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馬の文献:十二指腸近位空腸炎(Seahorn et al. 1992)

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「馬の十二指腸近位空腸炎における予後判定指標:1985~1989年の75症例」
Seahorn TL, Cornick JL, Cohen ND. Prognostic indicators for horses with duodenitis-proximal jejunitis. 75 horses (1985-1989). J Vet Intern Med. 1992; 6(6): 307-311.

この症例論文では、馬の十二指腸近位空腸炎(Duodenitis-proximal jejunitis)における予後判定のための指標(Prognostic indicators)を発見するため、1985~1989年における75頭の十二指腸近位空腸炎の罹患馬の診療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。この研究では、50頭が無事に退院したのに対して(=生存馬:Survivors)、残りの25頭は予後不良を呈して安楽死(Euthanasia)が選択されました(=非生存馬:Non-survivors)。

結果としては、十二指腸近位空腸炎の罹患馬のうち、非生存馬は生存馬に比べて、血液中のアニオンギャップ(Anion gap in blood sample)および腹水中の蛋白濃度(Protein concentration in abdominal fluid)が有意に高値を示し、また、経鼻胃カテーテルによる胃排出液(Nasogastric reflux)が有意に多量である所見が示されました。ロジスティック回帰解析(Logistic regression analysis)では、この三つの要素(アニオンギャップ、腹水蛋白濃度、胃排出液量)が、有意に予後(生存v.s.非生存)に相関していることが確認されました。このため、十二指腸近位空腸炎の診療に際しては、血液検査による電解質不均衡(Electrolyte imbalance)の評価、腹水検査(Abdominocentesis)による蛋白濃度の測定、胃排出液の測量などが、有用な予後判定の指標になりうることが示唆されました。

この研究では、血液中のアニオンギャップが15mEq/L以上である症例では、15mEq/L以下である症例に比べて、安楽死となる可能性が六倍以上も高くなることが示されました(オッズ比:6.43)。一般的に、アニオンギャップ値の上昇は、陽イオン(Cations)の減少(カルシウム、マグネシウム、etc)、および陰イオン(Anions)の増加(乳酸、リン、ケト酸、アルブミン、etc)に起因します。馬の十二指腸近位空腸炎においてアニオンギャップ値が上昇する要因としては、(1)摂食量減退によるカルシウム摂取の減少(Decreased calcium ingestion by decreased feed intake)、(2)小腸疾患によるカルシウム吸収の減少(Decreased calcium absorption by affected small intestine)、(3)消化管炎症による乳酸増加(Increased lactate by alimentary inflammation)、(4)脱水による陰イオンおよびアルブミン濃縮(Anions/Albumine concentration by dehydration)、(5)補液療法によるナトリウム含量の高い溶液の経静脈投与(Intravenous administration of sodium-containing fluids)、などが挙げられます。このうち、特に(2)~(4)は、小腸炎症の悪化に比例すると考えられ、これらの病的状態の推移を総括的に表すアニオンギャップの測定値は、十二指腸近位空腸炎の重篤度を明瞭に反映することから、予後判定の有用な指標になりうる、という考察がなされています。

この研究では、腹水中の蛋白濃度が3.5g/dL以上である症例では、3.5g/dL以下である症例に比べて、安楽死となる可能性が四倍近くも高くなることが示されました(オッズ比:3.78)。馬の十二指腸近位空腸炎において腹水蛋白濃度が上昇する要因としては、(1)小腸炎症による漿膜炎(Serositis)、(2)小腸膨満による受動的鬱滞(Passive congestion by small intestinal distension)、(3)毛細血管の静水圧上昇(Increased capillary hydrostatic pressure)、などが挙げられ、これらは、小腸病態の悪化および長期化に比例すると考えられます。このため、腹水中の蛋白濃度の測定値が十二指腸近位空腸炎の重篤度を反映して、予後判定の有用な指標になると考察されています。

この研究では、入院後24時間以内の胃排出液が測量され、胃排出液の量が48L以上である症例では、24L以下である症例に比べて、安楽死となる可能性が四倍以上も高くなることが示されました(オッズ比:4.13)。しかし、胃排出液の量が24~48Lの場合には、生存率に対する有意な影響は確認されず、また、胃排出液の量は腹水蛋白濃度と相関していたため、多重ロジスティック回帰分析(Multiple logistic regression analysis)では、胃排出液の量自体は有意な予後判定指標ではないという結果が示されました。これは、胃排出液の測量よりも腹水中の蛋白濃度の測定のほうが、十二指腸近位空腸炎のモニタリングには有用であることを示唆しています。通常、十二指腸近位空腸炎の罹患馬では、数時間おきの胃除圧(Gastric decompression)を要するため、胃排出液の量を毎回正確に測るのはかなりの手間を要し、また、持続的に胃カテーテルを留置(Indwelling stomach tube)することで、自発的な胃内容液の排出(Spontaneous gastric reflux)を促す方針が取られることもあります(=排出液は馬房床に垂れ流され測定できない)。このため、単回の腹水検査による蛋白濃度の測定値を用いて、迅速かつ簡易に予後判定を行う指針のほうが、より現実的かつ安価で信頼性も高いと考えられます。

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