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馬の文献:内毒素血症(Senior et al. 2011)

「馬の委託病院に来院した馬症例の血漿内毒素濃度:選別臨床指標と治療成績の相関」
Senior JM, Proudman CJ, Leuwer M, Carter SD. Plasma endotoxin in horses presented to an equine referral hospital: correlation to selected clinical parameters and outcomes. Equine Vet J. 2011; 43(5): 585-591.

この症例論文では、内毒素血症(Endotoxemia)が馬症例の予後に影響するか否かを検証するため、委託病院(Referral hospital)に来院した234頭の馬症例において、血漿中の内毒素濃度(Plasma endotoxin concentration)の測定、および、これらの症例の治療成績(Outcomes)との相関(Correlation)が評価されました。

結果としては、234頭の症例馬のうち、27%において内毒素が検知されており、このように内毒素が検知された症例が入院中に死亡する確率は、検知されなかった症例よりも、有意に高かったことが示されました。また、内毒素が検知される割合は、疝痛の症例馬のほうが、疝痛以外の症例馬よりも、有意に高いことも分かりました(内毒素が検知された馬の約三割が疝痛症例)。このため、二次診療施設に来院した馬症例(特に疝痛症例)においては、血漿内毒素濃度と治療成績のあいだに負の相関(Negative correlation)が存在し、内毒素血症の発症が予後に有意に悪影響を与えることが示唆されました。

この研究では、全ての症例馬の血液サンプルは、委託病院に入院する時点で採取されており、その検体中の内毒素濃度が、予後の悪さと有意に相関していました。しかし、過去の文献では、調査対象となった外科的疝痛(Surgical colic)のうち、生存した症例郡(Survivors)と生存しなかった症例郡(Nonsurvivors)のあいだには、入院時の内毒素濃度に有意差は無かったものの、手術中に測定した内毒素濃度を見ると、生存しなかった症例郡のほうが有意に高かった、という知見も示されています(Steverink et al. J Endotox Res. 1995:2;289)。このため、疝痛馬の予後判定の指標(Prognostic parameters)として、どのタイミングで内毒素濃度を測定するべきかに関しては、今後の更なる検証を要する、という考察がなされています。

この研究では、臨床症状の基準から内毒素血症ではないと判断された症例は、内毒素血症の症状を示していなかった症例に比べて、内毒素が検知される確率が十分の一も低かったことが示されました(オッズ比:0.10)。ここで言う基準には、心拍数が毎分70回以上、ヘマトクリット値が45%以上、リポポリサッカライドの吸収(LPS absorption)が予測される病態および手術、などが含まれました。このため、例えLPS測定装置が無い状況であっても、臨床症状を慎重に見極めることで、内毒素血症の発生をある程度は予測可能である、という推測が可能であるかもしれません。

この研究では、内毒素が検知される確率は、大腸疾患(Large intestinal disorders)と小腸疾患(Small intestinal disorders)とで差異は無く、また、絞扼性病変(Strangulating lesion)と非絞扼性病変(Non-strangulating lesion)のあいだでも有意差は認められませんでした。そして、内科的疝痛と外科的疝痛のあいだでも、内毒素が検知される確率は同程度でした。このため、疝痛馬の診断に際しては、病態のタイプや手術の有無だけではなく、各病態の重篤度(Severity)も考慮して、内毒素血症の危険性および治療の必要性を判断する必要がある、という警鐘が鳴らされています。

この研究では、234頭の症例馬のうち38頭において、内毒素血症の臨床症状を示しているのに、血漿中には内毒素が検知されないという偽陰性の結果(False negative results)が示されました。この理由としては、ポリミキシンBが投与されていた馬(15/38頭)では、循環血液中の内毒素と結合する効能(Bounding effect to circulating endotoxin)が発揮されたことが挙げられています。もう一つの潜在的説明(Potential explanation)としては、一般的に馬は、内毒素への感受性が高い動物種であるため、この研究における検出限界以下(Less than detection limit)の低濃度の内毒素であっても、馬体への暴露が長時間に及んでいた場合には、臨床症状としての内毒素血症は認められた、という見解も示されています。

この研究では、234頭の症例馬のうち32頭において、内毒素血症の臨床症状は見られないのに、血漿からは内毒素が検知されるという偽陽性の結果(False positive results)が示されました。この理由としては、いわゆる内毒素許容性(Endotoxin tolerance)を持つ個体が含まれていたことや(Fan et al. J Endotox Res. 2004:10;71)、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)などの投与で、見かけ上の症状が抑えられたことが挙げられています。また、これらの検体では、入院などのストレスに起因して生じた無毒性形態のLPS(Non-toxic forms of LPS)が、この研究のアッセイで検知されてしまったり、頚静脈の留置カテーテル(Jugular vein catheter)から採血をする際に、カテーテルを汚染していた細菌から内毒素が混入した可能性もあると考察されています。

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