重に蹄葉炎をモニタリングしたり、より積極的な蹄葉炎の予防処置を施す必要があると考えられました。

この研究では、多重ロジスティック回帰分析の結果から、出血性胃逆流液を呈した症例では、安楽死となる可能性が二倍近くも高くなることが示されました(オッズ比:1.74)。これは、より重篤な十二指腸近位空腸炎の病態を呈していたことを反映する所見であったと推測されており、内毒素血症(Endotoxemia)、血液凝固因子異常(Blood coagulopathy)、Bovis菌血症などの引き金因子(Triggering factor)の増加や悪化を招き、蹄葉炎発病の危険を高める結果につながったという考察がなされています。このため、出血性の胃逆流液の排出をひとつの指標にして、より慎重な蹄葉炎のモニタリング、および、より積極的な蹄葉炎の予防に努めることが大切であると考えられました。

この研究では、十二指腸近位空腸炎の罹患馬のうち、ヘパリン投与が行われた場合には、一頭も蹄葉炎の発現が見られなかったのに対して、ヘパリン投与が行われなかった場合には、30%の蹄葉炎の発症率が認められました。このため、十二指腸近位空腸炎の治療に際しては、蹄葉炎の予防を目的としてのヘパリン投与が有効である可能性が示唆されています。しかし、この研究は回顧的な症例報告であるため、内科治療の無作為選択(Random selection)を実施することは出来ないため、ヘパリン投与が行われたのは12頭のみとサンプル数は必ずしも多くなく、また、治療効果の偏向(Bias)(=ヘパリン療法による治癒が期待できないと思われる重度病態の症例に対しては、はじめからヘパリン投与は行われない傾向)が生じた可能性は否定できません。このことから、ヘパリン投与によってどの程度の発症率の低下が達成できるのかを結論付けるため、今後の研究では前向き無作為化臨床試験(Prospective randomized trial)を実施する必要があるという考察がなされています。

この研究では、十二指腸近位空腸炎の罹患馬のうち、蹄葉炎を続発した患馬(33頭)の血清クレアチニン濃度(平均4.1mg/dL)は、蹄葉炎を起こさなかった患馬(83頭)の血清クレアチニン濃度(平均2.7mg/dL)に比べて、有意に高いことが示されました。しかし、クレアチニン濃度が正常範囲外であった馬は、蹄葉炎を続発した患馬では94%、蹄葉炎を起こさなかった患馬でも75%と、両群において高い割合を示しました。このため、クレアチニン測定値そのものが蹄葉炎発病を示唆する有意な指標にはならない事が示唆されましたが、他の臨床所見、血液検査、腹水検査などの結果に加味するかたちで、十二指腸近位空腸炎の予後判定の目安になる可能性はあると考えられます。

この研究では、十二指腸近位空腸炎の罹患馬のうち、蹄葉炎を続発した患馬(33頭)では18頭が安楽死になったのに対して(致死率:55%)、蹄葉炎を起こさなかった患馬(83頭)では26頭が安楽死となり(致死率:31%)、蹄葉炎の合併症を引き起こすことで、有意に予後が悪くなることが裏付けられました。このため、十二指腸近位空腸炎の診療においては、一次性病態である小腸炎症の治療や胃除圧のみでなく、二次性病態である蹄葉炎の予防に努めることが、患馬の予後改善のために重要であることが示唆されました。

この研究では、蹄葉炎を続発した33頭の十二指腸近位空腸炎の罹患馬のうち、23頭がローテーション型の蹄葉炎を起こし、そのうち10頭が安楽死となったのに対して、残りの10頭はシンカー型の蹄葉炎を起こし、そのうち8頭が安楽死となりました。このため、シンカー型蹄葉炎の致死率(80%)は、ローテーション型蹄葉炎の致死率(43%)よりも有意に高いことが示されました。一般的に、シンカー型蹄葉炎は、ローテーション型蹄葉炎よりも、装蹄療法および外科療法による蹄骨変位の改善を施すことが難しく、予後不良を呈する場合が多いことが報告されています。

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